最悪の問い
君にいつか嫌われることは覚悟していたはずなのに…
顔を上げるのが怖かった。
目を開くのが怖かった。
目を開けた先には…笑顔があった。
「笑った方がいいんじゃない?」
そう言って笑うあのコを見ながら俺は呆然としていた。 上目遣いの目をそらすことなく。
でもすぐに目を逸らした。俺には眩しすぎたのかな。
「そういえばアキちゃん、このコのことなんて呼んでるの?」
紹介が遅れて申し訳ないが俺の名前はアキラ。 みんなからはアキちゃんと呼ばれている。
問われてみれば思い出す。 というかそもそもロクに会話したことないから名前なんて呼んでなかった。
「私ナツキ。 ナツって呼んで。」
満面の笑みで自分の名前を紹介するその顔を直視できなくてまた目を逸らしてしまった。
無愛想だとでも思われてるのかも。
数日経っても何も進展しない。 もちろん後退が怖いので好転することなどない。 後退もしない。 悪い意味で現状維持してる。
日に日にあのコを見る俺の目が辛さを帯びているのがわかる。
あのコを見るたびに鼓動が早くなるのもわかる。
それでもあのコにだって好きな人は絶対にいるはずだ。 彼氏がいるかもしれない。 俺なんかに振り向くわけが無い。
悪いことばっかり考えてしまう。 俺の悪い癖だ。
空を見れば雪が降っているのに顔が火照っているもんだから冷たくは感じない。
未だ遊びに誘うことすらできない。 俺の行動力の低さが恨めしく思えてくる。
「あれ? アキちゃん。 どうしたん?」
手を振って近寄ってくるナツと呼ばれたがってる目の前の女子に俺は思わず目を逸らした。
「寒いよね… 冬ってあんまり好きじゃないんだよねえ…」
「うん…」
「アキちゃん顔あっかい! 寒いもんね… ホント嫌だよね。」
「ああ…うん…」
この日ばかりは冬の寒さに感謝してる。
そうだ…カラオケ誘おうとしてたんだ… 今更こんなことを思い出す。
もうすぐ3月だ。 この紅くなる顔を誤魔化せるうちに誘っておかないと。
「なあ…ナツちゃんって…カラオケ行ったことある?」
「え? うんあるよ。」
恐る恐る聞いてみる俺にあのコは普通に答えてくる。
何故だろう。 次の言葉が出なくなった。 そんなときに浮かんでくる悪いイメージ。
「今、一緒に行きたい人とか…いる?」
―――何を言ってるんだ俺は。