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微炭酸summer☆  作者: 真織
7/9

 彼女、って……。


 彼女、って? つきあうって意味の?


 いや、小島が、私をスキとか、そういうんじゃないだろうし。

 いきなり、それはナイよね。


 ……とすると。牽制、とか。

 髪を切らないで済むように、私が動揺して、コンクールメンバー選抜で滑るように?

 いや、でも、小島って、そんなことする性質たちじゃないような……。


 うーん……。

 考えても、わからない。


 あの賭けに、こういう出方で、返されるとは……。


 ……。



 帰りのバスの中、私の中はぐるぐるで。


 でも。

 小島の思惑はともかく、ずっとコンクールメンバーになるために頑張ってきたんだし。私は、私の精一杯で選抜に臨むんだから。




 そうして。

 なんとか気を引き締めて、選考会では、自分なりに出来るだけのことをした。

 コンクールメンバーは、顧問の先生と三年生が相談して決める。後は結果待ちだ。

「楓は、入れるね」

クラリネットの手入れをしている楓に、声をかけると、

「こっちは倍率低いから」

と返された。確かにクラリネットは、人数がいるので、選ばれる確率は高いんだけど。

「楓の音が良かったからだよ」

友だちとしてじゃなく、そう言うと、楓は照れくさそうに笑って、

「柚葉もレベル上げてきたね」

と嬉しくなることを言ってくれた。

「この夏は、お盆休みも頑張ったからね」

「……なんか、いいことあった?」

「え」

楓は、フルートを持つ手の止まった私に意味ありげな笑いを見せた。

「なんで?」

「んー、なんとなく、かな。柚葉の音が、そんな感じに聞こえた」

「そんな感じ?」

いいことあったような?

「うん」

 楓の感想はともかく、レベルが上がっているなら嬉しい。今は、ただ、メンバーに入りたい。

 メンバーの発表は、明日。

 出来るだけのことは、した。

 

 選考会の余韻を残しつつ、帰り支度も済み、何人かでおしゃべりしながら校舎を出た時、

「ね、あれ、小島じゃない?」

他の子と話していた私の鞄の肩ひもを引っ張って、割り込むように楓が言った。

 正門にもたれて、鬱陶しい前髪の私服の男子がいた。

 なんで、小島?

 彼は、私たちに気づくと、何か言いたげなそぶりをした。

「ごめん、ちょっと、いい?」

部活仲間に断りを入れて、少し早足で小島のそばに行った。

「どしたの?」

「連絡先も何も聞いてなかったから」

なんだか小島の声が不機嫌。ああもう、表情が読めない前髪をなんとかしてほしい。

「連絡先?」

「だから、選考会の結果とか、聞けないだろ?」

 そう言えば、お互いに電話番号もメルアドも何にも知らない。夏休み中の小島と私の接点は、小島のバイト先のカラオケボックスだけだった。

 いまさら、そんなことに思い当たる私をよそに、

「結果、いつわかるの?」

と、小島。それを聞くためにわざわざ、ここで部活が終わるの待っててくれた……?

「明日」

「ケータイ、出して」

「え」

「ほら早く。俺、今からバイトだから」

急いでいる様子の小島に押し切られて、連絡先を交換する。

「じゃ、結果わかったら教えて」

「あ、うん」

「あの賭け、有効だから」

「え?」

冗談じゃなくて? 

 それだけ言うと、小島はバイトに行くと去っていった。


 残された私には、楓の含み笑いに太刀打ちするすべもない。近くのドーナツ屋に引っ張っていかれ、これまでの小島との経緯を白状させられたのだった。











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