記入日 A,C, 27/03/06
体調、本日も良好。しかし何処か気だるそうだ。もしかしたらと思ったが、そうではないらしい。向こうの世界と同じという事は聞いているが、薬も同じで良いのだろうか。処置はどうなのだろう。アルツィアさまに聞いておくべきだった。
しかし、今更だ。その時がきたら彼女に尋ねながら処置する。こればっかりは、私以外診る事は出来ないのだから。
今日は、少しばかり疲れた。マリスタザリアと戦った訳ではないが、それに近い戦闘が起こった。
場所はギルド。選任試験の面接という名目で、”悪意”浄化をしていた時だ。相手の氏名、出身すら分かっていない。ただ、王都外の者らしいその男は、商人という事だ。
その商人は、”悪意”に侵されていた。『感染者』と呼ぶ事すら出来ないくらい、”悪意”が強かった。あれはもう、マリスタザリアと言える程の……。
その商人の浄化だが、結論から言えば浄化出来た。私が行える、一番の”浄化の世界”で。
しかし、謎が多い『感染者』だった。
影に潜る魔法。記憶の欠如。悪意の増幅ではなく、植えつけられたような行動。私狙いという事実……。
確実に魔王による物だが……何故、という疑問が残る。
しかしそれも、明日以降の調査を待つ他ない。
とにかく……彼女に、無益な殺生をさせずに済んで、良かった。何れはそうなるとしても、最小限で済むのならそれが一番だ。
死んで良い命なんて、一つもない。どんな極悪人であろうとも……死んで良い命は、ないのだ。救えるのなら、救いたい。でも、死ななければいけない者も居ると、私は思っている。
ある程度平和が維持されていた時代。世界では死刑反対派が出来たそうだ。私はそれに賛成したいと思うが、世の中には死ななければ犯罪を止めない者も居る。ずっと刑務所に入れ続ける事は不可能に近い。
感情論抜きに、一人の人間を無償で養い続ける事になる無期懲役は、難しいのだ。”悪意”による『感染』がある世界で、無期懲役者は増え続けるのだから。
ならば……死刑は必要なのだろうと、割り切っている部分がある。
でも、それとこれとは別だ。彼女が、執行しなければいけないとは、ならない。もしその時が来たら、私が……一も二もなく、”アン・ギルィ・トァ・マシュ”を振るおう。その者と共に、罪悪全てを”拒絶”しよう。
彼女に人殺しは、させない。止めは私が刺す。彼女は平和な世界の聖女。人の肉を断つ感触なんて、知らないままで良い。




