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六花立花巫女日記 外伝  作者: あんころもち
41.成長と変化
424/952

『メルク』因縁⑨



「お゛い゛」


 煤だらけのレイメイさんが戻って来ました。敵は殲滅されたようですし、怪我は――擦過傷かと思いましたけど、少し赤くなっているだけですね。避けきれずに掠ったのでしょう。恩がありますし、治した方が良いのかもしれませんが――今は、無理です。


「やっと戻ってきましたカ」

「てめ゛ぇ゛……」

「全員揃ったので、町民が集まってくるまでに決めます」


 すぐそこまで、町民は来ています。すぐにでも行動を決める必要があるでしょう。


「リッカさま。どうですか?」

「”光”は向こうまで届いてたけど、地下までは」


 ”アン・ギルィ・トァ・マシュ”の光が届いていれば、浄化出来ていたかもしれませんが……無理だったようです。町民達の中に”悪意”を持っている人が居ると、リッカさまが感知しました。


『それに、負の感情が強い』

「先代巫女様は、余程この町で信頼されているようで」

「お褒めに預かり光栄ね。赤の巫女様」

「私の言葉は全然通じませんでしたけド、お二人ならどうでス?」

「無理かなぁ」

「今まで受けた事のない感情がこちらに向かっています。正直、私達の言葉は逆効果でしょう」


 ここまでの殺意は、集落でも受けた事はありません。あの司祭イェルクでも、憐憫が混じっていましたが――必死な、殺意です。”悪意”一歩手前と言えるでしょう。リッカさまが嫌味を言いたくなる気持ちが分かります。一分の疑いもなくルイースヒェンさんを信じ、私達を排除する為に町民達は動いているようです。


(本当に……人心掌握術に長けた人ですね。昔も今も、その力を悪用している事が問題ですけど……)

「議論なんざいらねぇだろ。さっさと船に戻るぞ」

「そうは、いかないんですよ」


 立ち上がったリッカさまが、腕の調子を確かめています。浄化しなければ、ここから出る事は出来ません。あれだけの殺意です。”悪意”を放置すれば『感染』が町全体に広がるでしょう。


(ですが……それは、私が行うべきものです。遠くから全員に撃ち込む以外の手段はないと、思います)

「全員地下から出て来てる。多分私達が何もしてないって事で、町民達でマリスタザリアを倒す気だよ」


 既にマリスタザリアが殲滅されているとは、想像すらしていないと思います。


「何が起きてるのかを町民が理解するまでに一瞬時が止まるはず」

(だからこそ、その一瞬で私が――)

「リッカさま……?」


 私に刀と剣を預けたリッカさまが、手首を解しています。それは、いつもの……体術を使う前の、準備動作でした。


「私がやる。アリスさん達は隠れてて? ルイースヒぇンさんはそのままで」

「私が居ると勘違いされるわよ?」

『人質にしてるって思われるだろうけど――怒りの瞬間も体は固まる。思考の沸騰は正常な判断を狂わせるから、好都合』

「三秒あれば事足ります」

「三秒?」

「リッカさま、それは」

「信頼回復は望めないけど、”巫女”としての仕事はする」


 浄化対象は十人以上です。”強化”だけだと、いくらリッカさまでも無理でしょう。つまり……”抱擁強化”を、使うつもりなのです。


「町を救ってあげたんですから、せめて事後処理くらいしてくださいよ」

「はぁ……。ま、良いわ。この町だけの評判って事にしてあげる」

「それで良いです。せめて私達が魔王を倒すまで、町に留めて置いてください」


 急いでいるから、私が声を出す前に、話しがどんどんと進んでしまいます。浄化と、ルイースヒェンさんの手伝いは必要です。この町でどうこうではなく……今後の活動に、響きますから。この町で留める事が出来れば、私達がやる事に変更はありません。


(リッカさまの判断に異論はありませんが、作戦には異論があります)

「リッカさま、私が――」

「【アン・ギルィ・トァ・マシュ】と私の治療、それも……私の肘の治療で、アリスさんの魔力がギリギリなのは分かってるよ」

「っ……」


 ”アン・ギルィ・トァ・マシュ”後の余裕が出来たとはいえ、もう、魔力は尽きています。


(それでも、リッカさまに負担を掛けるくらいなら、私が……)

『私にとっては、アリスさんの体調優先。これ以上の魔力消費は生命に関わる』

「……」


 私がリッカさまの体調を、全て把握出来ているように……リッカさまも、私を把握しています。ここで私に任せると……私が()()()()()を、リッカさまは知らずとも感じ取っているのです。


「シーアさん、アリスさんをお願い」

「分かりましタ。サボリさんは船の準備しておいてくださイ」

「まだ文句言い足りねぇんだが」

「もたもたやってるからこうなったんですヨ?」

「グ……」


 已むに已まれぬ事情があるのなら、リッカさまも納得してくれると思っています。ですが、今がそうなのかと問われると――。


「――私の強き(【マモ)想いを抱き、(フォルテス】)力に変えよ(・オルイグナス)


 ”抱擁強化”を発動させたリッカさまは、町からやって来た町民の集団に……向かおうとしています。その姿はいつもと同じでしたが、肘の動きがおかしいです。ちゃんと治し、違和感も残っていないはずが――感覚を忘れる訳ではありません。リッカさま体と頭は……骨が出ていたという事を覚えています。違和感を覚え、体の動きにズレが生じているのです。


「さァ、私達は船に行きますヨ」

「シーアさん、待っ――」


 有無を言わせず、シーアさんは私を”水球”に乗せて走り出しました。


「普段の巫女さんなラ、私でも抑えられなかったはずでス」

「っ……」

()()()と同じことをしようとしてるんでしょウ」

「あ?」


 レイメイさんが知らないという事は、シーアさんだけの秘密にしてくれているようです。ですが……シーアさんは、私が何をしたのか、薄々感付いています。


「リツカお姉さんが許すはずないでしょウ」

(まァ、私もですけど)


 私を連れて”疾風”していますが、”水球”のお陰で衝撃は殆どありません。すぐに、船に着きました。


「リッカさま……」

「サボリさン、すぐに出られるようにしてくださイ。後、もうちょっと近づいておきますヨ」

「ああ」

「巫女さン、生命剤でス」

「……はい」


 船の上から、リッカさまの姿が見えます。丁度、町民に突撃していくところでした。速度は、十全ですが……やはり、左側に重心が傾いています。右肘を庇っているのでしょう。一人、二人と浄化していますが……やはり、動きに違和感があります。


(ただでさえ……腕輪だけの”抱擁強化”オルイグナスは無茶なのに……)


 一瞬、リッカさまの体が止まりました。


「っ……」


 船から飛び出そうとしましたが……魔力を練ろうとした私の奥底が、軋みを上げています。”アン・ギルィ・トァ・マシュ”後はいつも、こうです。生命剤では戻りません。


 これ以上踏み込めば、あの時と同じになると魂が警告を発しているのでしょう。私は……踏み込めます。私はこの先に行く事が出来るのです。ですが……リッカさまの心配を、覚悟を振り切る事が出来ません。


(町民が……)


 騒いでいます。リッカさまを漸く目視出来た方達が、「赤の巫女の所為で人が倒れている」と、騒いでいるのでしょう。それが、自分たちを助ける為と考えずに。罵声を、浴びせているのでしょう。


(あと、一つ……)


 最後の”悪意”を、意地で打ち抜いたリッカさまが……船に向かって走り出しました。その姿を見る事が出来た人は居ません。未だに集団のどこかに居ると、騒いでいます。余りの愚かさに、昔の自分が首をもたげてきますが……それこそ、リッカさまの行いを穢してしまうでしょう。ぐっと、気持ちを静めます。


「巫女さン」

「船を、動かしてください。リッカさまが飛び乗りますから」

「はイ」


 そうお願いすると同時に、リッカさまが船に飛び乗りました。


「リッカ、さま」

「はぁ……っはっ……。大丈夫、全員……浄化してきた、よ」

「無茶しすぎですヨ」

「気付かれないよう、するつもりだった……けど、気付かれちゃった……」


 膝に手をついて、肩を上下させているリッカさまに近づき……抱き締めます。


「……ありがとうございます。リッカ、さま」

「巫女の名誉は、完全に終わっちゃったけど……役目だけは、守れたよ……」

「はい……はいっ……」


 言いたい事は、たくさんありました。でも……お礼だけに、します。リッカさまがしてくれた事は、間違って等……いないのですから。


(肘、これくらいなら……今でも……)


 ”治癒”……とすらいえない、ちょっと冷やす程度の魔法を、肘にかけます。庇っていたから、炎症を起こしてしまったのでしょう。もっとしっかりと治してあげたいのですが……ここで無理をしては、リッカさまの()()()を無駄にしてしまいます……。


「今後の事を、話さないと」

「このままで、話しましょう」


 治療が終わっても、私はリッカさまを抱き締め続けています。それでもシーアさん達は――普通に話を始めてくれました。


「それで何が起きたんでス」

「魔王が出ました。あくまで欠片、ですけど」

「欠片デ、【アン・ギルィ・トァ・マシュ】ヲ?」

「そうしなければ、リッカさまが」

「死んでた、ね」


 あの時の判断だけは、間違えていなかったと思います。ですが……リッカさまの赤い閃光がなければ、相討ち……でした。


「お二人が全力でなければ勝てなかった相手というのは分かりましタ。それデ――貴方は何をしていたんですカ」

「絶好の機会を逃さねぇように」

「殺意を持って襲い掛かってくる相手は貴重だからね。それに……あそこまで形を持った殺意は、そうそう出会えないから」


 成長を渇望し、その為に力を尽くす事自体は間違えていません。レイメイさんは今回の事で、更なる飛躍を遂げたでしょう。それだけは、確かです。


「それは今でないとダメだったんでス?」

「正直今じゃなくても良いかな」

「あの場では最短討伐をして欲しかったと思っています」


 倒しながら避ける訓練をしても良かったと、思っています。私はレイメイさんを強く止めなかったので、ここで責める事は出来ません。


「もしサボリさんが戦ってくれてたらどうなってたんでス?」

「余り結果は変わらなかったと思うよ」

「私達が戦いに出れなかった時点で、町民は疑ったでしょう。レイメイさんと私達が仲間と分かっているか微妙ですから」


 あそこまでルイースヒェンさんの言い分を妄信していたのですから、レイメイさんの状況や何者だったのかなんて関係なかったと思います。良くも悪くも人の想像力とは、際限が無いのです。だからこそ魔法があり、魔法の可能性は無限と言えるのでしょう。


「でも、最悪の事態は避けられたよ」


 ルイースヒェンさんは一応、この町だけの事にすると約束してくれました。今のルイースヒェンさんならば、信じても良いと思います。ただ……町民がどこまで、我慢出来るか……です。猶予はそんなに長くないでしょう。


「あの町だけでの評価なら、まだ……挽回出来る。それにいつか、分かってもらえるかもしれないから」


 会話出来る状態ではありませんでした。私達が話せば話すだけ、あの人達は疑心暗鬼に呑まれていったでしょう。それだけ、あの人達は錯乱していました。浄化された方達は、思った以上に痛みが無い事と――胸の痞えが取れたような不思議な感覚に首を傾げているはずです。ですが大半の町民は怒りの矛先を向けるでしょう。


 問答無用以外に、手はありませんでした。落ち着いていれば、最善手を見つけられたのかもしれませんが……リッカさまの行動は、あの場において最適であったと自信を持って言えます。


「つーかよ」

「なんでス」

「アイツ等、何であんなにキレてたんだよ」

「私達がマリスタザリアを呼んだと思ったからじゃ」

「その上で、戦っていないように見えたからです」


 レイメイさんの疑問も分かります。いくらルイースヒェンさんを信じた上で牧場の状況を見たのだとしても、疑いすぎだと感じたのでしょう。それは、私達も感じています。錯乱して、それしかないと決めつけているにしても、怒りすぎでした。冷静な人が一人も居なかったのです。


「それは私の所為ですネ」

「あ゛?」


 自分だけが責められていたから、レイメイさんがキレています。何か事情があるのは間違いありませんが、シーアさんの所為で町民達が錯乱してしまったようです。


「まぁ、話は最後まで聞いてくださイ」

「言い訳してみろよ」

「私に独り言癖があるのは知ってるかと思いますけド、その時は共和国語なんですけどネ」


 自身の考えを纏める為に、独り言を発するのは効果的と聞いています。私はしませんが、アルツィアさまは偶にしていました。


「町民の中に共和国語を聞き取れる人がいましテ」

「そんで」

「簡単に言えバ、虐殺時代のアルツィア様の気持ちが分かりましタ」

「あ?」

「あぁ……」

「……不幸、ですね」


 私達だからこそ、それを痛感していると言えるでしょう。丸々端折った説明でしたが、全て理解しました。中途半端な聞き取りによって、大きな齟齬が生まれたようです。たった一文字聞き取れなかっただけで、会話は成り立たなくなります。


「牧場での騒ぎをお祭りと言ったのが間違いでしタ。本当にマリスタザリアが出るとは思いませんでしたのデ」

「楽しんでるみたいに、思われちゃった?」

「ですネ」


 私達も、瓶の状況を見た時点ではマリスタザリアが出るとは思っていませんでした。なので、シーアさんの言葉が多少軽くなってしまった事を責められません。聞き取った人も、ルイースヒェンさんからマリスタザリアが出ると聞いて気が気ではなかったのでしょう。


 つまり……誰が悪いとかは、無いのです。


「お前も悪いんじゃねぇか」

「少し表現を間違えた事は認めますけド、聞き間違える方が悪いと思うんですよネ」

「だったら俺ばっかり責めるんじゃねぇよ」

「サボリさんのは言い訳出来ない程の失態ですシ」

「赤いのが負けるくれぇの敵が現れたんだぞ。少しでも強くなる必要があんだろが」

「そこまでです」


 強い口調と雰囲気を纏ったリッカさまが、二人を止めました。止めなければ、そのまま喧嘩へと発展していたでしょう。それこそ今までのじゃれ合いではなく、完全な決別に発展しそうな勢いでした。


「今回の件。全部が不運な勘違いによる物です。誰が悪いとかはありません」

「普通であれば、勘違いを正せるだけの余裕はあったはず。でも、あの町はちょっと……事情が違ったからね」


 ルイースヒェンさんの言葉にしても、嘘ではないのです。それを喧伝した事による混乱である事は、確かなのですが……誰かを責めれば解決するものではありません。


「私達が争う必要はありません」


 レイメイさんはレイメイさんの、シーアさんはシーアさんの仕事を完遂しました。状況が切迫していた為、思い通りにはいきませんでしたが……犠牲者は出ていません。今回はそれで、良いのです。私達に必要なのは喧嘩ではなく、これからの話し合いでしょう。


「今回の事で、私達の行動方針は結構固まったと思うんだ」

「はい。”巫女”である事を隠さなければいけない場合が、確実にあるという事です」


 ルイースヒェンさんが信頼されているからこそ起きた齟齬ですが……北部後半の方達は元々、”巫女”という物の威光に疑問を感じているのでしょう。メルクの方達はルイースヒェンさんの事もあってアルツィアさまへの信仰を忘れずにいてくれているようですが……この先はやはり、分かりません。


「北は”巫女”やアルツィアさまの威光が通じないのですね」

「悲しいけど、”神林”が南に位置してる以上、遠くまで声が届かないのは仕方ないと思う」


 少し信頼されていない程度とか、考えていましたが……一切合切、期待して貰っていないようです。それくらいの気持ちが、私達には必要なのでしょう。


「これからお二人が広めていけば良いかト」

「さっきみてぇにならなきゃ良いがな」

「その為に慎重になろうって話ですヨ」

「手っ取り早い確認方法を、見つけたんだ」


 リッカさまが思いついた事は、かなり有効な手であると私も思っています。


「”巫女”って言いふらす事無く町を歩けば良いんじゃないかな」

「もし私達を知っていれば、それなりに反応を見せます。その反応が好意的であれば、という事ですね」

「うん。町長に会うのも、その後で良いと思う」


 シーアさんが言ったように……私達が頑張る事で、未来を変える事が出来るでしょう。今は、前進する為に身を潜めます。


「もし今回の様に否定的だったらどうしまス? 浄化出来ないんじゃないですかネ」

「とりあえずは、私の”光”で視界を一瞬奪い、その隙に撃ち込みます。今回は疲労によりそれは出来ませんでしたけど……次からは出来ます」

「それでもギリギリの手法だから、別を考えないといけないけど……。とりあえずは、これでいこうかなって」


 人々が平和に暮らせる世界こそ、私達が望む”お役目”の果てです。崇め奉られる事に、私達は頓着しません。


「もう聞き込みとかも……最低限が良いかもね」

「聞き込みは、冒険者として行いましょう」

「まぁ、それくらい慎重な方が良いんじゃねぇか」

「私としてハ、巫女さん達が安全なら何だって良いでス」


 ここはまだ、王都に近い方です。ここでこれなら、更に北は……初めから疑いたくはありませんが、慎重にいきましょう。


「方針なんて変わって当然くらいの気持ちで居た方が良いでス。各町ごとに決めてもいいくらいですヨ」

「相手に合わせすぎるのも面倒だろ」

「それは同感ですけどネ」


 全員に良い顔を見せる事は出来ません。私達も”人”ですから、傷つきますし落ち込みます。”巫女”を嫌っているかどうかを最初に確認するくらいは、お許しください。


「さテ、方針が決まった所デ」

「まだあんのか」

「当然でス。魔王の事を考えなくてハ」

「何の為にあそこに現れたのか、かな」

「私達の妨害だけならば、いつものように悪意だけをばらまくはずです。でも今回は、本人の意思を持った人形として現れました」


 ”悪意”だけの人形が視えていた事に、魔王は驚いていたようですけど――鷹揚な態度と戦いへの意欲は威厳を感じさせました。エッボのような過信ではなく、確かな実力と冷静な判断能力を有した、強敵です。


「魔王の言葉も気になります」

「戦う気はなかったけど、確かめる。だね」

「はい」


 実力を確かめたかった、のでしょうか。今までもあのように、どこからか見ていたのかもしれません。そうやって観察して……リッカさまの行動を、調べ上げて……っ今度もまた、悪用しようとしているのでしょうか。


「私が動けなくなった魔法も、なんだったんだろ……」

「私も、何をされたのか分かりませんでした……本当に、あれは……」


 あの魔法への対処も考えないと……また……っ。


「体術の方はどうだったんでス?」

「マクゼルトの見様見真似、かな。それでも威力は、圧倒的だったけど」

「サボリさんが焦るのも無理ないですネ」

「今度から化け物は俺によこせ」

「切羽詰っている時に回避修行開始する人に任せるのはちょっと」


 頭を撫でられながら、リッカさまの心音を聴いて思考に耽ってしまいました。設置型かもしれないので……地面と、リッカさまに向く魔力に気を付ける必要が、ありますね。足を奪われる事は、死……なのですから。


「明日から本気で修行つけて上げます」

「本気だと」

「明日になれば分かりますよ」


 殺意と本気の拳が欲しいレイメイさんに、意味深な事を告げたリッカさまは――はぁ……とため息を吐き、肩の力を抜きました。話し合いも終わったので……部屋に行きましょう。治療は終わりましたが、輸血が必要かどうかの確認と、癒しが必要です。


「私達は少し、休みます」

「分かりましタ。次の町に着いたら呼びまス」


 今日はまだ、次の町まで寄る時間がありそうなので……しっかりと、休息を取りましょう。私もそろそろ、疲労が顔に出てしまいそうですから……。


「休む前に、お風呂に入りましょう」

「うん」


 汗や、土を落として……血も、流さないといけません。ローブも、新調するつもりですが……直しておきましょう。


「んしょ、と」


 ローブを受け取る為に、脱衣所まで付いて行きましたけど――じぃと、リッカさまを見ます。やましい気持ちは、ないのです。今回は、本当に……一切、ありません。


「離れたく、ないです」


 今日は、いつもよりも……リッカさまを、感じていたいです。


『――可愛い』

「おいで?」

「――はいっ」


 両手を広げたリッカさまに、抱き着いて……私も、ローブを脱ぎました。



ブクマ評価誤字報告ありがとうございます!

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