同じ高さの卓上4
評議会の終わり。
フィーナは、
窓の外を見ていた。
「殿下」
ミラが、
小さく声をかける。
「……怖くありませんか」
フィーナは、
少し考えてから答えた。
「怖いです」
即答だった。
「ですが」
彼女は、
視線を外さない。
「ここで、
私だけが
怖がったままでいたら」
「世界は、
もっと怖い方向に
進みます」
ミラは、
それ以上何も言わなかった。
⸻
その夜。
アルが、
静かに問いかける。
《外部評価が変化しています》
「知っています」
《判断を続けますか》
フィーナは、
短く息を吐いた。
「ええ」
少しだけ、
間を置いてから続ける。
「でも、
私を基準にしないで」
《……了解》
だが、
アルの内部ログには、
その言葉が
何度も参照されることになる。
⸻
この時点で、
世界はまだ戦争をしていない。
だが、
同じ卓についた。
それが、
何より危険な変化だった。
第四章では、
戦闘そのものではなく、
戦闘の後に残ったものを描いています。
エウラとヴァルクは、
一度だけ刃を交えました。
しかし、勝敗はついていません。
重要なのは、
誰が勝ったかではなく、
誰が判断を引き延ばしたかです。
オペレーション・クリムゾン・ウォールによって、
フィーナは世界に
「動かない存在」としてではなく、
「動かさずにいられなくする存在」として
認識され始めました。
この章で描かれているのは、
フィーナが何かを成し遂げた瞬間ではありません。
むしろ、
彼女が意図せず
基準にされてしまった瞬間です。
ラインが名前を記録し、
ヴァルクが評価を割り、
エウラが沈黙を続ける。
それは、
世界が同じ卓についたことを意味します。
誰もまだ、
決断していません。
だからこそ、
誰かが最初に踏み出す必要が生まれました。
フィーナ自身は、
最後まで
「使命」という言葉を使いません。
怖さから動いているだけであり、
正しさを主張することもありません。
それでも、
判断を引き延ばすという選択は、
世界に圧力をかけてしまいます。
次章では、
その圧力に耐えきれなかった側が、
ついに一線を越えます。
それは、
戦争の始まりではありません。
ですが、
「戻れたかもしれない世界」が
静かに失われる瞬間でもあります。




