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召喚勇者は天狗様っ。

もしも天狗が異世界召喚されたなら。

 王城の大広間に、巨大な魔法陣が光りかがやいた。

 周りを取り囲む魔術師たちが、低い声で呪文を唱えている。


「ぐふふ、そろそろか?」

 太った王様が一段高い王座から言う。

「そろそろですねえ」

 ニヤリ

 痩せぎすの宰相が答えた。

「そろそろだ」 

 白い鎧を着た初老の男性が、周りの騎士に言った。

 腰には白い柄の大剣を下げている。


 魔法陣の中に、太い光の柱が立つ。

 光の中には、黒い人のシルエット。


「よしっ、成功だ」

 王様だ。

「今度の勇者は少しは使えるといいですね」

 宰相である。

「使えなければ、前の勇者のように処分するだけですな」

 初老の騎士だ。

 チャキリ

 腰の剣を鳴らした。


 勇者を勝手に召還して、兵器のように使い捨てる、”使い捨て勇者召喚”である。


 光が消えた。

 魔法陣の真ん中に男性が一人立っていた。


「ん、なんだ?」


 男性に、かすみのようなものがかかっていてはっきり見えない。


 ()()()()()()という感じだ。


「まあいい、”隷属れいぞくの魔法”をかけろ」

 宰相が言う。

 男性の首の周りに禍々(まがまが)しい黒い輪があらわれ、首に張り付いた。


「なんだ、これは」

 男性の声だ。

 ”隷属れいぞくの魔法”に翻訳ほんやくの機能もついている。

 

「名を名乗れっ」

 初老の騎士が叫んだ。

 名を知ることにより、”隷属の魔法”の効果が上がる。


 周りの魔法陣を見ながら、

「ははっ、”界渡りの術”か?」

「えらいお粗末な術だなあ」


「名乗れっ」

 初老の騎士が再度叫ぶ。


「ふんっ、名乗ってもいいのか」


「生意気なっ、やれっ」

 初老の騎士が魔術師に指示をする。

 パリパリイッ

 首の周りの黒い輪がスパーク。

 男性に激痛を与えたはずだ。


「ふうむ、まあいいか」

 男性が何事も無かったように言う。

 ―カンッ―

 床を木で叩いたような音がする。

 男性の周りの霞が少し晴れた。

「鞍馬の山の奥」

 ―カンカンッ―

「僧正ヶ谷に棲む」

 一本足の高下駄で、床にカンカンと音を立てる。

 ―カンカンカンッ―

 霞がさらに晴れ、山伏の姿が見える。 

「鞍馬山僧正坊」

 ―カンカンカンカンッ―

「鞍馬天狗、もとい」


「”鬼一法眼”とは俺のことだっ」


 はっきりと姿が見えた。


 天狗は神だ。

 人に認知されて初めて現世で存在が確定する。

 バサア

 背中に広がるカラスの翼。


「なっ、貴様っ、悪魔を召喚したのかっ」

 初老の騎士が、背中の黒い翼を見ながら言う。

 ブウンッ

 初老の騎士が、腰の聖剣を抜き斬りかかった。


 スッと、天狗の男性が避ける。

「おっ、やるじゃねえか」

 頬に一筋の切り傷がついた。


「剣聖様の剣をかわした?」

 周りにいた騎士たちの驚愕の声。


「ちょっともんでやるか、”牛若丸”以来だな」

 初老の騎士に、人差し指をちょいちょいと動かした。


「なっ、生意気なああああ」

 初老の騎士が叫ぶ。


「ははっ、増長、傲慢ごうまんは天狗のさがよっ」

「天狗の鼻を折ってみよっ」

 挑発するように笑った。


 初老の騎士が、大上段にかまえた聖剣に白い光が集まる。


「ふんっ、来いっ烏丸」

 何もないところから、”太巻き“を取り出した。

 大太刀の刃。

 それと同じくらいの長さの槍のような柄。

 刃は漆黒である。


「滅びよ悪魔っ」

聖撃(セイントバッシュ)っ」

 強烈な聖属性攻撃。

 光を浴びるだけで並の悪魔は消滅する。


 カンッ

 片手で剣を受けた、が、聖なる光は全身で受ける。


「ば、馬鹿なっ、無傷っ」

 初老の騎士の驚愕の声。


「あ~、一応俺って、仏法の守護者だから」 

 空気イスで、片足を片膝の上に乗せた体勢で言う。


「み、認めるかああ」

 ――こんな若造に、聖騎士であり国一番の剣聖でもある私が負けるなど

 キンキンキンキンキン

 聖剣を使った連撃。


「ははっ、がんばれ、がんばれ」

 全ての攻撃を片手で、軽い感じで受ける。


「くうううう」

 悔しそうな表情。


「ほれ、仏罰だ」

 ピピッ

 銀線が二閃。


「ギャアアアア」

 聖剣ごと両腕が斬り飛ばされ、宙に飛んだ。


「後で塗っとけよ」 

 血の海に沈んだ初老の騎士に、ハマグリの貝殻に入ったぬり薬を渡す。

 ”河童の傷薬”だ。

 腕はひっつくだろう。

 まあ、仏の慈悲だな。


「き、き、き、騎士団よ、奴を倒せえ」

 王が腰を抜かしながら叫んだ。

 

「う、うおおおおお」

 周りにいた二十人近い騎士たちが一斉に襲いかかってきた。


「はああ、羽団扇(うちわ)

 何もない所から団扇うちわを取り出した。

 天狗の扇と呼ばれるものである。

 無造作に降ると周りに丸く炎の壁が出来た。

「”安元の大火”を起こしたのと同じもんだぜっ」

 天狗の火炎だ。

「俺は、無駄な殺生はしないんだよ」

 何せ仏教系の神。

「じゃあな」

 カラスの翼をひるがえし王城から飛び去った。


「むっきいいい」

「おのれえええ」

 王と宰相が地団駄を踏んで悔しがる。


 しばらくした後、今度は、”九尾の狐(妲己、白面のもの、もしくは玉藻の前)”を召喚した。

 

※酒池肉林

「うぎゃあああ」

 初老の騎士は、聖騎士だ。

 ナマグサ、ダメ、ゼッタイ。

※炮烙

「あつっ、熱いいいいい」

 王様である。

※たい盆

「蛇がっ、さそりがあああ」

 宰相だ。

 

 が、王都で行われ、王国はあっさり滅亡したのである。







王国は、次は座敷童を召喚する。

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