3 お父ちゃんの所に行きたい!
「ひなさん、これは一体どういう事ですか? 説明しんさい」
「えとねー。これねー、説明できません」
今、俺がいるのは、ひなの部屋。夕飯が出来たんで呼びに来てみたら、ひなの部屋は、大事になっていた。
ひなの部屋は、四畳半という広さだ。
その部屋は、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような有様だった。
ぬいぐるみ、お気に入りの本。学校の制服やパジャマ等の衣類。ありとあらゆるひなの私物が散らかしてる。
そして、部屋の隅には、お気に入りのリュックとひなが貯めたお小遣いを入れてるブタさん貯金箱が転がってる。
――親父の所へ、行こうとしてるんじゃあないよな。こないだあんな話したせいか。
「ひな、なんで、こんなに、さばいとん(ちらかしてるんだ)?」
「部屋の片付けしようたんよね」
「ほうなん。でも、片付けというよりは、大掃除、いや家出するみたいでよ」
「家出違うよ!お父ちゃんとこに、行くんよ!」
ひなは、言ってからしまったという小声で、言ってる。
やっぱりな。とりあえず、片付けさせよう。話は、それからだな。
とはいえ、ひな一人じゃ時間がかかりそうなので一緒に片付けながら、話しするか。
「ひな、お父ちゃんとこ行くにも、ひなのお小遣いじゃ、東京には行かれんよ」
「ほうなん?千円もあるんよ?」
そう言って、ひなは貯金箱をふってみせる。ジャラジャラと音がする。小学生になったばかりのひなには、千円は大金かも知れないが、広島から東京に行くまでには、到底足りない。いや、母さんが管理してるひなの口座には、今まで貰ったお年玉を貯めてある筈だろうから、それを使えば広島東京間の運賃にはなるだろうけど、多分駄目だろうな。
「兄ちゃんのバイト代とか、お年玉貯めたのとかあるけぇ、それならなんとかなりそうじゃけど」
別に自慢じゃないけど、高校生にしては、結構な額を貯め込んでると思う。
ちなみに、うちの学校は、バイトは許可制だ。本来、家庭の経済状況を理由にしないと、許可が下りないけど、俺は、うちの会社を手伝うという理由で、無理やり許可をもぎ取ってる。
まぁそれは置いといて、今はひなを東京へ連れて行く方法だよな。
もうすぐ連休だから、そこを狙うしかないか。あとは、母さんをどう説得したもんかな。
―――
その日の夜。仕事から帰った母さんに昼間の話をしてみた。
「そんな事があったの」
「ほうなんよ。ねぇ、母さん、ひなを東京に連れてって行ったら、いけん?」
「駄目よ!」
やっぱりな。離婚した夫のもとに行って欲しくないんだろうな。
「お父さん、今度帰ってくるのよ。東京に行ったら駄目よ。お父さん嘆くじゃない」
「マジで?」
「マジよ。本気と書いてマジ」
ややこしいな。人騒がせな。親父が帰ってくるなら問題無いな。
これで、一安心だな。と思ったけど、親父帰ってきたで大変なんだろうな。