記入日 A,C, 27/02/25
関節が熱を持っていた。冷やす程度の処置で問題ないだろうけど、しっかりと処置しておく。傷は、爪の痕すら赦さない。完璧に治しきる。戦いの痕など、彼女の体に絶対残さない。
彼女が感じていた痛みだけど、分かった。魔法が無理矢理だったようで、魔力の流れ道が疲労していた。ただの疲労ではなく、下手すれば切れていたかもしれない程の、消耗だ。彼女の魔力制御はすでに、高い水準にあるといえる。
それと、詠唱なしでの魔法は、人の身では負担が大きすぎるようだ。その事もあって、彼女の体は異常を訴えていた。今後、詠唱なしで発動させるという状況にならぬよう、細心の注意をする。
彼女と手を握った時、手の皮が少し厚いと思ったのは、剣を何度も振ったからなのだと知った。
彼女は毎日のように、剣を振って修練を積んできたのだろう。
あの手が柔らかくなれるように、私は彼女の負担を減らす。
彼女の診察状況も、日記に記しておく事にした。彼女に異変があればすぐに分かるが、念の為。
彼女と出逢えた事の喜びや、その時の衝撃等、書きたい事が沢山あった一日だった。
でも私は、間違えてしまった。
浮かれてしまっていた。私は、彼女を、英雄への道に乗せてしまった。彼女はきっとその道を、走り続ける。
絶対に、止まらない。
私がそう在って欲しいと、望んだから。
私が乗せてしまったのだから、撤回は出来ない。
彼女は私の機微に敏感だ。
私が今更撤回したところで、彼女が”お役目”に必要な事に変わりは無いのだ。そうなった場合彼女は私の気持ちを読み切り、一人で無理をする可能性がある。
それは、今日の出来事で良く分かった。
だから私も、覚悟を見せる必要がある。自分も戦える。だから、守るのではなく、守らせて欲しいと。
彼女が剣ならば、私が盾となる。
共に、戦わせて欲しい。
私が巻き込んでしまった彼女の為に、私はこの身を捧げる。
彼女の旅が、少しでも楽しい物であれるように……私は私の全てを、懸けよう。
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