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何もなかった時間3
彼女が読むのは、
戦争の記録だった。
だが、
英雄譚ではない。
勝利の瞬間でもない。
彼女が開くのは、
必ず最後の章だった。
戦闘終了後。
統治移行。
復興計画。
住民の移動。
数字の羅列。
淡々とした報告。
だが、
そこには必ず、
「想定外」が記されていた。
飢え。
混乱。
秩序の崩壊。
それらは、
勝利の代償として
当然のように処理されていた。
フィーナは、
その当然を、
飲み込めなかった。
――決めたのは、誰か。
――死んだのは、誰か。
その距離が、
彼女にはどうしても遠く感じられた。




