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六花立花巫女日記 外伝  作者: あんころもち
42.氷解
428/952

『ゾォリ』元老院③



 町に着くと、眉を顰められました。歓迎されていないのでしょう。昨日騒ぎを起こしてしまった事がここに来て響いています。それでも、”悪意”の浄化だけはさせてください。リッカさまが広域感知で”悪意”を見つけましたから。


「町の最北端かな」

「一つ、ですか」

「昨日の騒動の所為なのか、魔王に近づいてるからなのか、判断に迷うね」

「悪意が少ないのは良い事なのですけど、不気味なのは確かです」

「今は、一人で良かったかな」

「はい。浄化を終わらせた後、昨日の事を町長さんに謝罪をしたいと思っていましたから」

「そうだね。騒ぎを起こしちゃったし……」


 昨日は、旅人として受け入れて貰えそうな雰囲気でしたけれど……今日はもう、不審者として遠ざけられています。町の中央で神妙な面持ちで会話している事も問題なのでしょう。事情を町長さんに説明し、謝罪をしなければいけません。


「いこっか」

「はい」 


 ですがその前に、リッカさまが感知した”悪意”を浄化します。町の北側――何か大きな建物があった場所にあるようです。


「嬢ちゃん達、そっちには行かない方がいいぞ」


 北側に入るには、門みたいな仕切りを通る必要があるのですが――その直前で、ご老人に警告を受けました。


「何の用事かは知らないが、女子供が行く場所じゃない」

「何があるのですか?」

「そっちは負債者の強制労働施設だ」

「何故、隔離するような」

「さてね。兎に角、無法者が多い場所だ。行かない方がいい」


 強制労働施設とは……穏やかではありません。行くなという忠告は有難いのですが、浄化対象者はこの先に居ます。何より……負債者と強制労働という点だけで、”悪意”が吹き荒れる可能性が高まるのです。


「その負債というのは、法に則っているのですか?」

「……いいや。所謂闇金だ。返せない程の金利に溺れてるんだよ」


 近づかない方が良いというのは、監視の為に反社会勢力が居るという事でしょう。ただ、暴利によって強制労働させられているのなら、無視出来ません。王国の威光が届かない場所かもしれませんけど、ここは間違いなく王国なのです。王国の法律で裁くべきでしょう。


「昨日も新人監視員みたいなのが増えたみたいだしな。お嬢ちゃん達には危険すぎる」

「定期的に増えるのですか?」

「そうだなぁ。週に一回交代があるな。昨日は周期が違うもんだから良く覚えてる」


 新人が来たという事は、未だに動いているのですね。エッボの支配下にあるであろう北部で、他の組織が動いているとは思えませんが……まだ、エッボの死亡が伝わっていないと考えるべきでしょうか。


『新人……』

「細長い剣を肩に担いでな。人殺しにでも来たのかってくらいの面だったよ」

「……」

「……」


 町の周辺を警備していたと、言っていました。その新人さんは知り合いかもしれません。


「ご忠告ありがとうございます。ですけど、私達にも譲れないものがありますので」

「ま、無理には止めないがね」

「ありがとうございました」


 ご老人に頭を下げ、強制労働施設に足を踏み入れます。ただの居住区と思っていましたけど……この町にまさか、このような施設があるとは思いませんでした。


「強制労働って言ってたけど……」

『言い辛いけど、この町で何をさせられてるんだろ。近くにある岩山から何かを採って来てる様子はないし、特産品があるという訳でも……』

「岩山によって王都から隠れていて、この場所の設置に文句を言わない町民という好立地となっています」

「裏の仕事って、事?」

「もし足が着いても、ここが見つかるだけです。そして……処分も」


 人を労働力としか見ていない者達による悪事です。やはり、見過ごせませんね。何を作っているのか、気になるところです。


「退治しておいた方が、良いのかな」

「下手に手を出し、この町に危害があってはいけません。それに、根本的な解決をしなければ、この問題は終わらないでしょうから」

「やっぱり、王国兵に任せるべき……だよね」

「そう、思います」


 解決に動きたい気持ちは、分かります。ですが”お役目”の完遂を第一に考えなければいけません。ここは末端でしょうから、ここを潰しても新しい場所で同じ事が繰り返されるだけでしょう。今は、我慢するしかありません。

 

「ただ、捜査に来たと思わせてしまえば、浄化対象者に危険が及びますので」

「冒険者として来たっていうのは、辞めたほうが良いね」

「はい。別の方法を考えなければいけませんね。”巫女”である事も隠すべきかもしれません」

()()()()()()()に手伝ってもらう方法を思いついた、けど」


 あの人相なら、同じ組織の人間と思われるかもしれません。辺境での監視任務となると、暇を持て余しているでしょう。会話で時間を稼げると思います。ただ――。


「それを行うには、シーアさんの方が解決してなければいけませんね……」

「んー。訪問マッサージって事にして、私が一発ドカンと?」

「私としての感情ですと、それはやって欲しくないです。でも、良い考えで……」


 実際に行う訳ではないと、分かっています。分かっていますが……そう伝えて、相手にそのような視線を向けられる事自体我慢出来ません。ですが確実に近づけるでしょう。


「むむむ……」

『近づいてきてる』


 むむむ……と頭を悩ませている私を庇う為に、リッカさまが私と立ち位置を入れ替えました。遠目で見ているだけかと思いましたが、私達を狙って誰かが近づいてきています。


「こんな所で迷子かな。おじさんが案内してあげようか」

「……」


 下心丸出しの男性ですから、いつも通り対応しようと思いましたけど――。


『この人が対象だよ』

(向こうから来てくれるとは)


 浄化対象者です。ここまで近づいてくれたら、私の”光”で浄化出来ます。マッサージの必要はありません。


「――――光を(イグナス)

「そう緊張しなくて良いからね。まずは家にでも――」

「キャアァァァァっ!」


 びくりと、私が一番吃驚してしまいました。私が浄化しようとしたのですが、リッカさまが掌に”光”を纏っています。打ち込む為というのは分かっているのですが、どうして悲鳴を上げてしまったのでしょう。初めて聞くリッカさまの悲鳴に、私は混乱しています。


「ま……チッ! 来いって」

「――っ!!」

「ふごッ!?」

「行こっ」

「あ――は、はい」


 お腹を押さえた男が前のめりに倒れ、リッカさまが私に手を差し伸べて逃げる準備を始めました。私はぽかんとしていましたが、漸くリッカさまの意図に気付いて手を握り返します。なるほど。その為の悲鳴でしたか。


「待て……! クソッ……」

「失敗してやんの。あんな女にちょっと突かれたくれぇで」

「あぁぁぁクソッ!!」


 後ろから、苛立った男の声が聞こえてきます。”悪意”はもう感じませんし、大丈夫でしょう。ここを作った組織の事は気になりますが……共和国か王国に帰る事が出来た時に、コルメンスさんに報告します。


 リッカさまに手を引かれて、そのまま走って収容区画から出ました。何も出来ない事は、歯痒いですけれど……平和になったら、北部の整備も進みます。それまで、耐えてください。必ず――悪の組織は壊滅させます。


「大丈夫か? 悲鳴が聞こえたが」


 慌てて出てきた私達に、忠告してくれたご老人が声を掛けてくれました。


「お爺さんの言うとおり、大変なところでした」

「そうだろう。悪い事は言わん。もう行くんじゃないぞ」

「はい。ありがとうございます」


 演技とは思えないくらい、迫真の悲鳴だったのです。心配してしまうのも無理はありません。演技と分かっていたはずの私ですら――悲鳴を上げさせた男に、怒りをぶつけてしまいそうになったくらいですから。


「それでは、失礼します」

「うむ。……所で、お嬢さん達はまさか」

「お爺さんに、神さまのご加護がありますように」

「――! お嬢さん達にも」

「ありがとうございました」


 祈りを捧げた私達は、次に町長さんの所へ向かう事にしました。謝罪をして、”悪意”を再度感知してからシーアさんの所に戻りましょう。


「驚かせちゃってごめんね?」

「その、悲鳴が余りにも迫真だったので……今でもどきどきしています」

「初めて悲鳴を上げたけど、結構上手く出来たかな」

「思わずあの人に追撃を加えてしまいそうになるくらい、本物の様でした」

『冗談だと思うけど、アリスさんの魔力が見えたような?』


 冗談ではなく本当に、リッカさまの悲鳴を聞いた瞬間――魔力を練りました。


「浄化は終わりでしょうか」

「一応もう一回広域感知しよう」

「分かりました。では中央へ」


 リッカさまが広域感知をしている間に、町長さんの場所を尋ねます。三人くらいに、逃げられてしまいましたけれど……教えて貰えたので、気にしません。


『悪意、なし』

「町長さんは西の方に居るそうです」

「じゃあ行こうか。悪意はもう無いみたいだし」


 元老院との話し合いが終わったら町を出ましょう。急ぎではありませんが、次の行き先であるトゥリアは……ライゼさんとレイメイさんの故郷で、マクゼルトの故郷でもあります。出来るだけ早く、マクゼルトの情報を集めなければいけません。


「シーアさんは大丈夫かな」

「結果は分かりません。でも、悪い事にはならないと信じています」


 シーアさんの判断ならば、私達は受け入れます。ただ――元老院によって捻じ曲げられそうになっていたら、止めましょう。私達はシーアさんの仲間なのですから。




「それでどうなさいますかな?」


 町長さんへの謝罪を終わらせ、船の傍に戻ると――シーアさんが苦い表情で元老院を睨んでいました。押されているようです。そして……やはり、捻じ曲げられようとしています。


「……」

(巫女さんとリツカお姉さんの邪魔にならない方法)


 そして何故か、シーアさんは――私達の事を考えていました。つまり、嗚呼――そういう事ですか。エルさんだけでなく、私達も使ってシーアさんを追い詰めたのでしょう。それは、こちらに喧嘩を売ったという事ですね。私達を巻き込んだ事の意味を、少々軽んじているのではないでしょうか。


「分かりました。帰り」

「待った」


 そしてリッカさまも、シーアさんの表情から凡そを掴んでいます。シーアさんの言葉を止め、元老院を強く睨みました。


「シーアさん。本音で話して」

「私の本音ですよ」


 帰ろうとした事が、でしょうか。私には元老院への怒りしか視えていません。


「シーアさん」

「ですから、本音です」

「いいえ。無理やりです。それも、私達が関係していますね」

「……ふぅ。お二人相手に心理戦なんてしませんよ。全て話します」


 観念したシーアさんが、説明をしてくれました。曰く、シーアさんを()()()()”巫女”を指名手配犯とし、()()()()()北部の捜索及び介入、更には王国の責任を追及するという物です。シーアさんが帰国すれば撤回するという事ですが――それで止まるのは共和国だけで、連合は関係なく追及するでしょう。そして果ては、戦争です。


「分かったでしょう。これ以上活動の障害を増やす訳にはいかないんです」


 私達の為だからと譲ろうとしませんが、そこにあるのは決意ではなく諦念です。シーアさんの意思ではないのですから、私達の考えは変わりません。


「もし、エルさんの為だったら()()()()()()()()()

「ですけど、私達の為ならば止めます」

「ダメですよ。浄化所か、”巫女”としての活動の一切が出来なくなりますよ」


 シーアさんの諦念も仕方ないのでしょう。もしも共和国の企みが完璧に決まれば、私達は北部後半で”巫女”を名乗れません。


「私は巫女さん達の迷惑にはなりたくないです」

「それが本音?」

「はい」


 メルクの件で、シーアさんも心を痛めてくれていたのです。だからこそ、私達が”巫女”で居られるようにしたいのでしょう。ですが――予定通りです。変更はありません。私達はシーアさんの意思を尊重しましょう。


「最後に聞くけど、旅は楽しかった?」

「……もちろんですよ」

「そっか」

「では、話は決まりですね」

「そういう事です。すぐに帰国を」

「元老院の皆さん。これで失礼します。私達はシーアさんを連れて行きますので、どうぞご自由に」

「もう二度と会いたくないので来ないで下さい」


 リッカさまは、シーアさんの肩を掴みました。私は元老院にお辞儀し――シーアさんを誘拐する事を伝えます。どうぞ、好きに喧伝してください。何度も言いましょう。”巫女”とは名誉ではなく、在り方なのです。


「ちょっと? 話理解してましたよね。お二人ならこうなるかなって思ってましたけど、そんなあっさり決めて良い物じゃないですよ」

「良いのです」

「でも、エルさんの事は気になるね」

「問題はそちらですね」


 私達だけでなく、エルさんに危害を加えるかのような発言もしたそうです。エルさんは今、頼れる腹心が居ません。そちらを何とかしないと、シーアさんの不安は拭いきれないでしょう。


「お姉ちゃんなら大丈夫です。もしお姉ちゃんに何かあったら、いよいよこのお馬鹿達は終わりなので」


 今までは、その一線だけは守っていたようです。ですがあの人達は、はっきりと言いました。連合と組んだと。何があるかわかりません。


「ってそういう話ではないんですよ。この人たちは冗談なんて言いません」

「シーアさん。この人たち相手に何言っても無駄だよ」

「直接被害があるわけではありません。根も葉もない噂なんていうのは、自身の行いで覆せます」


 王都ではそうでした。王都でそうだったのですから、北部後半でもそうでしょう。私達は博愛主義者ではありません。好き嫌いくらいします。アルツィアさまのように、母のような存在になる事も出来ません。ですが、”人”の善性を信じています。信じて貰う為に、私達は行動し続けましょう。


「シーアさんが旅を続けたいなら」

「私達の名声くらい使ってください」

「しかし……」


 納得出来るものではないと思います。ですがこの人達は決めているのです。シーアさんには帰る以外の選択肢を選べないのなら、私達が別の選択肢を用意するだけでしょう。王都での演説。聞いてましたよね。私達は道を作る事しか出来ないのです。


「私達はもう出発するので、降りてもらえますか」


 私達の宣言を聞いていたはずですが、元老院の方達が船から降りてくれません。


「……本気ですかな?」

「自分から持ちかけておいてその態度は理解出来ませんね」

「売られた喧嘩を買っただけです。魔王討伐に、”巫女”が必要という訳ではないんですから、お好きにどうぞ」


 攻め立てて追い出し、船を出発させました。指名手配用の”転写”を感知したので、”拒絶”させて貰います。好きにして良いと言いましたが、手配書くらい手書きで作ってください。


「全ク、お二人は勝手でス。これでもかなり迷って決めたんですけド?」

「まぁまぁ」

「私達にはシーアさんが必要なんです」

「……仕方ないですネ。より一層頑張ってあげまス」

「程ほどにね?」


 元老院の話は終わりです。なるようにしかなりません。これは私の結論でしかありませんが――シーアさんがどちらを選ぼうとも、元老院と連合の企みは止まらないでしょう。世界がどちらに転ぶのか……それはきっと、アルツィアさまでも分かりません。だから、自身の意思を尊重して良いのです。


「ところで、レイメイさんは何をしていたのですか」

「シーアさん一人にあんな決断を強いて」


 町から離れた所で、運転しているレイメイさんにちくりとお小言を向けてしまいます。時間を制限されたシーアさんは、冷静さを欠いた決断をしようとしていました。難しい話だった事は分かっていますが、レイメイさんも棒立ちせずに何かしら行動して欲しかったです。


「いやお前ぇ、共和国語が分かねぇ俺に何を求めてんだよ」

「雰囲気で困っているのは分かっていたかと」

「しっかりしてください」

「本当、そうですよネ」

「お前ぇ……途中で翻訳を放棄しやがって……」


 言葉が分からずとも、目に見えてシーアさんが追い詰められていたのは分かったと思います。戦い以外でも、修行の成果を見せて欲しいものです。


「つーか赤いのにだけは言われたくねぇんだが」

「シーアさんが困ってるのは分かったはずです。説明を求めるとかやりようはあったって話ですよ」

「リッカさまは、会話が分からずとも感情を読むことが可能ですので」

「お師匠さんも共和国語が分からなかったみたいですけド、ある程度は通じてましたヨ」

「例外共が……」


 分からんと言いながらも、シーアさんの表情とか声音で凡その内容を掴んでいました。レイメイさんも同じ事が出来るくらいには、鍛えられてきたはずです。


「その例外にならないといけない人が何を言ってるんですか……」

「……」

「ぐうの音も出ないってこういうのを言うんですネ」

「勝てる見込みの無い戦いはするなと、リッカさまがいつも言っているじゃないですか」

「負けられねぇ戦いがあるとも言ってんだろが」


 ただ単に、リッカさまに負けたくなかっただけの戦いを、負けられない戦いとは言いません。自分を見詰め直す為の敗北くらいは、受け入れて欲しいと思っています。


「まァ、私も巫女さんとリツカお姉さんには文句がありますけどネ」

「やっぱり?」

「一応お聞きします」


 無理矢理連れてきたようなものなので、言いたい事があるのは当然ですね。ですが、訂正も撤回も出来ません。私達も軽い気持ちで元老院に喧嘩を売った訳ではないのです。


「感謝はしてまス。私だけだと出来ない選択でしたかラ」

「文句じゃねぇのかよ」

「まずは感謝しなければいけないでしょウ。私は助けられたんですヨ」


 情報部から”巫女”との関係も聞いていたのだと考えられます。エルさんだけでなく私達まで話題に出したのが証拠です。私達にまで被害が及ぶとなれば、シーアさんが諦めると知っていたのでしょう。


「だからといっテ、取って良い選択ではないですけどネ?」

「司祭系の人だったから」

「どちらにしろ()()は変わらなかったかと」


 シーアさんがどちらを選んでも、元老院と連合の動きに変化は無いと思います。連合とかなり深いところまで繋がっているようでしたから、準備が終わっているという考えは……かなり、信憑性が高いかと。


「お姉ちゃんへの報告しなければいけないのですけド、気が重いでス」

「言わなくても良いんじゃないかな?」

「それは難しいでしょうね。元老院の対処は必ず必要ですから」

「そういう事でス。あの人たちは絶対に許しませン。国に居られなくしまス」


 怒ってますね。シーアさん曰く怠け者の愚者である元老院が、ここまでの計画を推進出来るはずがありません。裏に居るであろう連合がどこまで主導権を握っているのか……共和国を好き勝手する人たちに、シーアさんは怒っているのでしょう。


『敵に回しちゃいけない子なんだけど、元老院の考えが分からないなぁ』


 敵に回さず、シーアさんの危機感を煽って穏便に連れ帰るのが一番効果的だったと思います。しかし、いきなり関係を修復出来る訳ではありません。エルさんや私達を使ってシーアさんの選択肢を削るしかなかったのでしょう。


 現状私の妄想でしかないのでしょうけど――少なくとも、シーアさんを連れ帰る事の意味は確定しているはずです。魔王討伐の時間稼ぎと、シーアさんという戦力を手の届く範囲に置いておきたいのでしょう。


『裏で手引きをしている人間が居る?』


 共和国主導の作戦ではないと思います。


『連合と手を結んでる、か。目的がみえてこないなぁ』


 目的、ですか。今の所手段しか分かっていませんね。やはり王国の資源、でしょうか。


「まァ、あれでス」

「うん?」

「ありがとう、ございました」


 シーアさんはフードを深く被り直し、赤くなった頬を隠しています。勝手をした私達を怒りたかったのでしょうけど、そもそも原因が共和国にあるという事で謝りたいという気持ちもあったようです。ですが最後には、お礼だけにしてくれました。


「お礼を言うのは私達だよ」

「いつも私達の為に矢面に立ち、庇ってくれていたじゃないですか」

「今回は私達の番だったって事で」


 私達は支え支えられという関係です。しかし支えられる事を甘受し、それを当たり前と思ってはいけません。それこそ”人”という生き物でしょう。シーアさんが困っている時は、私達が助けます。私達はあなたの姉のようなものなのですから、頼ってください。


「……困ったお姉さん達でス」


 フードだけでは足りないと、シーアさんが背中を向けてしまいました。


「サボリさン。次の町まで早く行って下さイ」

「照れ隠ししてんじゃねぇよ」

「分かってても黙ってるのが男ってもんでス。アーデさんが怒りますヨ」

「アーデを出すんじゃねぇよ! ……ッてか痛ぇな!? 蹴るんじゃねぇ!」


 何だかんだで、この光景が日常になっています。四人旅、完遂しましょう。



ブクマ評価誤字報告ありがとうございます!

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