第1話 少女と桜
初めまして。霧雨です。初めての執筆になります。まだ機能や知識に乏しいので不快な思いをさせてしまったらすいません。
春…。心地よく穏やかな気候で人々の新たな出会いを応援するかのように歩道に沿って、桜が咲き誇っている。
しかし、この少女、石井咲命にはあまり綺麗に見えていないようだ。というのも、彼女は様々なことに無関心なのである。ただ、義務や目的を果たすためだけに動いているのだ。
現在は、バイト先へ行くため、人が忙しなく行き交う大通りを歩いている。不意に肩が誰かにぶつかった。こういうときは謝らなければならない…ぶつかった人の方を向いていつの間にか刷り込まれた、受け答えの術をたよりに言葉を並べる。
『すいません…。』
すると自分の声より、低い声が上から降り掛かってきた。
「気にしないでください!…それより、こちらこそすいません。俺も前見ていなくって…大丈夫ですか?」
この質問の答えは、相手を心配させてはいけない。機械のように言葉を紡いでいく。
『大丈夫です。…では。』
足早にその場を去ろうとするがそれは無理らしい。足を踏み出そうとしたが、体が重力に従って傾いていき、意識が朦朧としてくる。どうやら、春に見合わない暑さが体に堪えたのだろう。
…咲命が最後に見た景色は、さっきの人の焦った表情だった。
桜がこれから起こる展開を悟り、ほくそ笑むかのように風で揺れていた。