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裁定の器 ― クリムゾンウォール ―  作者: フラグメント水沢


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何もなかった時間4

ある日、

評議会の片隅で、

彼女は一つの裁定に目を留めた。


先代が下した、

迅速で、正確で、

称賛された判断。


だが、

その後の記録には、

短い一文が添えられていた。


《当該地域、居住放棄》


それだけだった。


フィーナは、

しばらくその画面を見つめたまま、

動けなかった。


その判断が、

正しかったことは理解できる。


別の選択肢がなかったことも。


それでも、

胸の奥に、

重いものが残った。


――決めなければ、

――まだ、誰も追い出されなかったのではないか。


その考えは、

幼く、無責任だったかもしれない。


だが、

彼女の中に、

確かに残った。



成長するにつれ、

フィーナは学んでいく。


判断しないことは、

常に善ではない。


だが、

判断を急ぐことが、

取り返しのつかない結果を生む場面も、

確かに存在する。


彼女は、

「決めない」という行為を、

逃げではなく、

一つの態度として捉え始めた。


勝たない。

負けない。


得ない。

失わない。


どちらでもない場所に、

人が生き残る余地がある。


それは、

誰にも教えられたものではなかった。


ただ、

記録を読み続けた結果、

自然と形になった考えだった。


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