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そして新学期。
「ね、あれ……」
「え、誰?」
教室には、いつもと違う騒めき。違和感? 遠巻きに、一人の様子をうかがうような。
「転校生かな?」
「ばか、あれは」
小島、だよ。
予想はしてたけど、想像以上だった。窓際、前から三番目。机に鞄を置いたまま、軽く椅子に座った小島。あんまり格好よすぎて、教室に入った途端、目を奪われた。
小島は、私の姿を認めると、爽やかに笑って、
「切ったよ」
と髪を切ったことを報告した。そんなの、見れば、わかるけど。
「おはよう、小島」
とりあえず、挨拶はしておいた。小島は、超絶キレイな顔でさらにくすりと笑い、
「おはよう」
と返してきた。
「え、小島? 前髪は?」
「切ったんだ」
「うわ、どーゆー心境の変化?」
「なにあれ、ずるくね?」
あちこちのさえずりをまるで無視して、小島は入り口近くの私の席までやってきた。
「約束守ったからね」
私の顔を覗き込むようにして小島は言った。綺麗な顔のまっすぐな目に射抜かれて、朝から私はフリーズ。
「なに、小島、もしかして夏休みの間に石塚となんかあった? それで、髪切った、とか?」
遠慮のない男子の問いかけ。まあ、間違ってはいないんだけど。
「まあ、切って、って、彼女に頼まれたからね」
小島がしれっと言う。『彼女』って言葉に教室中が一旦静まり、その後過剰反応。単なる代名詞とは誰も思ってくれないわけで。
小島の堂々宣言に、晴れてクラス公認題1号カップルとなった私たちだった。
いや、あの、私の意志は……?
「柚葉、ずるいー。小島って、超イケメンだったんじゃん」
まあ、そうなんだけど……。
「石塚、守ってくれるんでしょ?」
してやったりって顔の小島。
確かに守るって言った。責任は、とるよ。だって、ずっともったいないって思ってたから。
そのままの、隠さない小島でいてほしいって、思っちゃったから。
それは。
特別な、気持ち。
「石塚?」
私を呼ぶ、小島の声がほんの少し揺れた。
ごめんね覚悟を決めるまで、時間がかかっちゃったみたい。
「瑞希、って呼んでいい?」
小島の気持ちは、わからない。どんなつもりか、私のことを好きかどうか、それもわからない。でも、付き合うんだよね? だったら。
「いいよ」
私をじっと見て、柔らかく許すように目を細める。
「じゃあ、柚葉。とりあえず、今日も部活、だよね?」
「うん」
そう。吹奏楽は半端なく活動が多い。
「バイト入る前に迎えに来るから。一緒に帰ろう」
「うん」
少しずつ、そうしてお互いを知っていこう。
恋は、これから。
石塚柚葉、高1の二学期そうそう、彼氏ができました。




