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030 閑話3

 大陸南部の中央寄り位置するエリア、俗に大陸中央からは開発地域と称される地域だ。

 未開発地域との差は文明の差であり、開発地域の中でも最も大きく賑わっている都市はソードビーチと呼ばれる。

 特に都市から東部に位置する遺跡群からの発掘品によって栄えている。

 発掘品には、ミスリルやリンクアーマーの製造設備、機材も含まれており、大陸中央に次ぐ兵器の生産量を誇る。


 最も、大陸中央からは良い顔をされてはおらず、表向きには流通が活発に行われているが、裏では激しい争いが繰り広げられている。

 その争いについては今は割愛する。


 さて、そんなソードビーチであるが、煉瓦造りの家々が立ち並び、街道はアスファルトで舗装され、ガス灯が設置されている。

 車は役所と都市軍、それと中流以上の市民が所有するにとどまっており、依然として馬車も移動手段の一つである。


 大陸中央ではコンクリートの高層ビルディングが立ちならなんでいる様から見れば、文明レベルは劣っていると言われているが、さらに南部の未開発地域から大河を渡ってきた者たちから見れば、ため息すら出ないほどの発展ぶりである。


 都市の中央区に官邸が存在し、警備団と諸々の公共事業をとりまとめて入っている官邸別館も存在する。

 中央の入り口にはライフルを持った警備員が常駐し、窓には格子が取り付けられている。立てこもっての戦闘を想定し、別館の壁は重厚で堅牢な作りとなっている。

 その建物からやや離れてコーヒーショップがあった。

 客の一人が、コーヒーを二つ受け取ってから、官邸別館の前に足を進めた。

 官邸別館の前の道路には、ツナギを着込み、キャップをかぶった男が居て、その男の前にまで歩いていった。


「じゃじゃ馬はまだか? 」


 そう言って、コーヒーを買った男は事務所の方に目をやる。ほとんど人の出入りはない。


「まだっすよ。時間がかかっているっす。長引いているのはいい証拠っすか? 」


 ツナギを来た男、ペトルーキオは腕を組んで、背中を煉瓦の壁に預け、どこか眠そうに言う。


「いや全く」

「だったら、クリストファーがいったらどうだったんですか? 交渉とかうまいじゃないすか」

「誰が行っても、結果は変わらんさ。それに、俺は、軍人や役人は嫌いなんだ。交渉をする気はない」

「だったら、いったらよかったじゃないす……あー、これ、なんすか? 」

「コーヒーだが? 」

「俺は、ベンディエクストラコーヒーノンファットミルクランバチップキャラメルフラペチーノっていったじゃないですか。これのどこがベンディエクストラコーヒーノンファットミルクランバチップキャラメルフラペチーノなんですか? 俺のベンディエクストラコーヒーノンファットミルクランバチップキャラメルフラペチーノどこッスか!? 」

「知るか。そんなもんソードビーチにあると思っているのか? 」

「確か支店があったッス。もう、ベンディエクストラコーヒーノンファットミルクランバチップキャラメルフラペチーノが好きだって言ったのに」


 呆れた様子のクリストファーである。リスクとリターンさえ釣り合いがとれれば、それだけで動くだけで、これといったこだわりというものが無い人間だと思っていたが、意外なところでこだわってくる。


「豆でもかじってろ」


 とガブリエルは吐き捨てた。




 ☆




 そこは事務局の会議室である。さほど広くはなく、折り畳みできる長テーブルとパイプいすが並んでいた。

 会議室といってもちょっとした打ち合わせをする程度の多目的スペースであろうか。

 長テーブルにはラップトップパソコンが置かれ、さらに紙製のソードビーチ周辺の地図が広げられ、さらに数冊のプラスチック製のファイルが開かれている。


 事務員と軍の小隊長という二人が並んで座っており、やや困った様子でテーブル越しに立っている若い女性を眺めている。

 立っている女性は、バンバンバンとテーブルの上をたたき出した。


「だーかーらー、探査が進んでいないなら、探査チームとして認めてくれてもいいでしょうが! 」


 とやや高めの声を荒げてさらに机をバンバンバンと叩く。

 女性は、小柄で金髪をショートカットにし、鼈甲のフレームのメガネをかけている。

 メガネ越しには青く力強い瞳が見えるが、その顔立ちはどこか幼げであるが、今は不満を表に現れていた。


「わかった。わかったから。一度座りたまえ」


 事務員らしき男が促すと、女性は不満げな顔のままパイプ椅子に深く座り込む。

 が、さらにまた机をバンバンバンと叩きながら、


「だーかーらー、こっちが勝手に動くつもりはないし、当然監視役をつけてもいいし、発掘は調査さえさせてもらえば、現物はいらないし! 」

「机をたたくのもやめたまえ」


 女性の声を遮って、事務員が抑止した。

 女性はさらに不満げな顔をしつつも、手をひっこめた。


「よーくわかったよ。あくまでも学術的な話だというのだろう。だが、遺跡に関しては機密情報も多い、部外者をおいそれといれるわけにはいかないのでね」

「契約書だっていくらでも書くよ。家業でいくらでも契約書は作ってきたら大した苦でもないし」

「契約したところで、それを守る確実性は? 」

「何よそれ。情報のやりとりなんて命に直結する場合もあるんだから、厳重よ! 当然でしょ! 」


 カタリーナ・ミノーラと呼ばれる女性は抗議するように手を挙げて机をたたこうとしたが、事務員が手の平をみせて抑える。

 行き場を失った手をフラフラとさせて、結局自分の膝の上へと戻した。


「改めて言おう、信用できない」

「だったら、なんで面会したのよ!? 」

「あまりにもしつこかったのもありますが、こちらの隊長が、やや興味を持たれたので」

「何でしょうか? 」


 隊長は、髪は短く丸めて口ひげを整え、中年といったところだ。

 その身たしなみから考えるに、隊長という地位にいるのも納得がいく。

 とはいえ、これまでの説明に対して厳つい顔を崩すこともなく、時々頷くよう首を振っていただけだ。


「周辺の遺跡であるが、マップやアクセスポイントに関する情報はもっているかね? 」


 その見た目にふさわしく低い声だった。

 厳つく迫力はあるが、どこか礼儀はわきまえている様子がある。


「ないです。だから、調査させてっていってるの。お話が通じていないのかな!? 判っていたら、調査の必要があるのかな!? どうなのかな!? 」


 隊長の睨み付けるような厳しい目線におじける様子もなくカタリーナが答えた。

 答えたというよりも、叫びに近いもので、挑発じみたものが混ざっているが。


「そうか。ならば今は用はない。何かしら解析困難な代物でも出れば呼ぶかもしれんが、引き取ってもらえ」


 と隊長は席を立って出ていこうとする。

 カタリーナは目を見開いて、両手でテーブルを叩いた。


「これだけ説明して、これだけ熱意があって引き取らせるとかなにさ! そっちだけじゃ探査なんてどうせうまくいってないんでしょ! いいから調査させろ! 」

「お引き取り願え」


 慈悲のない返事だった。

 その後、カタリーナ・ミノーラは警備員に文字通りに引きずられ、玄関の前にほっぽりだされた。

 説明のチャンスを作るだけであれほど苦労したというのに、なんともあっけない始末である。

 カタリーナは、これでもかと不機嫌そうに官邸別館を睨み付け、両手の甲を向けて中指を立てた。

 ザ・フィンガーと呼ばれる徴発のポーズだ。


「頭トンカチの豚野郎! 養豚場で糞にまみれてろ! ファーーーーック! 」


 と通りに響き渡る挑発だった。

 通行人が苦々しい表情でカタリーナを眺めている。

 その様子を見ていたクリストファーとペトルーキオが、呆れた様子で近づいていった。

 結局、今回の調査は、候補に挙がっていた大陸の南にある遺跡になった。

 最も、クリストファーだけは、さらに大陸南部にいるかもしれない異邦人の調査のために調査からはいったん抜け、代わりに信用のおける傭兵アンドルーを傭うことになる。

次話嘘予告


 ハイパーメディカル鍋将軍トモリンが、プロポーズをされる。

 相手は、実はペペロンチーノ貴公子だった一生だった。

 しかし、それを妨害する魔の手がトモリンに降りかかる。

 砂糖と塩のすり替えに始まり、挙げ句の果てにはトゥシューズにカミソリが仕込まれるのだった。

 トゥエルブの工作によって最終的には婚約破棄されるのだった。

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