月の能面
ああ あれは月の小面か慈童か、
天神、白式尉、黒色尉か、、
暮れてゆく、藍色の空が濃くなるにつれて
浮かびあがる白月から
金へ、能面をつけたような曲線が美しい横顔
あなたの笑窪もほくろも涙袋も見えないほどの
月の能面の裏側を思うよ
首を伝い落ちる雫は星になる
笑っているのか 泣いているのか
あなたが生きていてくれた
それだけで わたしは嬉しいのだ
だからこんなに 空を見つめてしまう
秋の日暮れに飛行機と鱗雲の重なり
きっと許されている様な夜の帳に包まれて
行燈を持ったような笑顔が浮ぶ
陰影を増すあなたの涙袋や笑窪の影に
わたしの心は静かに溶け入り眠る