オペレーション・クリムゾン・ウォール (Operation Crimson Wall)2
予測通りだった。
最初の一撃は、
低出力だった。
試すための攻撃。
囮艦の一隻が、
正面からビームを受ける。
だが、
沈まない。
爆発も、破片もない。
艦表面を、
赤く淡い光が走っただけだった。
「……通っているか?」
次は、出力が上がる。
再び、沈まない。
艦はわずかに姿勢を崩し、
通信に遅延を入れる。
——効いている。
——もう少しだ。
そう思わせる挙動だった。
攻撃は、次第に激しくなる。
宙域に、
撃たれた光が溜まっていく。
だが、
破壊は起きない。
《敵意思決定、遅延》
ALの声は、変わらない。
フィーナは、
囮艦隊の映像から目を離さなかった。
そこには、
人がいる。
計算は正しい。
それでも、
胸の奥が重くなる。
数時間後。
攻撃は止まった。
だが、
ヴァルク艦隊は退かない。
沈黙が、
宙域に張りついていた。
「……終わったのですか」
誰かが小さく尋ねる。
フィーナは、首を振った。
「いいえ」
モニター上の、
誰もいない空間を指す。
「返します」
「返す……?」
「威嚇です」
《吸収エネルギー総量、
再構成可能》
《一点集中放出、可能》
「実行して」
短い命令だった。
次の瞬間。
宙域の一点に、
赤く収束した光が生まれる。
それは艦でも、兵器でもない。
ただの“点”。
だが、
そこには、
これまで撃たれてきたすべてが集まっていた。
光は放たれる。
破壊はない。
だが、
空間そのものが、
一瞬だけ歪んだ。
観測網に、
測定不能な数値が記録される。
ヴァルク艦隊は、
完全に沈黙した。
——あれが、
——本来、こちらを狙っていた力。
そう理解するには、十分だった。
フィーナは、
それ以上の指示を出さなかった。
攻撃もしない。
追撃もしない。
ただ、
使える力を使わなかった。




