ボクの番は ドラゴン(♀)です。
ハローハロー。ボクの名前は司。地球と呼ばれる場所で日本人をしていた一般人です。ですが、ボクは異世界に召喚されました。どこかのお城、大勢の魔術師。ファンタジー大好き人間のボクは心が躍りました。ここまできたら王道の選ばれし~・・・とかかな!?って思いました。
しかし、現実はただ非情でした。勇者とかそんなものではなく、ボクは生け贄として召喚されただけだったのです。周りの人たちに縄でグルグル巻きにされ、クッション性も何もない馬車に放り込まれ、監視役の騎士様には延々と愚痴を吐かれ(同情はしてくれたけど逃がしてくれませんでした。もっと周りの人間に振り回されて、はげ散らかしてしまえ)、目的地に着いたらボクだけ置いて帰ってしまいました。
縄を解かれなかったボクは、首だけを動かして周りの様子を観察しました。しかし、周りは岩だけです。いえ、正確にはなんかの骨とかが散らばっていたんですが、ボクの身の丈よりも大きくて骨とは認識出来なかったんです。
ボクはこの後どうなってしまうのか。当時は本当に嫌な想像ばかりが駆け巡りました。そして、ふっ・・・と辺りが暗くなったんです。続いて聞こえてきたのは、翼をはためかせる音でした。強風をまき散らしながらボクの目の前に現れたのは、ド ラ ゴ ン さんでした。あ、死んだ・・・って普通の人は思うんでしょうね。ボクの場合は
王道の最強生物キター!!
でした。地球では伝説の生き物でしかないドラゴンに出会えて、大興奮しちゃったんですよね。今なら死んでもいいとか思うほどに。いや、今では絶対死ねませんけど。
まあ、その後はボクの様子がおかしいことに気づいたドラゴンさんが、念話で話しかけてくれて、ボクはドラゴンさんの生け贄(推測)から生け贄(確定)になったわけですが。異世界出身なら話しが違うということで、九死に一生を受けました。・・・本当なら、王族の誰かを生け贄にし、その魂を卵に宿して国の守護竜にするということだったらしいです。このドラゴンさんもそうして産まれて、二百年ほど国を護っていたそうで。
契約違反発覚後、国をボコボコにするためにちょっと協力しろやと言われた時は意味が分からなかったですね!ドラゴンさんお一人で十分じゃないかなって思ったんですが、国をボコボコにするには契約の上書きが必要なんだとか。国との契約を個人との契約で上書きできるの?って疑問に思いましたが、異世界人であるならば可能らしいです。この世界の生き物ではないから可能な裏技ってことですね。それに、異世界人はこの世界の生き物と契約すれば、貴重な能力に目覚めると聞いて契約を即決しましたね!貴重な能力、これぞファンタジーの醍醐味!あ、契約で得られた能力のことは
『ギフト』と呼ばれるそうです。契約することで得られる『贈り物』とは、言い得て妙ですね。
契約した後はお察しの通りです。ドラゴンさんとの契約を破り、ボクを身代わりにした国はボコボコにしました。もっとも、滅ぼしてはいませんし、死人も出していません。え?何故って、
「その方が屈辱でしょう?国の守りをポッと出のボクなんかに奪われているんですよ?重傷人はいても、死者は0という結果で。そのことを他国に広めてしまえば、国の信頼は地に落ちますね」
ドラゴンさんと国の契約の内容は、知れば知るほどクソな内容だった。ドラゴンさんの生命エネルギーを国土に流し、いろいろなことに利用していた。国を覆う結界も、他国よりも豊作な畑も、全てはドラゴンさんの命が使われていたから。凶作も飢饉も初代のドラゴンとの契約以来、竜の属性問わず一度も起こっていないのを疑問にすら思わないなんて・・・。そもそも、あの国の守護竜の寿命が300年で、それ以外の地域のドラゴンは600年くらい生きるんだよ?二倍の差があるのに、何で誰も疑問に思わないの?そんな国はあと100年くらい貧困にあえげばいいんじゃないかな?歴代のドラゴンたちのことを思うと、これでも温い方だと思うけど。あ、お嫁さんが呼んでいるのでこれで失礼しますね。それと、
「次にお嫁さんを攫おうとしたら、滅ぼしますからね?」
異世界人:柴田 司
ギフト:魔法適正(全属性)
職業:魔導師
称号:竜の伴侶
(お嫁さ~ん!)
(ツカサ!娘が私のことを『ママ』と呼んだぞ!)
(え!?見たい、聞きたい!リリちゃん、お嫁さんのことなんて言ったの?パパに教えて?)
(・・・まぁま)
(ウチの子マジ天使ぃい!!)