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#2 自由への切符

1週間ぶりの成澤雪です。

最近雨やら風やら、外が騒がしいですね。


前回の1話が予想よりたくさん読んでいただけて嬉しさの余り、急いで、頑張って、空回りして、書き直して···と予定よりかなり遅れて完成した2話です。


ご存知の通り執筆初心者で起承転結が苦手なので、

1話を読んで「わかりにくいな〜」と思ったそこの貴方、書いてる側もよく分からなくなってます。


ちなみに2話も同じくらい分かりにくいです( ˘ω˘ )



さてさて前置きはこのくらいに、


最後まで読んでくださると嬉しいです。




自由



  自由



 

         自由 ?

 


 

本当にそうなのか


 僕にはまだ分からない



 

 やっぱりまだ少し怖い


 

 

でも踏み出したからには

走りきらなきゃ



これは僕の人生だ

 

ゲームとは違う

 

セーブもコンティニューも

ない



だから



 あの家にも


 あの日常にも 



帰らなくていいんだ。

 

 

 

窓から見慣れたラーメン屋が見える。

去年の冬頃に駅前に出来て、茜と「受験が終わったら行こう」と話していた店だ。


結局、僕の受験は大失敗してその話は自然消滅した。

今では高校への行き帰りのバスで、店と看板の隣に並ぶ行列を嫌という程見ていた。


ガラガラッ 

  

バスが止まった。

降車ドアが開いた音に僕はハッとして他の乗客の間を縫って降りる。外はまだ明るい


駅構内の改札に行って路線表を見上げる。

定期は使えないので切符を買わなきゃいけない。そのためには行く先を決める必要がある。


(一番遠いところとか···

人が多くて、僕でも紛れ込めるような場所···

どこか、どこか···)


プルルルルッ···


「うわっ!!」


思わず驚いて上げた声に周囲の人が目を向ける。


「あっ電話·····す、すみません···」


(あ〜···はっず········。

通知切るの忘れてたのか、朝の僕のバカ!

学校やバスで鳴ってたらどうなってたことか···)

 

一度改札から離れて人気のない広場のベンチに座る。

リュックを漁っている内に着信音は鳴り止んだ。


(もしかして、家族の誰か?)


額を嫌な汗が伝う。

 

不安な心に「大丈夫、外はまだ明るいんだからなんとでもごまかせる」と言い聞かせて、自分のスマホを手に取った。

 

通知が不調なのか、着信履歴はない。

 

3年以上働いてる僕のスマホはたまにこういうことがあったので「またか」と思うだけだった。


「どうせなら調べてから出発するか」


検索アプリを開いて『家出_行先』と検索してみる。

すると一番上に先週の記事がでかでかと出る。見出しの文は『家出した青少年が集まる場所_タコチョー(縦ノ横町)で犯罪者逮捕_行先のない子供を···』と続いた。


「うへぇ···」


たてのよこちょう、通称タコチョーはテレビでたまに聞く繁華街の街と駅の名だ。

確か家出した中高生がたむろしていて、警察による補導や少年院行きは常、下手したらこの記事に載ってるみたいに犯罪者に誘拐されることもあるらしい。


「·······とりあえずタコチョーは無しだな。

家出した子達に紛れるなんて冗談じゃない」


「中高生」とか「青少年」ということは、僕より年下の中学生の子も当然いるだろう。

 


僕は他人が嫌いだ。


 

同い歳も、そうでない歳の人も、

 

年上は姉のせいで昔から嫌いだが、それよりも年下の方がよっぽど扱いずらくて嫌いだ。


それに中学生と言えば反抗期や思春期に入ったばかりの不安定な時期で、とにかく子供っぽくて、嫌な奴が多い。

 

こう思うのは多分、僕の中学時代が酷かったからだと思う。良い思い出なんて、あってないようなものだ。




僕はため息を吐いてうつむく。

ひとしきり息を吐いたら、画面をスクロールして他の記事やサイトの見出しを見た。


『家出でネカフェは定番?警察の連絡網』


『友達の家は長居出来ないー親戚も同様』


『家出した子供の行方不明率···』



「こんなんが見たいんじゃないんだよ!」


少ないとはいえ周りに人がいるので、僕は小声で叫んだ。


探しても探しても、良さそうな記事は無い。

家出について協力的なサイトの情報もアドバイスは全て虐待を受けている小中学生や、10代の女の子向けの。

どれも僕がその方法に則って行動すれば結局は警察に見つかるのが予想できる。ちゃんと考えたわけではないが、直感でダメだとわかる。


それらの記事やサイトは僕のインターネットへの期待を打ち消した。



(けどまあ、わかったことはある。

有名なタコチョーみたいな場所や、家出先の定番と呼ばれる友達や親戚の家とか、場所によっては周りの人に通報される、女子にとっては何でも危険···僕、男でほんとに良かったな)


自分の性別が男で良かったとを、こんなネガティブな理由で思うとは予想したことがなかった。


「はぁ···とりあえず滝扇にでも行くか」


滝扇はここから一番近い「都会」だ。


ほとんど姉の趣味のグッズを買いに、特に「おひとり様一点限り」系の付き合いで行き慣れてるので、行き方はもちろん、監視カメラのない路地裏の名店も知っている。


「まずは···探索と買い物、そんで泊まれるところ探してみるかぁ」


僕は伸びをして、立ち上がる。

足取りはさっきより重いが、とりあえず動かなければならない。

改札に足を向けた時に大事なことを1つ思い出した。


僕は自分のスマホを手で割って、屈んで探さないと見えないようベンチの下に置いた。


「これでよし、と」


なんだか少し清々した気分だ。


僕は現金で切符を買い、改札を通った。


 

周りを見回しても、知り合いはいない。


改札を出たところで監視カメラに気づいて思わず帽子を深く被った後は、できるだけいつも通りに歩いた。


(なんだか犯罪者になった気分だなぁ···。

家出してすぐの僕に、警察が監視カメラ使ってまで探すわけないのに)


中学の時、連休明けに家出したと言う友達の話を思い出す。

家出したのは一晩だけで、駅で買い物して歩き疲れて電話ボックスで親に謝罪の電話をしたら警察が迎えに来たらしい。

ただ、迎えの警察の人は電話ボックスの近くにいた家出少年には気づかず、彼から声をかけるまで十数分ほど辺りをキョロキョロしながら歩いていたという。つまり一晩くらいなら監視カメラなんて大層な物は使わないし、警察も顔の判別が出来ないのは確定なのだ。


そもそも誰かにさらわれた訳でもないのに、家出した高1男子を探すのに警察が監視カメラを使う可能性は低い気がする。


まあ、それでも緊張と不安で顔を隠したくはなる。



階段を早足で降りて、ちょうど来た「滝扇行き 準急」に乗る。


相変わらず混んでいる8号車で、リュックを前にして手すりに掴まり、滝扇に着くのを待った。

 


車内は、騒がしいようで静かだ。

遠くの座席には高校生くらいの子や、子連れの親子もいるが、僕の周りにいる人は皆大人だ。


優先席に座る疲れた顔のサラリーマン、

向かいの降車ドアの傍にOL3人組、

目の前には音漏れしたヘッドホンをする男の人や、少しキツイ香水の匂いを漂わせる女の人がいる。

そのすぐ隣りには片腕にドクロの刺青がある青い髪の男の人がいた。


 

皆、スマホを片手に下を向いている。


 

僕は何となくリュックに顔を埋めた。



苦しくなって、マスクは途中で外してしまった。



  

20分して滝扇に着いた。


さっきの駅とは違い、滝扇は電車から出ても満員電車並に人が溢れかえっている。



「やっぱ、都会だなぁ···」


うなだれながら滝扇店のコーヒーショップを横目に改札を通った。


僕は服を買いに駅前のビルに入り、2階の服飾店へ向かう。


人は多いが、外ほどではない。


適当にシンプルな黒いパーカーや白のTシャツをとって片っ端から急いで試着し、リュックの中の着替えと合わせてみたりして、着れたサイズのをカゴに入れた。


リュックから直に札束を出して払えば怪しまれるのは明らかだったので、僕はレジに行く前に試着室の中で札束の一つをバラして何枚かを財布に入れておいた。



そうして難なく買い物を済まし、1階のトイレでタグをとって服を上下着替えて見ると案外いい感じだ。


誤って落とす気がして帽子はリュックにしまった。代わりに黒いノースリーブの上着を羽織って、フードを被ってみると帽子よりも不審に見える。だが駅前の人混みにはこんな格好の人はそれこそ星の数ほどいたので、フードを被ることにした。


目指すは大学生。見かけだけでも20歳か、少なくとも18歳には見えるように着こなせるよう、人がいないのをいいことにトイレの鏡の前で何度も上着とパーカーを脱ぎ着して鏡と睨み合った。


 

気が済んだら近くの路地に入って、小さな喫茶店に入る。


近くに交番などなく、人も少ない。

小綺麗で素敵な店だ。


前に姉と来た時は中3の小遣いに対して値段が高いと思っていたが、今はなんて事はない。


窓辺の席に座ると、前来た時のことを思い出す。料理が美味しかっただけに、お金を貯めてまた来ようと決めたんだった。


メニューを開くと小さくお腹が鳴った。


(あ そうだ、昼にカフェラテ一杯飲んだだけで何も食べてなかったんだ)


少しは緊張が解けたのか、食欲に任せてコーヒーにナポリタンセット、デザートにシフォンケーキまで頼んで、一息ついた。


レシートの金額は今の小遣い2ヶ月分。



テーブルにオレンジの光が差している。

窓から、ビルの間で夕日が沈んでいくのが見えた。


 

赤くなった空に黒い鳥の影がいくつも通り過ぎて行く。



「僕、自由なのかなぁ······」


 

冷めたコーヒーの最後の一口を飲み込む。


会計を済まして外に出ると、不思議なことに次にどこに行くか、これからどうするかなんて頭に無かった。


ただ空を眺めては下を向いてを繰り返して、コンクリートの上を歩く。


足は勝手に人気のない暗がりに進む。

頭が働かないので、身体は足のむくままに勝手に動く。


(あれ···?なんでこっちに歩いてるんだっけ

お腹は膨れたけど、もうすぐ暗くなるし···

夜になる前に寝床を探さなきゃ。

···でもどこで?どこなら僕は安全なんだ?) 


 

気づくと小さな社の前にいた。

街でたまに見かける、路地裏の小さな神社のような物だ。高さは僕より頭二つ分は小さい。


お供え物らしい花はしおれかかっているが、枯れてはいないし、鳥居の赤も少し禿げているが、手入れされているようだ。



(導かれたってことかな···。

僕、神様なんて信じてないんだけど)


多少の善行を積んだって報われない。

信じたって良いことは無い。

祈って願って幸せになるなら、僕は今頃茜とテーマパークにでも行っているか、とっくに死んでいる。




周りに人はいないし、風も吹いていない。

遠くで騒がしい"都会の音"がするだけだ。


「···祈るか、さいごだし」


僕は社の前にしゃがみこんで手を合わせる



「あの人たちに見つかりませんように、

 無事に逃げきれますように、

 もう少し好き勝手できますように。

 ············································

 ············································

 ······································あと

 ちゃんと、死ねますように。」


 

目をギュッと閉じて念を送る。

神様なんて信じてなかった、けどさいごくらいは信じてみたい。それで願いが叶うのなら。



「·············お願いします」



最後のダメ押しをして立ち上がると、

身体がいくらか軽い。


リュックは相変わらずの重さだが、足は僕の意志通りまともに動いた。


(やっぱり、妙なことになっていたのかな。············いやいや、気のせい気のせい···)


僕は理系全般嫌いだが、非科学的な物よりは科学的な方を信じる。


だから今回のことも、気のせいにした。


祈ったついでにお賽銭かお供えをしようとリュックを漁る。辺りに賽銭箱はないし、お供えできるような品物もなかったのでチョコレートの袋から個包装されたミルクチョコを一つ、花の隣りに置いてみた。



 

 

「それなら虫が寄らなくていいね」


 

(ああ、確かに···)



 

思わず頷いた後に気づいた。



 

 

僕じゃない声だ


 

後ろに誰かいる



誰だ


なんで僕の後ろに


  

  

その声は大人の女の人の声だった。



心の中で急いで深呼吸して、思い切って振り返ると、茶髪のOLらしきスーツ姿の人が手ぶらで立っていた。



僕は震えを堪えて睨みつけた


(誰だ?警察じゃない、家族の知り合いでも無さそうだ、でも立ち去る気配は無いし···)


僕が睨みながら後ずさると、すぐ後ろに社があった。逃げられない気がした。



「そんな警戒しないで。不審者じゃないわよ」


女の人は上着の胸ポケットから名刺を出して僕に見せた。


「····?」


名刺を見ると、「社長」の文字が真っ先に目に入った。


「アライカンパニーの社長、麤霞です。

 ただ今営業中!」


「あ、あらい···?」


「珍しいでしょ?鹿・鹿・鹿って書いて麤、カスミ草の霞で、あらいかすみ。

よろしくね」


彼女は名刺を僕に差し出した。


僕が黙ってそれを見ていると、彼女は笑顔で僕の上着のポケットに名刺を突っ込んだ。


「うわっ!ちょ、あの···!」


「いいからいいから。あなた、困ってるんでしょ?」


僕はポケットから名刺を出す手を止めて、彼女を見た。さっきと目つきが違う


「辛くて苦しくて·····勇気を出して逃げたはいいけど、どこにも行き場がない。

そうじゃない?」


「な、んで···それ······」

 

「ふふ、うちはそういう子の味方よ。

もし頼りたくなったらその住所に来て。

まあ···お金はかかるけど、いい仕事するわよ?」


彼女は手を振って去っていく。

長い髪を風になびかせながら悠々と歩く後ろ姿が小さくなって、やがて見えなくなると、僕はポケットから名刺を出した。


『あなたの味方、アライカンパニー。

 社長 麤霞』


裏には住所と電話番号が書かれている。

ここから歩いて30分かそこらの場所だ。



どうする




信じられる?



金ならある



あの人が思ってるより多く


 

 

危ない橋だ




騙されたら?




犯罪に関わって捕まるかも




警察に引き渡されて逆戻りかも



 



「··············どうする···?」



僕は頭を抱えてしゃがみこむ。



リュックの重さは変わらない。

札束はまだまだある。



ホテルやネットカフェに長居すればやがて店員が通報して捕まる。


野宿は出来ない訳では無いが、寝ている間にリュックを盗まれたり、さらわれたりしたらおしまいだ。


 

かと言って、この街で死ぬ訳にはいかない。



まだやりたいことが残ってる。

 

 


悩んでいると「カァ」と近くで声がする。


見上げれば、すぐ近くの室外機の上でカラスが鳴いていた。



「···行ってみるか」




立ち上がると、カラスは飛び去って行く。




赤かった空は紺色になりかけていた。



 


後書きに書くこと無くなって頭抱えてる成澤です。



「さいごに自由を」の第2話を最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

 

前回の後書きに「どこまで書くかわからない」などと書きましたが一応報告すると「さいごに自由を」は 5話 で終わります。


下書きはできたので、モチベーションがある時に少しずつ書いていけたらいいなと思ってます。


 

良ければまた読みに来てください。

成澤でした(*_ _)

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