第2話 少女と介抱者
…何故かおでこが冷たい。ここはどこだ?見知らぬ匂いがする。ゆっくり体を起こすと白のシンプルな天井が目に飛び込んだ。
「あっ、目…覚めました?お加減大丈夫ですか?」
この人は…さっき、ぶつかった人だ。これらの情報から察するに、ここはこの人の家で間違いないであろう。布団から出て向き合う。こんなこと今まで無かったため、最適解が分からないが、さっきの応用で怒らせずには済むであろう。
『重かったですよね…?大変申し訳ありませんでした。このご恩は決して忘れません。それでは失礼します。』
荷物を持って出ていこうとすると、手を掴まれた。
「ちょ、ちょっと!何出ていこうとしてるんですか!?あなた倒れて起きたばっかですよ!!座って座って!」
…怒られた。何故?理解出来ない…。
『あの…なんでそんな切羽詰まった顔してるんですか?私たち友達でも、親族でもありませんよね?』
そういうと、その人は変な顔をしながら、
「は?誰でも心配するやろ!こんなちっこい子が路上でいきなり倒れて、心配しん大人がどこにおるん?」
この喋り方…この人は関西圏に住んでる方なのか?
「おっと、ごめんな?つい大阪弁出てもうたわ。それより…自分、親御さんは?」
…痛いところを突かれた。私に「親」と呼べる者は居ない。いるのは、ギャンブルに取り憑かれ、平気で人を殴る母という肩書きを持ったゴミと平気で人を欺き、女共を食い散らかす父という肩書きを持ったクズだけ。家に帰ったら地獄なのである。
黙っていると、やってしまったという顔したその人が…
「あ…ごめんな?言いたくないようなこともあるわな。しかも初対面のおっさんに。」
また変な気を使わせてしまった。
『す、すいません…。家も、家族もないです。』
ある意味、嘘である意味ほんとだ。バイト代でカプセルホテルに泊まるのがほとんどで家には絶対帰りたくなかったし。
すると、彼は思いついたようにこういった。
「こんな事言うのもあれかもしれんけど、俺の家でよければ一緒に住まへん?」