歯車⑥
『知られたらもう、なるようにしか……。もう隠さなくて良いって、考えよう! 堂々とアリスさんの料理を食べられるって考えよう。そうすれば――うん、大丈夫。だいじょうぶ』
リッカさまが現状を受け入れるまで、時間にして五分程でしたが、その五分の間に噂はそれなりに固まってしまったようです。曰く、赤の巫女様は美味しい料理を食べると凄く喜ぶ、と。
リッカさまは類稀なる感覚の鋭さを持っています。それは気配といった、目に見えない物に限りません。聴覚、触覚、視覚、嗅覚、そして味覚も鋭いのです。
ですから、美味しい物はより美味しく感じるでしょう。でもリッカさまが人前で無邪気に飾る事無く喜ぶのは、私の料理だけです。他の料理に舌鼓を打っても、今まで噂になっていなかったのはそのためです。
(リッカさま自身がちゃんと、そう言っていたのを聞いているはずですが……変な切り取り方をされて――)
「っ!」
「……」
《アルレスィア様、レティシア様、マリスタザリアです》
アンネさんからの連絡は端的な物でした。その短さと、声の調子からして……一分一秒を争う状況なのだと、気持ちを切り替えます。
『来たっぽい』
私達がアンネさんから連絡を受けている間にリッカさまは、昼食の後片付けをし、所持品の確認を終えてくれました。すぐにでも動ける状態ですから……参りましょう。
「リッカさま。三十キロ先です。数は六。小型四、大型二。うち一体の魔法を確認。”疾風”による強襲です。馬車の一つが大破。怪我人三。死者はまだですけれど、急ぎましょう」
「船はお願いして南門に移動させておきましタ。私が”風”を送りまス」
「わかった。準備はできてるよ」
相手の質に関係なく、マリスタザリア六体は多いです。そんな数がいきなり、自然発生するでしょうか。
(いえ……考えるのは後ですね)
船の中で考える事は可能です。私は集中し、魔力を練る事にに注力しました。
南門にはすでに、ライゼさんが来ていました。アンネさんがライゼさんにも連絡を入れていたようですね。
「よぉ、きたか」
「ライゼさん、情報は」
「貰っとる。いくぞ」
数が数ですし、魔法持ちが出た以上全力でもって対応すべきでしょう。現在隊商は、全滅の危機に曝されているのですから。
ライゼさんが”疾風”でもって船に乗り込みました。舷梯を降ろす時間も惜しいのです。
それにしても、ライゼさんが魔法を使う所を初めてみましたが、私達とは違った部分で達人級です。
(剣術だけでなく、お師匠さんは魔法も上手のようですね。凄いどうこうというより、上手いです)
魔力を練り、全身に通し、詠唱して発動する。リッカさま含め私達は、この動きに淀みがありません。どんな状態からでも最大級の魔法を最速で発動出来ます。
しかしライゼさんの魔法は、速さもさることながら――静かなのです。詠唱も殆ど聞こえず、いつ魔法を発動したのかと疑問が起こった頃には、”疾風”で消えていました。
詠唱とは、対人において弱点です。何をやるか自ら宣言するのですから。ですがライゼさんは、それをさせません。魔力を練り、詠唱するまでが簡略されており、詠唱が静かに終わります。これは、対人を意識した詠唱術でしょう。経験と長い時間研鑽を積んだ事により生み出された、剣士の魔法技術です。
「刀はいいんですカ」
船に乗り込みながらシーアさんは、軽口でもって場を和ませようとしていました。事態が緊迫している時だからこそ、平常心で居るべきですね。
「あぁ、刀優先なんて言ってたら剣士娘に投げられちまう」
「えぇ、”強化”魔法使って投げます。私に強さを」
「……」
シーアさんの意図を酌み、リッカさまも軽口に乗りましたが――”強化”を発動したからでしょう。冗談と受け取られずに、ライゼさんが硬直しました。しかし何故、リッカさまは”疾風”ではなく”強化”を選んだのでしょう。
「私も魔法を撃つでしょうね」
”強化”でも飛び乗れますし、問題ないですね。私も”疾風”で飛び乗――。
「アリスさん」
「はい、どうし――!?」
(え、こ……これは――)
私の膝裏をリッカさまの腕が押し上げ、もう片方の腕が背を支えました。そのまま持ち上げられ――こ、これは、お姫様、抱っこ……?
「ありがとうございます。リッカさま」
「うん。じゃあ、いこっか」
『三十キロ先だし。急がないと』
私の頭が混乱している間に、リッカさまは私を抱えて船に乗っていました。飛び乗ってもなお、飛び乗ったとは思えないほど揺れがなかったので――まるで、夢の中に居るような浮遊感が残っています。
私は混乱の極みに居ましたが、自然とお礼は口から出ていたので、他人事のようにほっとしています。自身の心臓と戦っていて、条件反射のようなお礼しか出来なかったのは不徳の致す所ではあります。ばくばくと爆音を奏でながら、脳へと血が上っていっているのです。ぼーっとして、リッカさましか見ることが出来ません。思考が纏まりません。
(私もしたことはありますがそれはリッカさまが眠っている時ですしリッカさまは知らないわけですがこれは完全に私が起きていますしリッカさま自身の考えでしてくれたものですがしかしこれはリッカさまにとっては必要なことだったためか無自覚な触れ合いでしかなくて余りにも自然すぎる挙動で持ち上げられてでもそれが更に王子様っぽくて――)
「お師匠さン。今お姫様だっ」
「さぁ、魔女娘頼んだぞ」
私の混乱は更に続き、出発により起きた揺れすら気付きませんでした。だから――体を支えきれず、転げそうになった私を……リッカさまが支えてくれたのでしょう。先程のお姫様抱っこから数秒後の再びの触れ合い。遂に、私の視界は一瞬……真っ白に、なってしまいました。
ほんの少し場を和ませる程度のはずが、アルレスィアだけは完全に蕩けてしまっていた頃――こちらは、一瞬の気の緩みが命取りとなる、本物の死闘となっていた。
「くっ! ウィンツェッツ! 無茶すんな!」
「一体でも減らしとかねぇと、ジリ貧だろ」
ディルクが”盾”魔法を展開して凌いでいる。
使っているのはただの”盾”だが、硬度だけで見ればアルレスィアよりあるという評価に偽りはない。商業ギルドの者達全員を覆いながらも、クマの攻撃を良く凌いでいる。
幸運だったのは、この場に居るマリスタザリア全員が、嗜虐型という事だろう。もし一体でも殺意型だったなら、体制を立て直す事が出来なかったかもしれない。
(リツカ様達の警告がなけりゃ、危なかったな……ッ)
大破したのは三番目の荷馬車だ。横合いから”疾風”で突進してきたインパスに誰も反応出来なかった。ただし、荷馬車が壊れた瞬間、冒険者達の行動は早かった。各荷馬車を護衛していた冒険者達は真っ先に商人達を護るために”盾”を張ったのだ。
それが出来たのも、リツカ達から魔法を使うマリスタザリアの事を聞いていたからだし、荷馬車が壊されるかもしれないとも警告されていたからだと、ディルクは考察する。
冒険者の動きは迅速だったが、商人達はその限りではなかった。初期の混乱で怪我人が出てしまったが――怪我人だけで済んだのは間違いなく、アルレスィア達から警告されていて、覚悟が出来ていたからだ。
そのインパスが最初に荷馬車を狙ったのは、嗜虐型だったからにすぎない。殺意型だったなら真っ先に人を狙っただろう。だがそのお陰でディルク達は、商人を護りながら壁を背にする事が出来た。
耐えるだけの”盾”だが、逃げるよりもずっと状況に合っている。これは時間稼ぎ。王都には、マリスタザリアを物ともしない強者が居るのだから。
(隊長達は問題ねぇ)
ウィンツェッツが”風”を纏って小型の一体を相手取る。袖と裾、靴に”風”を纏ったウィンツェッツは、人を超えた速度で移動し、敵を吹き飛ばし、刻む事が出来る。
(ドルラーム、か)
北の時はアルレスィアとレティシアの連携で封殺した相手だ。だがこの敵は本来難敵。速度はインパス程ではないが、硬さは随一だ。その防御力に任せた突進が厄介極まる。
(岩みてぇに硬ぇ――)
「が、問題ねぇ!」
ウィンツェッツが咆哮し、剣を抜き放つ。
「鋭き剣となれ風よ!」
鋭く斬れる風が、剣に纏わりつき、その剣に”精錬”よりも強い切れ味を与えている。”風”と”纏”を得意としたウィンツェッツだからこそ行える魔法。剣士であるライゼルトが、手放しに褒めていた二種の組み合わせだ。
過去形の理由は単純だ。本来最も剣との相性が良いはずの二種を持っていながら、リツカの剣の方が鋭いという状況は、ライゼルトにとっては眉を顰めたくなる物だった。本当はもっと出来るのに、と。それは失望というよりも、失意なのだろう。
「っォラァ!!」
リツカに見せた突進で向かっていく。リツカが言ったようにカウンターの餌食になりえるモノだが――相手は防御を上げるために硬い岩に変質させている。
つまり――。
「グルフッ」
避けず、受け止め、弾いた後に殺す。ドルラームは基本戦術の一つを選択する。
ウィンツェッツがそこまで考えたのかは分からないが、突進からの斬りつけは成功した。
「グ……ッ?」
今か今かと剣を弾くのを待っていたドルラームは、いつの間にか自分の体を見上げている。気づいたときにはもう、ウィンツェッツは次の敵を見据えていた。
「流石っ……選任だ。無理しない範囲で頼む!」
ディルクが大型二体の攻撃を耐えながらウィンツェッツへの命令を更新する。
減らせるうちに減らすのが得策だろう。ジリ貧というウィンツェッツの言葉は正しい。じわじわと追い詰められていく焦燥感と恐怖は新たなマリスタザリアを生む。一体倒したことで、耐え切れるという思いがこの場に生まれた。
このまま後一体倒せれば、流れを掴めるだろう。そのまま大型を一体くらいは倒したいと思っているウィンツェッツだが――。
(チッ……小型が邪魔で近づけねぇ。それに)
インパス三体の群。変質の仕方はそれぞれ別だ。脚が変質した個体。腕が人の様になり、拳を作れる個体。バンビのような角が前を向き、草食とは思えない牙がむき出しになっている個体。
違う変質をしているが、元が同じ動物だったからだろうか、それとも元々群だったのか、悪意の本質がそういったものだったのか。この三体は――連携してくる。
うち一体は魔法を使った個体だ、油断は出来ない。
(早めに片をつけたいが、速ぇな。まぁ……赤いのと違って動きは見える)
ウィンツェッツが構え、一体ずつやっていこうとした瞬間、頭にある会話が再生された。
――悪意に憑依され、完全にマリスタザリア化するまでの時間は非常に短いです。
(なんでこんな時に――っ!)
嫌な予感に立ち止まるウィンツェッツ。しかしこれは、ライゼルトも言っていた、経験による感知。気に食わないが、剣士として上であると認めている相手の言葉が、ウィンツェッツの視野をほんの少し広くする。
ウィンツェッツが少し体を下げると同時に、ウィンツェッツの前を羽のようなものが通り過ぎていった。
「ッ! 新手!」
大きく後退しながらウィンツェッツがディルクに警告する。その際腕にチクリと痛みが走った。腕に、羽根を二発受けてしまっていた。
「ウィンツェッツ! 一旦下がれ!」
治療にとウィンツェッツを呼び戻すディルク。しかし――。
「悪ぃな。隊長さんよ。そっちにはいけねぇ」
ウィンツェッツの周りを三体のインパスの群が囲み、新手の敵が頭上を飛び回っている。それは、今から獲物を嬲ろうと舌なめずりをしているようだった。
「俺のことは気にすんな。こっちはなんとかする。前だけ見とれ」
方言を隠す余裕すらなく、ウィンツェッツは敵だけに注視する。
「巫女共もガキもそうだが、アイツがどうせ来る」
(つっても、あの阿呆を待つつもりはねぇ、がな)
と、ウィンツェッツは孤軍奮闘を開始した。
混乱から復帰した頃には、見た事のない景色となっていました。南は南でも、”神林”方面ではなかったようです。結構王都から離れたのでしょうか。
(と、アンネさんから”伝言”ですか)
「続報です。ドルラームをウィンツェッツさんが撃破。その後マリスタザリアが増えました。チュイフです。ウィンツェッツさんが腕を負傷したようです。羽根が刺さったと」
「これで、熊二体、インパス三体、チュイフ一体か」
ライゼさんの瞳に、怒りにも似た色が見えました。気力と魔力が充実しているようです。喧嘩中とはいえ、兄弟子さんが心配なのでしょう。
「ちゆいふってどんなのだろう」
『もう言えないのは諦めよう。この三人にはバレちゃってるもん』
「剣士娘、何涙目に」
「ライゼさん」
「すまん」
涙目になんてなっていません。これは、そう。風が目に沁みただけなのです。リッカさまの目は大きいので、風を良く受けてしまうのです。それ以上突っ込んだら、リッカさまから教えて貰った小指への踏みつけを実践する事になりますよ。
「チュイフは鳥です、リッカさま。肉食で獰猛。最高速度はこの船の速度を軽々と超え、その速度で飛びながらも、地上の小さい獲物を正確に狙い獲ります。空の狩人と呼ばれ、村によっては狩りのお供に飼育していると聞いたことがあります。最大の特徴は身の危険を感じると羽根を飛ばしてくるという事です」
恐らく、この特徴はリッカさまの世界の鳥にはないはずです。魔法という、弓矢よりもずっと危険な代物を持つ人間に対し、チュイフは独自の進化を遂げたのでしょう。この羽根飛ばしは威力があり、失明した者も居るそうです。マリスタザリア化に際し、この羽根飛ばしが強力になっているでしょう。
『動物の捨て身の攻撃は本当に危険。注意しないと』
「鳥、かぁ。私には対応できそうにないなぁ」
地上から十メートル程度ならば、リッカさまでも対抗出来ます。ですがそんな低空を飛ぶ事はないでしょう。相手は遠距離から攻撃出来る術があるのですから。
「俺はいける。まかせとけ。一撃で決める」
(私が対応しても良いんですけどね。仇討ちでしょうか。それくらい愛してるなら、リツカお姉さんに任せずに向き合えば良いというのは――黙っておきますか。巫女さんがお師匠さんじっと睨んでますし)
ライゼさんの”雷”なら、鳥も撃ち落せるでしょう。他にも、ライゼさん流の”雷”魔法がありそうですし。
(というより――そんな、殺気を剥き出しにするくらい兄弟子さんが大切なら、もっとちゃんと向き合って下さい。リッカさまに丸投げとかするから、余計に拗れるんです。巻き込まれたリッカさまの心労がどれ程のものか、ライゼさんなら分かってるはずですよね)
(とか、思ってんだろうな……。つっても、仕方ねぇだろ……アイツは俺の言う事なんざ聞かんし、話せば話すだけ拗れんだからよ……)
「問題はインパスと熊さんでス」
ライゼさんのやる気がないのに、考えても仕方ないですね。建設的な話をしましょう。
『いまさらだけど、この世界に運転免許とかあるのかな。医師免許はあるらしいけど』
シーアさんの運転が上手いからでしょうか。リッカさまが気にしているようです。医師免許や薬剤師の資格を勉強していた時、アルツィアさまから船の免許もどうかと言われた事があります。ですから、シーアさんは免許を持っているはずです。
私はというと、実技試験が出来ないからと取得を諦めています。というより、”風”の適正が低いので船は無理と分かったのです。
「インパスのうち一体は魔法を確認しています。”疾風”です。残りの二体も使えると仮定しておいたほうがいいでしょう」
「そうだね。”疾風”の対応は任せて。魔力色と風の揺らぎでどこにくるか分かるから」
「……エ?」
『風の道を作って高速移動する”疾風”。道はほんのりと魔力が漂って、風が乱れるから、そこに剣を合わせればカウンターが入るはず』
リッカさまはさらりと言いましたが、そんな事出来るのはリッカさまだけです、よ? 道を見る事は、私とシーアさんにも出ます。しかし、風の乱れと攻撃を合わせるのは私とシーアさんどころかライゼさんでも無理です。
それはつまり、”風の道”で隠れた相手の思考を読みきり、相手の体勢を感知し、そこに合わせるという事なのです。相手の視線すら確認出来ない状況でそれが出来る者は、この世界の何処にも居ません。シーアさんが目を点にするのも、無理はないでしょう。
”疾風”とは絶対の先制権です。回避、退避、攻撃。どれであっても基点となりえる、戦士の必須魔法といえるでしょう。
(しかし、リッカさまにとって”疾風”とは――)
「まぁ……そんなこと出来るのはあんさんだけだからな。任せる。そうなると問題はクマか」
「はい。剣が通るか微妙です。ライゼさんの”雷”を纏った剣ならいけるのでしょうか」
クマという事で、リッカさまはすでに……自身の攻撃が通らない可能性を視野に入れています。驕らず、楽観しないリッカさまらしいと思う反面、辛いです。リッカさまの心を読んでしまうまでもなく……リッカさまの瞳の揺れが、物語ってしまっています。
(敵を倒せないとはつまり……”リッカさまの想い”を遂げられない、という事なのですから……)
「あんさんの剣が欠片も通らなかったとなると、俺のも怪しいな。両断はできんだろう。二回か三回いる。一体は俺に任せろ。そん代わりもう一体はなんとかしてくれ。周囲の警戒も怠れんからな」
良い剣であっても、リッカさまの”精錬”は折れない事に念頭を置いていますから、切れ味は然程変わっていません。その点ライゼさんは”纏”と、上級になっているであろう”精錬”があります。”雷”と合わせて鋭い斬撃となるでしょう。
ただし……一体は大丈夫という事は……一体を倒した段階でライゼさんが戦える状態にあるかどうかは分からない、という事です。もしクマが新型のマリスタザリアなら、それだけの覚悟が必要となるでしょう。
「初手でチュイフとインパスのいくつかをやりたい。剣士娘、巫女っ娘、合わせろ。魔女娘は初手は船の操作だ。安全な場所に停めてから来い」
クマと一対一となるために、相手がこちらに気付く前に数を減らしたいという事ですね。任せてください。
『状況次第だけど、アリスさんの”光の矢”で射抜いたインパスをやる』
「チュイフは完全に俺にまかせとけ。インパスを頼む」
「大丈夫です。アリスさん」
「はい。リッカさま」
名前を呼んでいただければ、能力関係なくリッカさまの考えている事は分かります。船を急停止し、リッカさまを射出。それに合わせて私は”光”をインパスに当てる、ですね。
「シーアさん、北の時と同じ感じで私の合図で停めてほしい」
「えェ、それは構いませんガ。どんな作戦なんでス」
「私が一番近いインパス一体か二体に”光の矢”を撃ちこんで」
「私が突撃して首を刎ねる」
「エ、えェ。わかりましタ」
戦場において、一言二言は長いです。リッカさまと私ならば、名前を呼ぶだけで伝わります。名前さえ呼べば、視線を合わせる必要もありません。視線を合わせるだけも伝わりますが、首を動かすという一動作も、近接戦をするリッカさまには致命的な動作となりえますから。
「お師匠さんも名前呼び合うだけで通じ合えたりするんですカ」
「あぁ、俺は剣士娘同様そこそこ読めるからな。だが作戦内容とか伝わらんぞ……。出来て『そっち頼む』くらいだ」
「なるほド。つまりお二人は、夫婦」
「魔女娘、そろそろつきそうだ。俺も剣士娘と一緒に飛ぶぞ」
心臓が飛び出しそうな言葉が聞こえた気がしましたが、作戦に集中します。リッカさまより先に敵へ当てるためには、想いを高めなければいけません。




