ウチの番は 吸血鬼です。
ドーモ、皆さん。馬場白江です。一人称はウチですが、関西方面の人間ではありません。生まれも育ちも北海道の道産子です。東京の人たちよりは寒さに強いですが、新潟や紋別の人たちには負けます。
しかし、寒さに強い新潟の人も紋別の人も、この場所に来たら同じことを言うでしょう。いや、ロシアの人たちはもしかしたら耐えるかもしれないけど。少なくともウチ・・・日本人にこの環境は無理だ。年中吹雪いて太陽が永久ストライキかましてる場所で暮らせるか!と。
こんな極寒の地にウチは何故落ちてしまったのだろう。家族とスキー旅行をしていたら、後ろから衝突されてジャンプ台から勢いよく飛んだらこの景色。どこのフューチャー映画だよ!光よりも速く動けば過去・未来に行けるっていうのは聞いたことあるけど、異世界に行くとか初耳だわ!世界の壁でも越えやがりましたか!?
・・・失礼、荒ぶりました。こっちに落ちたら吹雪で何も視えない状態で、吹雪を避けられる場所を探して彷徨いましたね。運が良かったのかこの城にたどり着いて、お宿を求めました。入れて貰えたときはいいご主人だと思ったんですけどね。襲われかけたときに犯罪者という評価になりましたね。誤解でしたけど。返り討ちにして何事もなかったですけど。
なんですか、その顔。誰だ、女ゴリラとか言った奴。前でろ、前。乙女になんてこと言いやがりますか。・・・・・・次はないですからね?
どうやって吸血鬼を撃退したか?握ったこぶしが光って、そのまま殴っただけです。ウチ、光属性の魔力を持ってるみたいで。ええ、そのお陰ですね。参考にならず、申し訳ないです。
どうやらここのご主人は、当時かなりの飢餓状態だったみたいでして。契約していた街から、血をくれる乙女がずっと来なかったそうです。真相はここに来る途中で他のモンスターに襲われてしまっていた、だそうです。こちらの物が彼女たちの遺品です。はい。吸血鬼であるここのご主人では無理な傷でしょう?
・・・謝罪は大丈夫です。ご主人も気にしてないですし。誤解が解けて良かったです。ウチがここにいなくて、誤解も解けていなかったら、討伐隊の皆さんは死んでいたかと。ええ、全滅です。今はウチがご主人に血を上げているから大丈夫だと思いますけど。飢餓状態の吸血鬼なんて、理性のない獣と一緒です。皆さん、ミイラになるまで血を吸われることになっていたと思いますよ?
・・・・・・だからなんですか、その顔。ゴリラを超えたとか言ったの誰ですか。次はないって言いましたよね?逃がしませんよ?大丈夫、大丈夫。腹パン一発で済ませますから。ね?
それで、皆さんはどうするんですか?そろそろ夜になりますけど、お城に泊まります?お食事は?・・・・・・お泊まりだけですね、分かりました。それではお部屋にご案内します。迷いやすいので、ちゃんと着いてきてくださいね?
・・・何ですか?冒険者組合の人?ご主人と番契約したのかって・・・、しましたよ。じゃないと、ウチ一人であの人のお腹を満たすとか無理ですから。・・・人を死なせないために街の乙女を一度に五人、ここに派遣して貰っていたと聞いてます。でも、異世界の人間と番契約したら、その人のわずかな血で満たされるらしいですよ?実際そうみたいですし。
え?何で襲われかけたのに、番契約をしたのかって?
「そんなの、相手が困ってたからに決まってるじゃないですか。襲うときでさえ、謝罪してくるような人ですよ?殴っちゃいましたけど、そうしなきゃ命がかかっていたんですから仕方ないですよ」
異世界人:馬場 白江
ギフト:光魔法補正(極大)
職業:治癒師・メイド
称号:吸血王の寵愛を受けし者
(シロ、人間の男臭い・・・)
(あんたはウチの恋人か)
(・・・・・・お前が望むなら、そうなるのも吝かではない)
(ご主人の口がもう少し素直になったら考えます)
(・・・善処する)