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裁定の器 ― クリムゾンウォール ―  作者: フラグメント水沢


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11/15

何もなかった時間5

周囲から見れば、

フィーナは変わらなかった。


相変わらず、

前に出ない姫。


相変わらず、

本ばかり読んでいる王女。


だが、

小さな場面で、

彼女の言葉が使われることが増え始める。


「今回は、

 少し待った方がいいかもしれません」


「その判断は、

 後からでも間に合います」


地味で、

目立たない修正。


だが、

それがなかった場合の被害を、

後から誰かが気づく。


――あれがなければ、

――もっと悪くなっていた。


フィーナ自身は、

評価された実感を持たなかった。


ただ、

人が死ななかった事実だけが、

静かに積み上がっていった。



回想は、

そこで終わる。


現在のフィーナは、

モニターの前に立っていた。


Crimson Wall の記録が、

静かに再生されている。


囮艦隊。

吸収された攻撃。

一点に返された光。


彼女は、

それを「成長」とは思わなかった。


ただ、


――同じ考え方で、

――より大きな場に立っただけだ。


そう理解していた。


だが、

世界は違う見方をしていた。


フィーナ・アービトラは、

天才に見え始めていた。


それは、

彼女が変わったからではない。


世界の方が、

ようやく彼女の立っている場所に

追いついただけだった。


第三章は、

フィーナが特別な才能を持っていなかった時間の話です。


この章で描かれているのは、

「実は昔からすごかった」という物語ではありません。


フィーナは、

最後まで何も持たないままです。


剣も、

生まれつきの資質も、

誰かを圧倒する力も。


彼女がしていたのは、

ただ、見ていたことだけでした。


判断が下されたあとに、

何が残ったのか。

誰が困り、

誰が黙って耐えたのか。


それを、

誰にも評価されない場所で、

読み続けていただけです。


だからこそ、

彼女の判断は派手ではありません。


勝つためでも、

名を残すためでもなく、

「終わらせるため」に置かれています。


第三章の終わりで、

フィーナ自身は変わっていないと感じています。


ですが、

世界の方が、

ようやく彼女を見つけ始めました。


次章では、

フィーナが動いたから世界が変わるのではなく、

世界がフィーナを基準に動き始めます。


ここから先は、

一人の王女の物語ではありません。


判断の置き場を失った世界が、

どう動くのかという物語になります。

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