記入日 A,C, 27/03/02
少々貧血気味かもしれないが、彼女の体調に目立った後遺症はない。食事で増血を施そうと思う。関節や脳、内臓に問題はない。一時的な疲労だったのだろうか? 何にしても、”強化”オルイグナスは要観察とする。
今日、彼女が朝の日課を再開させた。その日課後、彼女の体調が良くなっているように感じた。
彼女は体を動かした方が、体調が良くなるらしい。朝の時間、彼女を見られる時間が減るのは寂しいが、彼女にとって必要な日課なので……。
体力増強、技術の向上、体調の確認が日課なのだろう。私もその時間で、出来る事を行おうと思う。
今日の予定として、冒険者登録があった。結果として、選任には合格したらしい。今日の依頼はないそうなので、明日から冒険者として頑張ることになる。私達の担当の名は、アンネリス・ドローゼさん。国王補佐であり、選任冒険者を支援するのが仕事の女性だ。
まだ三十になってないと思うが、そんな若い年齢ながら、アンネさんは陛下から信頼され、ギルドでも頼りにされているそうだ。
これから一番お世話になる方となる。陛下への連絡も、アンネさんを中継すべきだろう。
ギルドでは、着流しの男が居た。彼女を狙っているらしい。戦いたくて仕方ないのか分からないが、彼女をじっと見ていた。正直言って、あの場で”拒絶の領域”を張りたかったくらいだ。着流しの男からの視線や気配、闘気、声、全てを拒絶したかった。
そんな私と比べると、彼女は落ち着いていた。あの男を強者と認め、冒険者の先輩としてある程度の敬意を持っているようだった。だけど私は――あの人をそこまで信用出来ずに居る。
私という人間は、疑り深い。
そんな私が……彼女を信じて欲しいと言っても、響かないだろう。だけど、悲哀が止まらない。
彼女についての告知が、お触れと一緒に出た。マリスタザリアへの対応や、現在世界を襲っている脅威についての事が書かれたものだ。そこに、彼女の事も書かれていた。顔写真つきで、喜んだ。これで王都中に、彼女という存在を認めてもらえると。
でも、甘かった。
多少は緩んだが、彼女を遠巻きに見るだけで……会釈すら、してもらえていなかったのだ。
私は人を簡単に信用出来ない。だから、国民の気持ちも理解出来る。それでも……彼女に対してだけは……っ! 彼女を信じて欲しい。彼女の想いを、信じて欲しい。彼女の行動は本当に……本当に、世界の為の物なのだと。
そんな中、彼女に話しかけてくれた少女が居た。
大人達が敬遠する中、少女はただ一人、彼女にお礼を言ってくれたのだ。
私は、あの少女に……いつになるか分からないけど、感謝を伝えたい。あの少女のお陰で、彼女は救われたから。
人から信じてもらえず、疑われ、遠ざけられ、避けられるなんて、辛い。そんなの……私だけで、良い。
彼女にあんな思い、させたくない。
だから……ありがとうございます。
あなたのような、真っ直ぐな瞳と想いを持つ少女が曇らないように……私達はもっと、頑張りましょう。彼女も、同じ気持ちです。
明日から冒険者業の始まり。彼女を信じて貰う為に。あの御触れに嘘偽りはないと……彼女は世界の為に命を掛けていると……っ。
やれる事から、やっていきましょう。
なのでまずは――アンネさんに人型マリスタザリアの件を伝えておきます。どこかで浄化をしなければいけません。私達では、誰に”悪意”が憑いているのか……分からないのですから。




