魔法使いの贈り物
初めまして深神鏡と申します。
今回は超短編掌編小説です。(SS)
短いお話を書くのが好きで
今回の物語はPixivのコンテストに応募したものです。
落選したのでこちらの方でも公開する事にしました。
深神鏡のオリジナルの
ハイファンタジーなSSをお楽しみください。
『極上の夢を貴方へ贈りましょう』
不眠症のお姫様へ
魔法使いはそう約束をした。
事の発端は
数ヶ月前から
我が王国のお姫様が
悪夢に悩まされて
眠れなくなっていると
王族専属の王宮魔法使いへ相談がきた。
お姫様はこの国唯一の王女様。
何かと苦労が絶えないせいで
心労が祟ってのことかもしれない。
虚な瞳で青白い相貌をした
美しいお姫様の横たわる寝室で
魔術と魔法薬による
健康診断を行った。
お姫様の胸元をはだけさせて
その手前で空中に魔法陣を描き
呪文を詠唱して魔力を発動させ
胸に巣食う悪夢の原因を調べる。
魔法陣が淡い光を放つと
胸の中に渦巻く不安や悩みが
暗い紫の炎となり燃えあがる
これは恋の病だ……
お姫様は私を愛している。
魔法使いはその炎を掌の上に
巻き上げ集めると
呪文を唱えて己の魔力で
中和した。紫の炎は
赤や黄色や青やピンクの色鮮やかな
花弁に変化してひらひらと舞う
美しい蝶に変わると
空中へ溶けて消えた。
お姫様の顔色が安堵で柔らぐ。
『胸の奥が苦しかったのが、嘘みたいに楽になりました』
何をなさったの?
そう問いかけるお姫様を
魔法使いは優しい眼差しで見つめて
人差し指で口を押さえ言いました。
『貴方様の心の憂いに少し魔法をかけました』
お姫様は憂いげに長い睫毛を伏せて
貴方にはいつも感謝してもしきれませんと
礼を述べた。
魔法使いは透明度の高い夜空の瞳で
お姫様を見つめた。
『私の大切な姫様…
お苦しそうな姿を見るのは
胸が痛みます』
王女様は決意したように
魔法使いの瞳を真っ直ぐ見つめた。
見つめ合うお姫様と魔法使い
2人は互いに淡い恋心を抱いている。
しかし、あまりに身分違いだ。
言葉にできない想いが募り病になったのだろう。
何か言おうとして口を閉ざしたお姫様。
2人は切ない愛惜の眼差しで
見つめ合う。
魔法使いはそっと
お姫様の手を優しく握って
耳に囁いた。
せめて、
夢の世界で
お逢いしましょう
『貴方に幸せな眠りを約束します』
お姫様は自分の手を優しく握る
魔法使いを見上げて
花が綻ぶように
ふわりと微笑んだ。
とある王国の
魔法使いとお姫様の恋物語
2人は月と星空の広がる
夜の世界で眠る頃
幸せな夢で抱きしめ合うのでした。
身分違いの恋は大変ですね、
二人が幸せになりますように。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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