12/15
第四章 同じ高さの卓上
エウラとヴァルクの交戦の後、
国境宙域は、不自然なほど静まり返っていた。
破壊された艦はない。
漂流する残骸もない。
だが、
交戦があったことだけは、
観測記録と沈黙がはっきりと示していた。
ヴァルク艦隊は撤退していない。
かといって、前進もしていなかった。
エウラも同様だった。
軍を動かさず、
しかし警戒を緩めることもなく、
両国の艦隊は、
一度撃ち合った距離を保ったまま、
宙域に留まり続けていた。
それは停戦ではない。
だが、戦闘とも呼べない。
「……妙だな」
評議会の誰かが、
思わずそう漏らした。
⸻
評議会で報告される内容は、
どれも似通っていた。
「ヴァルク軍、再配置なし」
「新規通信、なし」
「挑発行動、確認されず」
数字だけを見れば、
安全を示す報告だった。
だが、
誰ひとりとして
安心している者はいなかった。
「動かない、という判断は
最も読みにくい」
誰かが言う。
それは、
誰の認識でもあった。




