記入日 A,C, 27/03/01
三度目の戦闘。相手は因縁深きホルスターン。強さもだが……魔法を使うという特殊な個体。正直いって、異常事態にも程がある。彼女のお陰で可能性の一つとして考えていたが……。
彼女は……頬を、大きく傷つけてしまった。私の所為だ。もっと丁寧に、”盾”を作るべきだったのに。
彼女の頬に傷跡は残っていないが、心に傷は残っている。彼女の頑強な蓋に閉じ込められているが……私は自分の甘い考えを捨て去る。
彼女が、”強化”オルイグナスを初めて使用した。彼女のオルイグナスは強力だった。通常の”強化”よりもずっと素早く、力強く、強化されていたから。通常の”強化”にはあった上限を突破しているようで、彼女の体の方がついていっていなかった。
膝の腫れは、その所為だと思われる。彼女なら慣れるのに時間は掛からないだろうけど、それまでは様子見してもらう事にする。何しろ起きた異変は、膝だけではないのだ。
彼女がオルイグナスし、暫く時間経った後……彼女は、全身の痛みに震えていた。魔力の通り道がズタズタだった。脳は痺れ、意識は朦朧。発熱し、一歩も動けないでいたのだ。本当に、あの日を思い出す、状況だった。
魔法の暴走なのか、”強化”という未知の魔法が起こしたのか、解らない。それが解るまでオルイグナスを禁じたいが……彼女の安全を考えれば、”強化”オルイグナスは必須だ。早急な究明が求められる。
彼女が見せた、王都での初戦闘。それが人々にどういった変化を齎すのか……。街ではすでに噂が蔓延していた。彼女を畏れ離れた者。祈るように手を組む者。様々だった。
だが、そのどれも……間違った印象によるものだ。
払拭するのに必要な要素がまだ足りない。王都からの告知があるまで、私は我慢するしかないようだ。
彼女を守るという誓いを立てたのに、私は未だに……守れていない。もっと考えろ。もっと動け。もっと想え。私はまだまだ足りない。
こんなにも彼女を想っているのに、何故足りないのだろう。私が思っている以上に、想いが足りないのだろうか。そんな弱音に、負けてはいけない。私が苦しむなんて許されない。一番苦しんでいる彼女は、誰よりも高潔な方なのだから。
私は前だけ見る。もう一度、あの時の誓いをここに。明日から冒険者になるのだから……!




