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第3話 少女と自己紹介
…分からない。この人の思惑が。なんで、見ず知らずの人と一緒に住もうなどと言えるのか。
「あ!俺としたことが自己紹介忘れとったな。俺は、田中明教って言うんや。歳は23歳。そんで…君の名前も聞き忘れとったな。…忘れてばっかりや。」
悪い人ではなさそうなのだが…しばらくの間悩んでいると手を振られた。
「おーいっ。大丈夫か。なんや、考え事しとったみたいやけど…。」
この人といると考えなければいけない事が多すぎて調子が狂う…。まぁ、名前くらいは教えても大丈夫か…。
『い、石井咲命。』
そう言うと明教さんは顔を明るくして、
「ほなら、咲命って呼ぶわな。早速やけど咲命。お風呂入ってき。」
手を掴まれてお風呂場へ連れていかれた。拒むような事を言ったら、
「いいっていいって!それに咲命、こうでもしないと入らなさそうやし」
と半笑いで言われた。この人はお節介焼きなのか…?
こうして、明教と咲命の不思議な同居生活の幕が上がった。