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六花立花巫女日記 外伝  作者: あんころもち
2.手遅れ
30/952

記入日 A,C, 27/02/26



 昨夜の後遺症はないようだが、体に力が入って居ない。それに反して、魔力は淀みなく流れ、荘厳な大河を思わせる迫力を秘めている。

 体から力が抜けているのは間違いなく……”恐怖心”が関係している。


 彼女の魔法は”強化”、”抱擁”、”光”。まだ”強化”しか使っていないが、既に魔法として形になっていた。


 魔法を初めて使って、あの密度を維持出来ているのは驚異的。自分に使うという事は、それだけ制御が難しいという事。他者に使う”治癒”が、その最たる例である。


 私は”治癒”で伸び悩んでいたから、その凄さが良く分かる。

 そんな”治癒”も、彼女に使うのなら滑らかに発動出来ていた。私も少しばかり、想いが変わったようだ。


 昨夜の決意と覚悟はしっかりと私の力になっている。


 自分の事は、彼女を想っていれば解決されると分かった。私の全ては彼女で出来ていると、誇張抜きで言える。


 問題は、彼女の魔法だろう。自身を”強化”して戦う。これは彼女にしてみれば最高の魔法なのかもしれない。でもその分、近くでマリスタザリアと戦わなければいけない。


 まだ作戦会議はしていないが、私と彼女の役割はしっかりと確認しておかないといけないと感じた。

 彼女の自己犠牲的な想いを、早急に変えなければ……。しかし、私に出来るだろうか。


 私が巻き込んでしまったのに、私から、提案出来る、だろうか……。


 

 彼女の想いを大切にしつつ、私の想いも遂げる。欲張りだけど、これしかない。


 向かう先は同じで、想いも同じ。だけど、過程が、結果が、微妙に違う。そのズレは致命的な物になりそうで……怖い。


 私は……貴女さまさえ無事ならば、良い。貴女さまが笑顔で帰る事が……出来るのなら、それで……。


 本当はずっと一緒に居たい。一秒たりとも離れたくない。そして……共に、この先も……。


 先の事は分からないけど、一つだけ確実な事がある。

 私は、彼女を失いたくないという事。


 明日から暫く、集落から離れる。いつまで掛かるかは分からないが、その間彼女と二人で生活する。

 それが掛替えの無い、笑顔で語れる思い出になるように、私は彼女だけを見続けよう。


 英雄とは、成し遂げる事で生まれます。ですから、貴女さま。どうかそれだけを意識せず、日々を楽しんでください。


 彼女の笑顔を明日も見る為に、私は彼女の温もりを……自分の物とするように、抱き締める。


 今日は同じベッドで寝る予定だから……抱き締めて、寝たい。出来る? 私に出来るだろうか……。手を繋ぐのが精一杯な気が、する。



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