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緑の中の  作者: 千砂
44/54

落着

 ティーナは持ってきたリュックをサイドテーブルに置くと、キーを解除し中からきっちりパッキングされたケースを一つ取り出した。それにはカプセルが複数収められており、端から一つづつ手に取ると慣れた手つきで開封し身につけ始めた。手袋、マスク、ゴーグルを装着したティーナはベッドに横たえられているメルヴィと向かい合った。


 ベッドに寝かされたメルヴィの怪我の具合を確認するために、そっと巻かれた布を取り去ると、大きな傷が現れた。


 「女の子の顔に何て事をするのかしら」


 瞬時に沸き起こった怒りで感情的になりそうになったがかろうじて抑え込んだ。そして一呼吸置いた後、処置に取り掛かろうと医療セットに手を伸ばした。


 「おい、お嬢。手伝いは必要か?」


 誰もいないと思っていたところに声を掛けられ、ティーナは危うく消毒液を取り落としそうになった。


 「い、イルマリさん! どうしてここに?」


 寝室の入口でイルマリが一人立っており、ティーナとメルヴィを交互に見ている。


 「どうしてって、さっきその子をベッドに運んだ時にも居たんだが気付いていなかったとか?」


 ニヤリとイルマリは笑っている。


 「う。はい、気付いていませんでした。あの、ありがとうございました。今は急ぎますのでまたあとで」


 断りを入れ治療を再開しようとしたそのとき再びイルマリが口を開いた。


 「おう、それよそれ。手伝いに来たんだよ。一人じゃ何かあった時に対応しづらいだろうと思ってな」


 その言葉にティーナの目がクルリと見開く。手伝いは正直欲しいところだが、大量の血や生々しい傷口をみて倒れられるくらいなら手伝い無しでもティーナの実力ならば対応できる。だからひとりで取り掛かろうとしていたのだ。


 「そ、それは、確かにそうですが、でも・・・、大丈夫ですか? 好意で手伝ってもらった人が倒れるケースが多いので正直急いでいる今は一人の方が良いのです」


 こう言う場合、遠回しに断ってだらだら長引かせるわけにはいかない。一分一秒が惜しい。だから正直にイルマリに言うと彼はニヤリと笑みを作った。


 「俺を誰だと思っている。シェフだぞ。動物だって血抜きして捌くんだ、今更血や骨くらいでびびりゃしねーよ。それに、俺は器用さにかけてはこの屋敷一番だと自負している。お嬢から教えて貰った卵菓子なんて実際の糸と同じ位細く作れるのは知ってるよな」


 「あ・・・確かに。うん。じゃぁお願いします。あ、まずはコレをつけて下さい。お互いの為に」


 「よく分からんが分かった。こうか?」


 見よう見まねでティーナと同じ装備を装着したイルマリは次の指示を待った。


 「はい大丈夫。じゃあちら側に行って下さい、そして彼女が暴れないように押さえてて下さい。力加減は気をつけて下さいね」


 「おう。任せておけ」


 ティーナは力強い味方を得て治療にとりかかった。


 結果から言えば、イルマリの助けが無かったら大変な時間がかかっていただろう。処置を始めてすぐに意識が完全に戻ってしまったメルヴィが痛みで動き出したのだ。イルマリに押さえてもらい、いったん治療を止めカルナ国で改良された麻酔を用い、メルヴィが落ち着きを取り戻したのを確認し改めて処置を再開した。


 「メルヴィ、気分はどうですか?」


 ティーナは不安を感じさせないように穏やかな声でゆっくり話しかけつつ、メルヴィの顔を覗き込み表情を丁寧に観察する。するとメルヴィからは笑顔が返って来た。


 「はい、お陰様で、痛く無くなりました。ちょっと引っ張られたりの感覚はありますけど」


 受け答えもしっかりしているようだ。ティーナは目元を綻ばせ、ゆっくりと頷いてみせる。


 「そう。痛く無いのならば良かったです。メルヴィ、こちらの男性はねイルマリさんと言ってこのお屋敷のシェフでとぉっても美味しいお料理を作ってくれるのです」


 そして視線をイルマリに向けると、あとを頼むと目配せをしティーナは傷の処置を始めた。

 イルマリを紹介すると、メルヴィは何かを思い出したのか口元を緩めて話し始めた。


 「今日、お菓子をいただきました。ラウラが持って来て食べさせてくれたんです。試作品と言っていたんですが凄く美味しかったです」


 その時のことを思い出したのかメルヴィの声は弾んでいる。

 意図を察したイルマリは、ティーナのトーンを引き継ぎ穏やかに話しかけた。


 「ああ、サムリに押し付けたヤツを食ったんだな。そういう素直な反応は嬉しいね、そうかーそんなに美味かったのか。だがな、あれはあくまでも試作品だからな。そろそろ完成しそうだから出来たら食わしてやる。楽しみにしておけ」


 「本当ですか! それは嬉しいです。あんなに美味しいお菓子を食べたのは初めてだったんですけど、あれ以上に美味しいなんて想像つきません」


 大怪我をしているハズなのにメルヴィは目を煌めかせている。表情や口調から全く痛みを感じていない様子だ。

 イルマリがチラリとティーナを見ると、ゴーグルに何か映っているのか、時折、視線を空に彷徨わせているように見えるが、迷い無く手を動かしている。


 「だろ? 実際に食ってみないと比較はできないからな楽しみにしてろ。他にもな、このお嬢が作って俺がそれを発展させた菓子もあるんだ。そっちはまだ食べてないだろう? そっちも美味いからな」


 イルマリのお陰でメルヴィの意識がすっかりおしゃべりに向いていて、その間にティーナは順調に処置を続けている。

 傷口は比較的大きいけれど深くは無く、幸いにも骨折や命を脅かすようなこともなさそうで「ハケイモイジョウナシ」と呟いている。


 頭部をだばだば洗ったためベッドがすっかり濡れてしまったが、別の部屋を準備してくれたお陰でメルヴィを心地よいベッドで休ませる事が出来た。


 イルマリには出てもらい、代わりにラウラとクリスタに手伝ってもらいながらメルヴィを着替えさせた。頭に巻いた包帯が痛々しいが、しばらく安静にして傷口が塞がれば問題ないだろうとティーナが伝えると、メルヴィと、なぜかラウラとクリスタも涙を浮かべてお礼を言っている。三人に泣かれてティーナはタジタジになりながらも、くれぐれも安静にとメルヴィの涙を拭いてあげた。


 その後、ティーナは看病の方法をラウラとクリスタに説明すると、毎日様子を見に来るからと言い置き、部屋を後にした。







 「ラウラ、クリスタ、本当にありがとう」


 ティーナが出て行った後、起き上がろうとしたメルヴィを慌てて押さえた二人にメルヴィは気まずそうな顔でお礼を言ったが、むしろラウラとクリスタはとんでもないと首を振る。


 「ううん。こちらこそごめんなさい。あなたをこんな目に遭わせるつもりは無かったの。本当にごめん」


 「そんな、あなたたちのせいじゃないわ。私がもうちょっと上手にお嬢様に伝えられていたらこんなことにはならなかったのよ。だから気にしないで」


 酷い怪我をしても尚、ラウラとクリスタを気遣うメルヴィに二人は笑顔を見せた。


 「メルヴィ、あなたって本当に優しい人ね。ねぇもう止めよう。色々反省点はあるけどそれは怪我が治ってからでもいいはずよ」


 「そうよメルヴィ。あなたはまずは怪我を治す事だけを考えて。ティーナ様から看病の仕方も教えてもらったし、私とラウラで怪我が治るまで側に居るから安心して」


 ラウラとクリスタの二人はこの件はひとまず終了と打ち切った。


 「二人とも、本当にありがとう」


 「ほらほらもう寝て寝て。ティーナ様もおっしゃっていたでしょう? 安静が一番なの。それには寝ることよ。何も考えないで全部私達に任せて。あなたの勇気ある行動はちゃんと通じているわ」


 そう言ってシーツをメルヴィーの肩口まで引き上げて無理矢理目を閉じさせた。しばらくするとメルヴィから安らかな寝息が聞こえて来てラウラとクリスタはほっと胸を撫で下ろした。




 ***




 一方で、マリアンヌとイェオリ達は重い空気に包まれていた。


 「何から話そうかの」


 静まり返った部屋の中でイェオリが静かに口を開いた。

 発したその声からは何の感情も読み取れない。

 単に言葉を紡いだだけのようにも感じるが、長年、特権階級(プリヴィレジーオ)の筆頭を務めていた者の声には他者を従える力がある。誰もイェオリの前で声が出せない状態だ。


 イェオリの両脇に控えているターヴェッティとトゥオマスの兄弟はただ静かに見守っている。

 そんな兄弟へマリアンヌは甘えるように縋る目を向けるがイェオリの言葉で現実に引き戻された。


 「マリアンヌ、なぜこういう状況に置かれているのか理解できているか?」


 その問いかけにマリアンヌは小刻みに頷いた。


 「全てはこちらのメイドの勘違いですわ。このような乱暴な扱いをされる覚えはございません。勘違いをして私をこのように縛り付けたのです。まぁ多少は私にも勘違いをさせる要因はあったかもしれません。でも、それは、私の不出来なメイドが羽目を外し過ぎたので、懲らしめるために少々荒事のまねごとをしてしまい、つい手を出してしまいましたの。そこだけを見て一方的に私をこのような目に・・・。

 いいえ、今は謝罪が先でございますわね。色々ご迷惑をおかけして申し訳ございません」


 椅子に括り付けられたまましおらしくマリアンヌが頭を垂れてみせるが、そこに居る誰もがその答えに満足はしていなかった。


 「お前は、この期に及んでまだそのようなざれ事を言うのか。・・・分かって言っておるのか? ワシにはお前が嘘つきに見えているのだがな」


 「な、いくらイェオリ様でもおっしゃって良いことと、悪いことがございますわ。今のお言葉は私への侮辱ですわ」


 自身への非難は敏感に察し、相手が誰であろうと許せないとマリアンヌは憤っている。だがイェオリはそんな態度をみせるマリアンヌにも眉ひとつ動かさずに淡々と話をする。


 「果たしてそうかな? お前は忘れているのかも知れんが、ここはワシの管理する屋敷でな、隅々に至るまで把握しておる。特に、客人が滞在する間はそこかしこに人を配置し隙の無いように体勢を整えてあり、定期的に報告が来るようになっておる。お前の言動は筒抜けなのだよ」


 イェオリの説明にマリアンヌは顔色を悪くし、ひゅっと息を飲んだ。


 「お前は初めの挨拶からティーナに対して敵愾心丸出しだった。だがなワシらにとっては大切な娘だ。部外者であるお前にどうこう言われる筋合いは無い」


 イェオリの言い方からして西の庭でのマリアンヌとティーナのやり取りの事を言っているのだろうと想像がつく。マリアンヌはイェオリが口を開く度に自分の立場が危うくなっている雰囲気に気がつき始めた。

 唇が僅かに震えている。

 焦りの中、マリアンヌの出した答えはまたしても他人に(なす)り付ける事だった。


 「誰が何を言ったか存じませんが、一方的過ぎますわ。私にだって言い分はございます。それを聞かずにただの使用人である下賤な者の言い分ばかり取り上げられては、私の正当性を証明出来ません」


 「ほほぅ。ワシが雇っている者たちが嘘を言っているというのだな? ではお前の考えを聞こうか。お前はティーナに出て行けと言ったそうではないか、どういうつもりでその様な事を言った?」


 機会とばかりにマリアンナは口を開く。その言動は思慮深く奥ゆかしい態度だ。


 「その・・・、この家にとって大事な娘とは存じませんでしたの。きっと若さや情を武器にこの屋敷の乗っ取りを計画しているのではないかと思ったのですわ。そう、私は皆様を守りたかったのです。ひとえにその一心で、つい、興奮してしまって乱暴な物言いになってしまったのは認めますが、悪意あっての事ではございません」


 「なぜそう思った? 初めて会ったばかりだろう? この短い時間でひととなりを見抜けるほどに、お前は人を見る目があるというのか?」


 「いいえ、そうではございません。そうではなく。

 少々込み入った話になりますが、私、最近都でお姿をお見かけしていないイェオリ様やビルギット様お二人の事を心配になり、勝手ながら我が家の者にこちらの様子を調べさせたのです。その報告を聞くうちに、不埒者がこの家に入り込んでしまったのではないかと危惧したのです。

 それに、私、見てしまいましたもの。その・・・ターヴェッティ様に、その・・・」


 最初の勢いはどこへやら、言い淀むマリアンヌにイェオリは話を続けるようにと促す。


 「同じく初めてお会いしたはずのターヴェッティ様にキスをしているのを、この目で見たのです。堂々と、人目も憚らずにティーナ様はターヴェッティ様に抱きついておいででしたの。この目を疑いましたわ。まさか、大人しそうな方が、と。

 でも逆に、会ってまだそれほども経っていないのに、そのような振る舞いをするのにはなにか訳があると感じて私一生懸命に考えましたの。そこであの報告を思い出し、やはり乗っ取りかも、と思い至ったのです」


 マリアンヌの言葉に、イェオリは少し考える素振りを見せた。


 「ティーナがキスねぇ。しかもこやつと」


 ちらりとターヴェッティを見る目が鋭くなっている。けれども、見られているのに顔色一つ変えずにターヴェッティが口を開いた。


 「確かにキスをしましたよお祖父様。一つ訂正させていただけるならば、ティーナからではなく、私からです。私から傘を奪い返そうとする姿があまりにも可愛らしく、彼女が体勢を崩した拍子に頬に軽く。愛情表現の一種です」


 イェオリの前だというのに、その発言から全く悪びれていないのが分かる。


 「ああ、それは本当です。俺もそこにいましたから。ターヴェッティがティーナから日傘を取り上げて、それを取り返そうとするのも見てます。アーヴォと約束したから返せって言ってね。いやぁ正直言ってターヴェッティに抗う女の子って初めてで、つい面白くて止めもせずに見てました。申し訳ありません。俺も同罪です」


 「ほぅ、ワシとの約束を守る為にか」


 思わずその場面を想像したのか、頬が緩みそうになる主に気づきサムリがそっと割って入った。


 「旦那様」


 「あ、ああ。まぁその件は後で詳しく聞こう。ティーナが一緒ならあいつらも一緒だっただろうからな」


 と、ひと呼吸置いたのち


 「話を元に戻そう。仮にティーナがそうだったとしてもだ、なぜ勝手な行動をとった。お前はアルムグレーンの者ではなく、ホルソ家の娘だ。まずそう思ったのなら我が家のいずれかに言うべきだろう。なぜそれをしない。客人として迎えている以上、ましてや未婚の女性を預かっている以上、ワシにはお前の両親に対する責任がある。他家で勝手な振る舞いをして問題になるとは考えなかったのか」


 「ああ、本当に申し訳ございません。私、先ほども申しました通り、この家の方々を守りたい一心でつい出過ぎた真似をいたしました。お怒りはごもっともでございます。それに関しては申し開きもございません。心からお詫び申し上げますわ」


 マリアンヌは素直な態度で謝罪を口にする。


 「ふむ。お前の我が家に対する気持ちは分かった。だが、どうして、頬に怪我をすることになったのか?」


 「まぁご心配下さっているのですね、ありがとうございます。この傷は、私の連れて来たメイドのせいにございますれば、ホルソ家で対処いたします。どうぞご容赦下さいませ」


 「ならん。言ったであろう。この屋敷で起こる事全てにワシは知る権利がある。正直に申せ」


 うまく躱せるかと思っていたが、イェオリにはマリアンヌの小手先の(わざ)は全く通用しなかった。わざと深く息を吐き出してみせる。


 「致し方ございません。身内の恥ですので、つい隠し立てしようとしてしまいましたこと先にお詫びしますわ。

 実はメイドが盗みを働こうとしたようで、私がそれに気付き注意をしたところ逆上しまして、身の危険を感じとっさに身近にあった手鏡で抵抗しましたの。運悪くか運良くかは分かりませんが、メイドの行動は封じる事が出来ましたが、当たった際に割れた破片が私に向かって飛んで参りましたの」


 「・・・そうか。・・・大変な目に遭ったのだな」


 労いの言葉と受け取ったマリアンヌは今の状況にそぐわない、花が綻ぶような満面の笑みを浮かべた。


 「ええ、ええ、それはもう恐ろしくて、まさか自分の連れて来たメイドがそのような恐ろしい企てをしていたとは思っておりませんでした」


 「ときに、そのメイドは何を盗ろうとしていたのだ?」


 「はい。晩餐の時にティーナ様のお召しになっていた若草色のドレスや装飾品ですわ。あのような美しい色のドレスを持つ者はこの国では見たことがございません。ご存知でしょう? 少し前まで世界の色がくすんでおりましたもの。

 そんな中であの色を使えばよりくすんだように見え、着たものが醜く見えますから誰も使っておりませんでした。ですがここ何ヶ月かで美しい世界になりました。今ならば、あの色が最も()え、着る者を美しく生命力豊かに見せます。それに誰も持っておりませんから欲しくなりますわ。・・・ええっと、きっとメイドはそれで欲しくなったのだと思います」


 興奮気味になりそうだったことに自ら気がつき、途中で言葉の勢いを落としたが、淀みなく言い切るマリアンヌの表情はキラキラと輝いている。

 それもそのはずで、皆の注目を一身に集めている状態に満足感を覚えているようだ。憧れのターヴェッティやトゥオマスの視線も先程からずっとマリアンヌに向いているのだから、その視線を受けたマリアンヌの頬はうっすら染まって見える。


 何とも言い難い違和感をマリアンヌを除く誰もが感じていた。イェオリは静かな口調で更に問いかける。


 「そうか。確かにティーナの着用しているドレスの類は美しいし、本人によく似合っておる。だがなマリアンヌ、覚えているとは思うが晩餐の時、ティーナはワシらと伴に先に会場におったぞ。いつお前の連れて来たメイドはティーナに会ったのだろう?」


 マリアンヌを見つめるイェオリの目はどこまでも静かで凪いでいる。だが見られている方はなぜだか背筋がざわつくのを抑えられないでいるようで、居心地悪そうに視線を彷徨わせた。


 「え? あ、えっとその、そう、それは、きっと始まる前でしょう。移動されているときにでもお見かけしたに違いありません。私は残念ながら気付きませんでしたが」


 「ふむ・・・。違うな。会ってはおらんだろう。なぜなら、ティーナはこやつらとの散策の後、支度を終えると真っ直ぐワシらの部屋に来た。いつもそうしているからな。それに晩餐であの会場を使ったのは今回が初めてだ。ワシらは専用の通路があり誰にも会ってはおらん。当然、行動を一緒にしたティーナもだ。どこで会うと言うのだ?」


 とっさに言い繕うが即座に否定されてしまった。


 「まぁ、か、勘違いでした。そうですわ晩餐の後です。あの時はティーナ様と私と、ティーナ様のお付きの方だけでしたが、昼間、私が館からターヴェッティ様とティーナ様を拝見したのと同様に、きっとメイドも館のどこかからか見たのでしょう」


 「おや? それも違います。旦那様、発言をお許し下さい」


 気配を消し、黙って見守っていたサムリが淡々と話を始めた。


 「同時刻にあなたのメイドは私のところにいました。何でも本館を彷徨っていたそうで、見つけたうちの者が見かけない顔だと言う事で私のところへ連れて来たのです。本人に問い質したところ迷ってしまったと申しておりましたが、見つけたものによれば、アルムグレーン家の方々の私的な領域になっている二階にも居たということでした。それはこちらとしては大変拙いため、厳重注意を言い渡しましたのでよく覚えております。その後、人をつけて別館まで送らせましたのでティーナ様のお姿を見る可能性は、全く無いとは言い切れなくとも、限りなくゼロに近いと思います」


 「はて。お前のメイドはどこでティーナと会ったのだろうな」


 プルプルと唇を震わせながらマリアンヌはサムリを睨みつけている。


 「そ、それは・・・侮辱ですわ。たかだか使用人の分際が、私に関わることに口出しするなんて! イェオリ様はアルムグレーンの血を引いている私よりもその家令の言うことをお信じになりますの?」


 「ああそうだ。当たり前の話だ。お前ほど信用のおけない者も珍しいがな。さて、本館の二階は我が家族のみの空間だが、何故にお前のメイドが居たのだろうな。客人用の別棟とは完全に分離しておるから、意思を持って行かない限り、迷い込むような作りにはなっておらぬ」


 穏やかな口調ではあるが、確実にマリアンヌを追い詰めるイェオリの言葉に焦りを見せ始めた時、別の声が割って入ってきた。


 「そこまでですマリアンヌ。見苦しい言い訳はもうおよしなさい」


 凛とした声が部屋に響き渡った。


 「お、お祖母様! ど、どうしてここに?」


 現れたのはイェオリの姪であるサネルマで、イェオリの兄の娘だ。さすがのマリアンヌも自分の祖母が現れた事で驚きを隠せなかった。


 「イェオリ兄さん、私の孫がとんでもない迷惑をかけてしまい大変申し訳ございません。それもこれも、私の教育が足りなかったが為のことでございます。言い訳のしようもございません」


 10以上歳の離れていたイェオリと兄よりも、イェオリと兄の娘との方が年齢が近く、サネルマの姉妹からは昔から親しみを込めて兄さんと呼ばれている。


 「お、お祖母様がなぜ頭を下げるのですか。悪いのは使用人が・・・」


 マリアンヌのアルムグレーンへの憧れの起因である祖母が深々と頭を下げる姿をこれまで見た事がなく、その様子に大きな衝撃を受けていた。


 「黙りなさい! それが見苦しいと言っているのです。あなたの口先だけの嘘を見抜けないほど老いぼれてはおりません」


 サネルマはキッと孫へ向き直ると、険しい表情で叱りつける。


 「嘘だなんて酷いわお祖母様! 私の言う事よりも、使用人の肩を持つなんて」


 縛り付けられたままがたがたと椅子を揺らしマリアンヌは抗議をする。


 「こんなに歪んでしまったのは、ひとえに私がきちんと節度を持って接しなかった()()ですね。こんなことならもっと厳しくしておくのでした。私の孫とはいえ、娘達の代からは特権階級(プリヴィレジーオ)を離れて久しく、その子であるお前もまた一市民でしかないというのに、それも分からないとは・・・。そして、まさか、このような形で我がアルムグレーンに害をなすとは何と言うことでしょう」


 祖母に甘えようとさらに我儘に言い募るマリアンヌをサネルマは情けないと、悲しそうな目で見つめている。

 表面上は静かだけれどサネルマは心の内に渦巻いている感情を必死で抑えているだけに過ぎない。

 幼い頃から長女として責任感の強かったサネルマは、滅多に感情を表に見せる事は無かった。その事を知る者はもう大分少なくなりイェオリはその内の一人だった。

 イェオリは黙ってサネルマを見つめているが信頼をおいているのは、サネルマにもよく理解できた。その信頼を自身ではないにしろ、孫がこのような形で傷を入れたことに責任を深く深く感じていた。


 「少し落ち着くのだサネルマ。サムリ、椅子を」


 イェオリの5歳年下ということはそれなりの年齢であるわけで、このまま立たせておくのも宜しく無いとサムリに椅子を用意させ隣に座らせた。


 「事の次第はビルギットから聞いているな。正直ワシもどう決着をつけようかと頭を悩ませていたところだ。兄の系譜から犯罪者は出したく無い。できれば自ら反省し謝罪の言葉が欲しかったのだが、どうやら難しいようだ」


 サネルマを見るイェオリの目からは何の感情も読み取れない。

 怒っているのか、悲しんでいるのか、サネルマにすら分からないのだ。それはイェオリが公正に状況を見極めようとしているからで、マリアンヌを頭ごなしに全否定するつもりではないということを意味する。それが分かるだけに、サネルマは感謝こそすれ、非難などもってのほかだと理解している。


 「誠に申し訳ございません。私の不徳の致すところでございます」


 尚も頭を下げる祖母を見たく無い一心でマリアンヌは声を張り上げる。


 「お祖母様、私は悪く無いわ。嘘を言っているのはティーナとその付き人達ですわ」


 「黙りなさい! お前はこの期に及んでまだそんな事を言うのか! 

 お前が今非難した者達はアルムグレーンの者です。アルムグレーンの、我が家の者達は誰一人として主を裏切る者などおりません。ましてや報告に嘘はつきません。それがアルムグレーンなのです。そのようなことも分からずにいるお前を、どうして嫁に欲しいなどと言われようか。

 お前はその両の(まなこ)で一体何を見ているの? 私の屋敷に来て何も感じなかったの? 我が家の使用人達の言動をどう見ていていたの? 

 まさか、何も知らないとは言わないわよね。お前の母、私の娘であるエルマにも繰り返し教えてことです。女主人としての心構えとは何ぞや、何を見て、何を聞き、どう判断するのか、誰を信用するのか。悲しいかな・・・お前は何一つ学んでいない。今回その事がはっきりしました」


 「そんな。私は学びましたわ。使用人の扱いや・・・」


 「違う。お前は本当に何も見ていなかったし聞いていなかった。自分の都合の良い事にしかその目や耳を貸さないなんて・・・。

 心地のいい言葉の中に居ればそれば楽でしょう。

 ちやほやされるだけの状況で、そこに反省や本当の意味での学びがなければ、あなたのようになるのだとは、まさか我が孫によって知らしめられるとは思ってはおりませんでした」


 サネルマは「実に情けない」と言い捨て、マリアンヌを見ていられないとばかりに視線を外した。その顔には苦悩に歪む深い皺が刻まれている。


 マリアンヌは未だ椅子に括り付けられたままで、解かれる様子の無い状態も気にならなくなるほどの緊張を強いられ押し黙った。

 

 そしてしばしの間、部屋の中に重苦しい沈黙が流れた。



 そんな中、言づてがサムリに伝えられた。


 「旦那様、サネルマ様のご息女、エイラ様とご夫君のホルソ氏がお見えになりました」


 「ほぉ? 呼んだ覚えはないが・・・」


 「私ですイェオリ兄さん。連絡を頂いた後すぐに私からエイラに連絡を入れましたの」


 「そうか。で、どうする?」


 イェオリは暗にお前に任せると言っている。その意図を組みサネルマが指示を出した。


 「サムリ、こちらへ呼んで下さい」


 「かしこまりました」


 ほどなくして緊張した面持ちでエイラと夫のホルソ氏が姿を現した。そして、部屋に入るや否や椅子に括り付けられている娘の姿を目にし、何が何だか分からないと言った様子で部屋中に視線を彷徨わせた。そこにはイェオリやサネルマだけでなくターヴェッティやトゥオマスもいるが視線は滑っているようだ。


 「お母様、これは・・・、この状況は一体・・・」


 「エイラ、まずはご挨拶なさい。話はそれからよ」


 状況を判断する事も出来ずにいるエルマに対し、有無を言わせない凛とした口調でサネルマが命じる。それで漸く目の前にいるそうそうたる面々を理解したようで、慌てて夫婦で膝を折った。 


 「遠路来てもらったのは、もうお判りでしょうがマリアンヌのことです」


 「義母上、娘がどうしたのでしょうか?」


 蒼白になっているエイラの代わりに夫のホルソ氏が落ち着いた口調で問えば、サネルマは一層厳しい表情で答えた。


 「端的に言えば、虚偽、脅迫それから窃盗未遂です」


 「なんですって!? まさか、そのような、娘がそのような人の道から外れた事をするとは・・・」


 「嘘よ!」


 叫ぶマリアンヌを目線だけで制しサネルマは続けた。


 「事実です。でなければ、この様な無様な状況になっておりません。まだこの状況でいられるのはひとえにイェオリ兄さんの恩情以外の何ものでもありません。でなければ既に保安部隊に身柄を引き渡されているはずです。特権階級(プリヴィレジーオ)筆頭であるアルムグレーンでの暴状は、それだけで罪に問えますからね。

 それに、あなた達ならば必ず知っているはずです。今のアルムグレーンがこの世界においてどのような立場なのかを」


 静かに語るサネルマのその言葉に、エイラとホルソ氏がハッと息を飲んだ。


 「そなた達の娘がそのアルムグレーンで、イェオリ兄さんの足下で行った暴状は既にここにいる皆が知っている。唯一、マリアンヌだけが違うと言い張ってはおるが、其方らはどちらを信用する?」


 サネルマの問いかけにキュッと唇を引き結んだエイラは、一瞬娘の方を見たがすぐにすいっと視線をそらした。


 マリアンヌは母に助けを求め、その一心で見つめていたが、苦しげにそらされたその表情を見て自分が信用されていないのだと理解した。更に縋るような目で父へと向けるが、その父は視線こそそらしはしなかったが小さく首を横に振っている。


 「あ・・・そんな・・・お父様、お母様・・・そんな」


 商家に生まれ自身も研鑽を積み商人として大成しつつあるホルソ氏は、残念ながらこの状況で娘を全面的に庇えないほどに多角的にモノを見る事が出来きてしまう。

 商人としての勘からも、さっきサネルマが言った事の方が正しいと感じている。だが、やはり血を分けた親としては何とかしてやりたいという気持ちも少なからずあり、非常に重く口を開いた。


 「マリアンヌ、アルムグレーンの情報網を侮るな。彼らは(つぶさ)に見、聞き、調べる。それはアルムグレーンにとって不利な情報であってもなお、現状そのままを伝えるべく訓練されているのは周知の事実だ。だからこそ我々一般国民はアルムグレーンを信頼するのだ。

 聞いた事は無いか? もしくは私が話さなかっただけか・・・。ならば私にも責任がある。責めはお前だけに負わせるつもりは無い。私もまたお前をそのように育ててしまった罪がある」


 「あなた・・・」


 エイラがそっと夫に寄り添うと、互いに視線を絡ませて頷き合った。


 「義母上、イェオリ様、我らの娘の行状全てを認めます。その上で、謝罪をいたします」


 ホルソ氏とエイラは両膝をつくと揃って頭を下げた。最大の謝罪の姿勢だ。


 ここへ辿り着いてまだそれほど時は経っていないが、事の重大さは十分理解しているようだ。イェオリは深く頭を下げる二人を静かに見つめている。と、そこでマリアンヌがガタガタと椅子を揺らしながら大声を張り上げた。


 「嫌よ嫌! どうして私が悪いの! 悪いのはティーナよ! あの娘が私の計画を台無しにしたのよ! ターヴェッティ様を誑かし、イェオリ様やビルギット様を騙しているの! どこの誰とも分からない薄気味の悪い輩なのに、どうして皆分からないの? 追い出すべきでしょう?」


 「口を慎めマリアンヌ! それこそ身勝手ないい訳にすぎん!」


 ここへきてホルソ氏が初めて言葉を荒げ娘を諌めたが、マリアンヌは言う事を聞こうとしない。


 「嫌! あのメイドが私の言う事を聞かずにドレスを持って来なかったのも、きっとティーナに何か言われ洗脳されたんだわ。人の心を唆す悪魔よ!」


 「ティーナ様のドレスを盗って来いと命じたあなたに、身を以て諌めたメイドに対して手鏡で殴りつけ重傷を負わせたあなたにそんなことを言う資格は無い」


 これまで静かに状況を見ていたサムリが(たま)らず発した。


 「重症ですって? どういうことなの? 命は大丈夫なの?」


 サムリの言葉にエイラが(おのの)き、目をカッと見開いたが、さすがに女主(おんなあるじ)として家内を取り仕切っているだけありすぐに平静を取り戻した。


 「幸いすぐにティーナ様が処置をしてくださり命に別状がございません。ですが暫くはベッドでの安静が必要と、それから傷は残るかもしれないということです」


 「何てこと・・・若い娘に傷を残すようなこと・・・」


 サムリの話にエイラは今度こそ毅然とした態度で娘に向かった。


 「手鏡で殴るとはお前は自分を何だと思っているの! しかも人のドレスを盗って来いと言ったあなたを(いさ)めてくれたメイドを叩くなど(もっ)ての(ほか)です! 忠義が無ければそのような事はできません。いえ、してくれません。そんなことも分からないの?」


 「でもお母様、相手はたかがメイドなのよ。使えなくなったのならまた新しいのを雇えば良いだけじゃない」


 口を尖らせ不満を言うマリアンヌにエイラは眉間の皺を深めてた。


 「メイドだから何だと言うのですか。お前と何が違うと? 

 お前の着ているドレスや髪飾りをそっくりそのまま交換して少し礼儀作法を教えれば何も違わないわ。むしろ勇気を持って正しい行いをしたそのメイドの方を私は評価します。

 ・・・ねぇ、どうしてあなたはそうなってしまったの。いつから他人の痛みや真心を見なくなったの」


 エイラは言葉を続けられていられないようで、それを見たホルソ氏が優しく背中を擦った。


 「いいえ、お父様のおっしゃるとおり、あなただけが悪い訳じゃない。それに気付かなかった母である私が、あなたをそういう風にしてしまったのだわ。

 矜持は自分より弱い者を組み敷く為に使うモノではないわ。あなたのは“(おご)り”以外のなにものでもない。贅沢に慣れ過ぎ、なまじ人より美しく産まれて来てしまったが為に周りからちやほやされ、その結果、慢心の塊を作ってしまったのね。

 お母様と慕ってくれるあなたが可愛くて、つい、甘やかしてしまったのかもしれない。

 今だから言える。

 あなたの為にもっと厳しくすべきだったわ。忙しさにかまけ、あなたにとって大事な時期に教育係として他人に任せてしまったことも良く無かった。

 私の母が私にしてくれたように、己の足下をしっかりと見つめることができるよう、自分を支えているのは誰か、今の生活が出来ているのは誰のお陰かしっかり叱ってあげればよかった。

 きっとそれすら理解出来ていないのでしょうね、今のお前は」


 縛り付けられたままのマリアンヌの足下に跪きより間近から自分の娘の目を見つめ、切々と語りかけるエイラは、娘の行く末を憂い、後悔と悲しみで溢れている。

 さすがのマリアンヌも母にこんな顔をさせているのが自分だと薄々分かっていているようだが、まだ妙なプライドが邪魔をして素直になることができないでいる。




 静かに見守っていたイェオリがそっと口を開いた。


 「サネルマ、このままここで言い争っていても平行線のようだ。とりあえずだ、マリアンヌの身柄は我が家で預かろうか?」


 「いいえイェオリ兄さん、(わたくし)が。

 この様な事を申し上げる立場には無いとは重々存じておりますが、今一度、機会を下さいませ。この者は特権階級(プリヴィレジーオ)ではなく一市民ではございますが、間違いなく私の孫でございます。老い先短くはありますが残りの命を()して、必ずこの愚かな孫を再教育いたします」


 サネルマもまた両膝をつきイェオリの膝に手を置いて願い出る。誰もがその姿に息を飲んだ。

 ターヴェッティやトゥオマスもまた驚きを隠せない。サネルマは彼らの祖父母と並ぶ立ち位置の人間なのだ。

 トゥオマスが思わず手を差し伸べようと身じろぐが、その前にホルソ氏がイェオリの靴先に額をつけた。


 「義母上(ははうえ)のお命はもっと別な事にお使い下さいませ。あなた様の孫はマリアンヌ一人ではございません。まずは私ども親がその責を果たしたく存じます。

 今はただただ、不出来な娘を再教育するというお約束しかできませんが、私ども夫婦がそれこそ命を賭して努めます。

 イェオリ様、返す返すも我らが娘の非道な振る舞い、私のような、自分の娘一人まともに育てられない者が頭を下げて済む話ではございませんが、衷心よりの謝罪の言葉をお受け取りいただきたく存じます」


 この国屈指の商家であり大富豪であるマリアンヌの父は、国内外にその名を馳せている。

 繋がりを持ちたいと考える者が連日押し掛けるほどに強い影響力を持ち、イェオリとは違った意味で従わせる力がある。

 その事実こそがマリアンヌの歪んだプライドを支える礎の一つであるが、両膝をついて深々と頭を下げ謝罪の言葉を述べる父の姿は、さすがのマリアンヌも耐えられなかった。


 アルムグレーン直系の血を引いている祖母と、各界へ強く影響力を持つ父が揃ってイェオリに膝を折り謝罪をする姿を見たマリアンヌの心の内で、何かが音を立てて崩れ落ちた。






 「本当に良いのか? 一晩くらい泊まって行けば良いものを」


 イェオリからの言葉に、漸く解放されたマリアンヌを連れたエイラとホルソ氏が深々と頭を下げている。


 「いいえ、皆様が優しくして下さる事を良い事に娘は酷い勘違いをしているのです。己の立場を弁えさせることから始めます。

 義母上、都に戻り次第、息子も交え家族で話し合いを行います。そしてその事を報告いたしますのでご意見を伺いたく存じます」


 「分かりました。まずはしっかりとお話しなさい。気をつけて帰るのですよ」


 まずはマリアンヌの両親である二人に任せる事にして、サネルマは頷いた。


 「お母様、怪我をしたメイドのことですが・・・」


 「分かっています。明日、顔を出してみましょう。あなた方の顔を見ると安静にはならないでしょうからね。それも後で連絡します。エイラ、あなたはすぐ彼女のご両親に事の次第を話し、預かっている大事な娘さんに傷を負わせてしまったことをお詫びしなさい」


 サネルマの言葉にエイラはしっかりと頷いて「すぐに必ず」と約束した。

 そして夫婦は改めて宜しくお願いしますと頭を下げて、マリアンヌを引き連れ車に乗り込んだ。

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