補助術士は戦乙女を倒さない
男は、酒杯を両手で包むように握っていた。
右肩から胸にかけて、治療布が厚く巻かれている。血は止まっているはずなのに、その指先はまだ震えていた。エルトランの酒場には腕自慢が多い。誰かが迷宮で傷を負って戻ることなど珍しくもない。だが、その男の顔に貼りついているものは、痛みではなく、敗北の記憶だった。
「銀の女だった」
男は、誰に聞かせるともなく言った。
「笑いもしねえ。怒りもしねえ。ただ、こっちの斧を見て、つまらなそうに一歩踏み込んできた。次に気づいたときには、俺は黒い丘の入口で倒れてた」
「殺されなかったんだろう?」
誰かが軽く言った。
男は、その者を見た。傷よりも深いものを見せる目だった。
「殺されなかっただけだ」
その一言で、酒場の空気が少し冷えた。
町外れの黒い丘。その地下にある古い迷宮の最奥に、戦乙女が現れる。神銀の装具をまとい、双つの刀を操る女。挑んだ冒険者はことごとく敗れ、命こそ失わないが、迷宮の入口へ強制的に送り返される。
噂は、傷を負って戻った者の数だけ膨らんだ。
魔物ではない。
だが、人の剣ではない。
あれは試練だ。
いや、番人だ。
いや、神の罰だ。
そんな噂に釣られて、四人の冒険者が黒い丘へ向かうことになった。
炎神の寵を受けた大剣使い、ヴェルター。
風と光をまとって駆ける軽戦士、フレッズ。
冥神と獣神に選ばれた半羊人の拳士、ポストマ。
そして、深緑のローブを着た歳術士、ジャックフィル。
最後の一人だけは、どう見ても戦場の前衛には向いていなかった。布のバンダナを巻き、腰には短剣を吊っているが、それを抜いたところを仲間でさえほとんど見たことがない。戦いの前にすることといえば、薬瓶を数え、土の匂いを嗅ぎ、妙な種を小袋に詰め直すことくらいだった。
「緑芽、また種か」
黒い丘へ向かう道中、ポストマが低く言った。
ジャックフィルは小袋の口を縛りながら、肩をすくめる。
「また、じゃない。今回は高いやつ」
「役に立つのか」
「立つように逃げる」
フレッズが笑った。
「そこは勝つって言えよ」
「勝てそうなら言うよ。噂通りなら、相手は真正面から勝てる種類じゃない」
ヴェルターは、大剣を背負い直した。
「ならば、真正面は俺が受ける。お前は後ろで陣を張れ」
「頼もしいね。僕は後ろで、なるべく死なないように祈ってる」
「祈るだけなら置いていくぞ」
「祈りにも技術があるんだよ」
軽口はいつものことだった。だが、迷宮の入口へ近づくにつれて、ジャックフィルの視線は笑っていなかった。
黒い丘の割れ目に、古びた階段が沈んでいた。中へ入ると、地上の光はすぐに細くなり、代わりに壁面の紋様が青白く浮かび上がった。魔物はいない。罠もない。ただ、奥へ進むほど、空気そのものが重くなる。
ジャックフィルは何度か指を鳴らし、空間の手触りを確かめた。普段なら遠くに感じられる帰還位置への糸が、ここでは妙に硬い。切れているのではない。どこか一点へ束ねられている。
「緑芽」
ポストマが呼ぶ。
「分かってる。外との接続が変だ。迷宮が古いから、じゃ済まないね」
「戻れなくなるか」
「たぶん戻される。自分の意思じゃなく」
その言葉に、フレッズの軽い表情が少しだけ消えた。
ジャックフィルは歩きながら、袖口から小さな種を落としていった。床の亀裂に紛れるほどの粒で、魔力を受けるとかすかに震える。ヴェルターとフレッズは気づかなかった。ポストマだけが一度それを見たが、何も言わなかった。
◆
最奥の広間に、彼女はいた。
磨かれた玄武岩の床。円形に刻まれた古い魔方陣。祭壇の前に立つ、銀の女。神銀の鉢金と胸当てをまとい、両手には細身の双剣を握っている。
美しかった。
だが、その美しさよりも、剣の気配が先に肌を刺した。刃の周囲だけ、魔力の流れが不自然に澄んでいる。水面に落ちた油膜を、薄い刃で裂いたような静けさだった。
「挑戦者」
女が言った。
その声には、怒りも喜びもなかった。古い祭具が、決められた音を鳴らしたようだった。
「名を」
ヴェルターが一歩前へ出た。
「ヴェルター。大剣使いだ」
「フレッズ。速い男、と覚えてくれ」
「ポストマ。拳士」
三人のあと、ジャックフィルは片手を上げた。
「ジャックフィル。補助担当。話し合いで済むなら、そっちを強く希望する」
女の目が、ほんのわずかに彼へ向いた。
「敗北を認めるなら、帰還を許す」
「ほら、話し合いの余地が少しある」
「緑芽、下がれ」
ヴェルターが大剣を抜いた。
赤い熱が刃に宿る。炎神の加護を受けた鋼が、周囲の空気を歪めた。彼が一歩踏み込むだけで、黒い床に焦げ跡が走る。並の魔物なら、その熱だけで膝をつく。
大剣が振り下ろされた。
重さと熱を束ねた一撃。女は受けなかった。半歩、ただ半歩だけ横へずれ、双刀の片方で大剣の腹を滑らせる。もう片方の柄が、ヴェルターの胴に入った。
斬ったのではない。
だが、ヴェルターの体は石柱まで吹き飛ばされた。肺の空気が吐き出される鈍い音が広間に響く。彼が立ち上がろうとした瞬間、青白い球体がその身を包んだ。
「一名、資格喪失」
女が告げる。
次の呼吸で、ヴェルターは消えていた。
「冗談だろ」
フレッズの声から軽さが抜けた。
彼は即座に走った。床ではなく、壁を蹴った。風神の加護が足に宿り、その姿が三つにぶれる。光の残像が女の視界を惑わせ、短槍の穂先が背後から首筋へ落ちる。
速い。
ジャックフィルの目でも、追い切れなかった。
しかし、女の双刀は迷わなかった。振り返ることさえせず、背後へ流した一刃がフレッズの残像ではなく本体の軌道を裂く。風の術式がほどけ、彼の体が空中で崩れた。着地より早く、もう一方の刀が首筋に添えられる。
「二名、資格喪失」
「待て、今のはなしだろ――」
青白い光が弾け、フレッズの姿も消えた。
残ったポストマは、低く息を吐いた。巨躯が沈み、両拳のナックルに錬気が満ちる。床が軋んだ。冥神の静けさと獣神の荒さが、ひとつの体の中で噛み合っていく。
「緑芽、帰還位置を探れ」
「もうやってる」
ジャックフィルは後方へ退き、魔方陣を展開した。帰還位置への接続。空間固定の解除。どれも途中で弾かれる。広間の中心にある何かが、すべての糸を握っている。
ポストマが踏み込んだ。
拳と双刀がぶつかり、火花が散った。彼の打撃は重く、しかもただの力任せではない。受け流されれば即座に軌道を変え、足を狙われれば角で牽制し、双刀の片方を封じてもう片方を拳で受ける。
女の目が、初めてわずかに細くなった。
ポストマは善戦した。
だが、それでも届かなかった。
双刀は彼の錬気の継ぎ目を読み、拳の流れを切り分けていく。こめかみから血が落ちた。片膝が床につく。女の双刀が頭上へ振り下ろされ、ポストマは両手のナックルでそれを受け止めた。
「ぐ……ぅ」
「ポストマ!」
「緑芽、まだか」
「駄目だ。空間が完全に固定されてる。強行突破するなら、亜紋震動で無理やり――」
「させないわ」
女の切っ先が、ポストマへ向いた。
「貴方はもう、私に挑む資格がない」
その言葉のあと、わずかな沈黙があった。
女の唇が、何か別の言葉を形作ろうとしたように見えた。だが次の瞬間、彼女の瞳から揺らぎが消えた。
「ここで終わりよ」
青白い球体がポストマを包む。
「強制転移か――」
巨体が消えた。
◆
広間には、ジャックフィルと女だけが残された。
静けさが落ちる。
ジャックフィルは、首の後ろに冷たい汗が伝うのを感じた。三人とも強かった。少なくとも、自分よりはずっと戦いに向いていた。その三人が、ほとんど何もできずに消えた。
女は双刀を下ろさない。
「残るは後衛の貴方一人。どうする? 潔く敗北を認めるなら、このまま送り返してあげる」
「いや」
ジャックフィルは笑った。
震えを隠すための笑みだった。だが、恐怖で舌が固まるよりはいい。強い相手の前で最初に死ぬのは、たいてい沈黙した者だ。
「補助術士一人だからって、勝負はやってみなきゃ分からない」
「そう」
女の瞳に、かすかな興味が灯った。
「私も、その方がいいわ。面白いもの」
「今の一言で、だいぶ帰りたくなった」
彼は走った。
正面からは戦わない。短剣も抜かない。柱の陰へ逃げ、薬瓶を投げ、煙幕を張り、障壁を重ねる。女はそれを追った。足音は一度だけ。次にはもう、刃が背後にある。
煙幕は双刀の一振りで裂かれた。
障壁は刃が触れた瞬間、内側からほどけた。割られたのではない。最初から組まれていなかったかのように、構成ごと消える。
「くっ……魔術障壁を切り裂くなんて。それ、魔剣の類い?」
女の眉がかすかに動いた。
「魔剣などではない。錬式刀よ」
「シュプレイツ……構成錬製刀か」
ジャックフィルは息を切らせながら目を細めた。
「古い言葉を使うね。今どき文献でも滅多に見ない」
「貴方こそ、補助術士にしては知っている」
「本を読む補助術士は長生きするんだ」
「逃げ足も必要そうね」
「いま実感してる」
刃が肩をかすめた。
血がローブに滲む。痛みで膝が落ちかけるが、ジャックフィルは転がって距離を取った。その手から、また小さな種が落ちる。
彼は逃げながら、広間を見ていた。
床の亀裂。魔方陣の線。女の踏み込み。彼女は強い。だからこそ、無駄がない。相手を仕留める最短距離を、迷わず踏む。ならば、その最短距離に罠を置けばいい。
「ひとつ聞いていい?」
「遺言なら手短に」
「君は、本当に自分の意思でここにいるの?」
双刀の軌道が、わずかに乱れた。
一瞬だけだった。だが、ジャックフィルには十分だった。
「私は……」
女が何かを言いかける。
次の瞬間、彼女の腕が、彼女自身の言葉を断つように振るわれた。双刀が空気を裂き、ジャックフィルの頬に血を走らせる。
「挑戦者に答える義務はない」
「いまの間、答えみたいなものだったけどね」
「黙りなさい」
女が踏み込む。
その足が、四つの種を結んだ中心に触れた。
ジャックフィルは床に右手を叩きつけた。
「樹縛陣!」
玄武岩の下で、湿った音がした。
亀裂から深緑の光が漏れ、方形の陣が浮かび上がる。次の瞬間、黒緑の根が床を割って噴き上がった。女の足首に絡み、腕を縛り、双刀の柄へ巻きつく。
女の目が見開かれる。
「これは……」
「ただの拘束じゃない。君の剣で切らせるための陣だ」
「なら、望み通りにしてあげる」
双刀が動いた。
根が裂ける。一本、二本、三本。やはり錬式刀は術式の継ぎ目を斬ってくる。拘束そのものは長くもたない。だが、ジャックフィルは逃げなかった。
床に左手を置き、陣の奥へ意識を沈める。
女が根を斬るたび、干渉の流れが逆流してくる。その流れをたどる。刃から腕へ。腕から彼女を縛る命令式へ。命令式から、広間の床下に埋められた中枢へ。
見えた。
挑戦者を判定せよ。
敗者を帰還させよ。
番人は広間を離れるな。
番人は命令に従え。
そして、最後の一文。
番人は、己を持つな。
ジャックフィルの奥歯が鳴った。
「ふざけるなよ」
女の瞳が揺れた。
「何を見たの」
「君を縛っているもの」
「私は番人。挑戦者を試し、敗者を帰還させる。それが私の役目」
「役目と意思は違う」
「同じよ」
「違う」
ジャックフィルは万王樹の力を流し込んだ。
根は文字を砕かなかった。焼き払うこともしなかった。ただ、その命令に絡みついた。何百年も同じ意味であり続けた言葉が、初めて別の読み方を強いられる。
番人は広間を離れるな。
ならば、番人でなくなればいい。
番人は命令に従え。
ならば、命令を受ける名を外せばいい。
番人は己を持つな。
ならば、己を持つ者を番人とは呼べない。
古い命令式が軋んだ。
女は双刀を振り上げた。根はほとんど斬られている。刃はジャックフィルの喉へ届く。逃げる時間はない。防ぐ術もない。
それでも、彼は手を離さなかった。
「誇りと命令は違うだろ」
刃が喉に触れた。
血が一筋流れる。
「君が斬りたい相手を、君が選べていないなら、それは戦士じゃなくて装置だ」
広間の青白い光が激しく揺れた。
女の腕が震える。
「私は……」
今度は、その言葉を双刀が断たなかった。
「私は、リルイン」
刃が止まった。
床に刻まれていた古い紋様が、ひとつずつ消えていく。空間を縫い止めていた圧力が緩み、遠くにある帰還位置の気配が戻った。地下の冷たい空気に、地上の夜風が一滴だけ混じる。
双刀が下ろされた。
ジャックフィルはその場に尻餅をついた。全身の力が抜け、笑おうとして喉の傷に顔をしかめる。
「……勝った、って言っていい?」
女――リルインは、彼を見下ろした。
「私が斬らなかっただけよ」
「だよね」
リルインはしばらく、自分の手を見ていた。
番人ではなくなった手。命令に従うためだけではなくなった手。何を斬るか、何を斬らないかを、自分で選ばなければならない手。
「私は」
彼女は広間を見回した。
魔方陣は消え、祭壇はただの古い石に戻っていた。長く自分を縛っていた場所は、もう彼女に何も命じてこない。
「どこへ戻ればいい」
その問いは、勝者のものではなかった。敗者のものでもなかった。
迷子の声だった。
ジャックフィルは、まだ座り込んだまま彼女を見上げた。
「戻る場所がないなら、行き先を決めればいい」
「行き先」
「そう。急がなくていい。とりあえず、外に出る。空を見る。飯を食う。それから考える」
リルインは、その言葉を確かめるように黙った。
「外には、私の知らないものがあるのね」
「たくさんある。良いものも、面倒なものも」
「貴方は面倒なものに詳しそう」
「不本意ながらね」
リルインは双刀を収めた。
「なら、しばらく同行するわ」
ジャックフィルは嫌な予感を覚えた。
「誰に?」
「貴方に」
「なぜ」
「私を外へ出したから」
「それ、責任を取れって意味に聞こえるんだけど」
「そう言っている」
「もう少し穏やかな表現を探してほしい」
リルインは首を傾げた。
「では、案内しなさい」
「少しは穏やかになったけど、命令形は残ったね」
◆
二人が迷宮を出たとき、夜はまだ明けきっていなかった。
黒い丘の入口には、先に転移させられていた三人がいた。ヴェルターは腕を吊り、フレッズは地面に座り込み、ポストマは傷口を押さえながら立っている。
ジャックフィルがふらつきながら階段を上がると、三人は同時に顔を上げた。
「緑芽!」
フレッズが駆け寄った。
「生きてるか?」
「まだ死んでない。だから勝ちでいいことにしよう」
「勝ったのか」
ヴェルターの問いに、ジャックフィルは少し考え、首を振った。
「いや。殺されなかっただけ」
「どういう意味だ」
「たぶん、見れば分かる」
その背後からリルインが姿を現した。
空気が凍った。
ヴェルターが大剣の柄に手を伸ばし、フレッズが腰を浮かせる。ポストマは無言で拳を構えた。
だが、リルインは彼らを斬らなかった。ただ夜明け前の空を見上げ、目を細めた。
「広いのね」
その声に、ポストマの構えがわずかに緩んだ。
フレッズが、ジャックフィルを横目で見る。
「緑芽。その戦乙女は?」
「リルイン」
「名前を聞いたんじゃない。なぜ一緒に出てきた」
「話すと長い」
「短く」
「縛られてたから解いた」
「もっと長く話せ」
ジャックフィルは答える代わりに、深く息を吐いた。
夜明けの光が黒い丘の向こうから差し始めていた。リルインはその光を、初めて見るもののように眺めている。剣を持つ手は自由になったが、彼女の足元にはまだ行き先がない。
エルトランの酒場に戻る頃には、町は目を覚まし始めていた。
扉を開けた瞬間、店内の視線が一斉に集まった。傷だらけの四人と、その後ろに立つ神銀の戦乙女。噂好きの酒場に、これ以上ない材料が放り込まれた瞬間だった。
店主が口を開けたまま固まる。
「……緑芽。その別嬪さんは誰だ」
「僕も今、説明を探してる」
リルインは店内を見渡し、空いている席を見つけると、迷いなく座った。ジャックフィルの隣だった。
「食事を」
「順応が早いな」
「外では、まず食べるのでしょう」
「間違ってはいない」
料理が運ばれてくると、リルインは自然な動作で双刀を抜いた。
酒場全体が凍りついた。
次の瞬間、皿の上の肉と野菜が、恐ろしく正確な幅で切り揃えられる。
フレッズが小声で言った。
「誰か、武器で料理するなって言えよ」
ヴェルターは首を振った。
「俺は嫌だ」
ポストマも静かに答えた。
「私もだ」
ジャックフィルは深く息を吐いた。
戦いには終わりがある。試練にも終わりがある。だが、面倒ごとには終わりがないらしい。
リルインは切り分けた肉の一切れを、彼の皿に置いた。
「食べなさい」
「命令?」
リルインは少しだけ考えた。
「違うわ」
彼女は、自分の言葉を確かめるように続けた。
「私が、そうしたいと思っただけ」
ジャックフィルは文句を飲み込んだ。
広間の番人ではなく、命令に縛られた戦乙女でもなく、リルインというひとりの女が、自分の意思でそうした。ならば、それを拒むほど彼も野暮ではなかった。
彼は肉を口に運ぶ。
「……切り口が綺麗すぎて、味より先に技術が来る」
「変な感想ね」
「よく言われる」
酒場の客たちは、息を殺してそのやり取りを見守っていた。
こうして、エルトランには新しい噂が生まれた。
地下の戦乙女は消えた。
最奥の試練場も、ただの古い広間に戻った。
そして、戦乙女を倒したわけでもない補助術士の隣に、その戦乙女が座っている。
正確には、彼は勝っていない。
彼女も負けていない。
ただ、地下に縛られていた剣が、初めて自分の行き先を選んだ。
その行き先が、たまたま逃げ足の速い歳術士の隣だっただけである。
お読みいただきありがとうございました。
創作の励みになりますので、感想・評価、よろしくお願いいたします。
中ボス的な奴が仲間になる話を書きたかったのです。
敵として出てきたときはやたら強くて、こちらを完全に見下ろしているのに、いざ事情が分かると「この人にもこの人のルールがあったんだな」と見え方が変わる。そういうキャラクターに書きごたえを感じます。
今回は、戦乙女リルインを「倒す相手」ではなく「解放される相手」として書いてみました。
ジャックフィルも正面から勝つ主人公ではなく、逃げて、喋って、観察して、最後に相手の縛り目をほどくタイプです。なので、勝敗としてはかなり曖昧です。本人も言っている通り、勝ったというより「殺されなかっただけ」です。
ただ、その曖昧さがこの二人には合っている気がします。
リルインは負けたから仲間になったわけではなく、初めて自分で行き先を選べるようになった。
ジャックフィルは勝ったから連れていくのではなく、なぜか責任を取らされることになった。
そんな感じの、少し面倒くさい出会いの話でした。
ここから先は、戦乙女が普通の町や旅先でいろいろズレたことをして、ジャックフィルが胃を痛める展開になりそうです。
双刀で料理を切るのは、たぶんしばらく誰も止められません。
お気に召した方は、他の短編『続きそうな短編集』もぜひ、ご一読ください。




