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ケラサスの使者  作者: 岡倉桜紅
第二章
91/172

38 書斎にて

アメの一族の山のある西ブロックから、依頼のあった南ブロックに直接通じる列車は通っていなかったので、西ブロックの主要都市であるジテルペンの駅から小雪ラインで中央ブロックのアルタキセルに向かい、そこからいくつか列車を乗り継いでクロルという田舎の小さな町に着いた。南ブロックは、起伏の大きい地形が特徴的で、車窓からは池だか湖だか、巨大な水たまりの水面が何度も見えた。小高い場所にあるまん丸な湖で、急な崖がその水を溜めている。イオはカルデラ湖のようだと思った。もちろん、楽園はカプセルでおおわれていて、地下には都市が発展しているので、地中深くのマグマを蓄えているマントルもなく、本当に火山活動が起きてできたカルデラ湖であるはずはない。おそらく、保存都市のために作られた人工のカルデラ湖風の湖に過ぎないのだろう。

イオはクロルの町の駅に降り立った。完全な無人駅ではなかったが、駅員と列車を待つ客が一組だけしかヒトは見られない小さな駅だ。道順をメモした紙を頼りに山の間を歩いていく。細いが、よく舗装されて手すりも設置してある、山肌に沿うような階段を上り、いくつかの分かれ道で曲がると、大きなカルデラ湖を臨む大きな屋敷が現れた。大正ロマン風のレンガの洋館だ。

「ごめんくださーい」

イオはカバンから眼鏡を取り出して掛けてからドアについているベルを鳴らした。一応ラジオで容疑者として報じられて日が浅いので、変装のつもりだ。眼鏡をしているだけで驚くほど気付かれない。しばらくすると、一人の老人が扉を開けた。白髪の髪をワックスでオールバックに撫で付け、瞳は橙色だ。上品なワイシャツにスラックス、緑色のベストを着ている。

「よく来た。お前がイオだな?入ってくれ」

「お邪魔します」

玄関ホールは床が大理石で、天井が高く、派手なシャンデリアがぶら下がっている。玄関の扉をくぐってすぐ目に入る立派な階段を上り、老人の後について二階に上がる。老人は70歳は過ぎているように見えたが、足腰はちゃんとしてるようで、危なげなくすたすたと歩き、背筋も伸びていた。階段を上りきると、玄関ホールを見下ろせるちょっとしたスペースがあり、カウチが置いてある。二階の廊下にはビロードの赤いじゅうたんが敷き詰められ、いかにもお金持ちの邸宅、といった風情だ。廊下の壁際には等間隔にガラスケースが設置され、美術品でも入っているのかと思いきや、顕微鏡やストームグラス、鉱物のサンプルなどが展示され、まるで博物館のようだった。

「ここだ。入ってくれ」

老人が一つの扉を開けてイオを招き入れる。

「失礼します」

その部屋は、壁一面に天井まである大きな書棚と、ソファーがいくつかとローテーブルがある書斎だった。一人掛けソファーに老人が座っている。この老人もまた、白髪のオールバック、橙色の目、上品なワイシャツとスラックスを着ており、顔が出迎えてくれた老人と瓜二つだったが、ただ一点、着ているベストの色が赤色だった。赤色のベストの老人に勧められてイオはその向かいの長いソファーの端に腰を下ろす。

「飲み物を持ってくる。その辺でくつろいでてくれ。ジョン、相手を頼むぜ」

緑のベストを着たほうの老人は部屋を出ていった。

「素敵なお屋敷ですね」

イオは書棚に並ぶ古びた本を眺めて言った。

「だろ?楽園中でここにしかない貴重な本のコレクションもあるっていう話だぜ。まあここは俺たちの屋敷じゃねえんだけどな」

赤いベストの老人、ジョンは肩をすくめると、砕けた口調で気さくに言った。

「こちらはイチの一族の別邸、ということでしたよね」

イオは事前に調べてきたデータを思い起こす。イチの一族の本館は南ブロックの主要都市、ホルトンにあるが、大きく、力を持った一族の場合、内外の紛争がいろいろ起こってしまうため、何等かの事情で本館にいられなくなった人物が身を隠して安全に暮らせるように、ということで人里離れた田舎に別邸が建てられたらしい。

「そうだ。先月まではハルミって女とその執事が二人で暮らしていた。で、先月、ハルミが死んだ……」

ジョンは目を伏せた。

「それは、ご愁傷様です」

「すまねえな。暗い気分になっちまう。あいつ――ジョナサンが茶を持って帰ってきたら話すが、ギモン解決屋のあんたを呼んだのはハルミが関係してる」

「ハルミさんの娘の父親のほうを探すんですよね」

「ああ。俺のギモンが暴走しちまうからな。ちゃんと探し出してくれよ。期待してるぜ」

「頑張ります」

イオは神妙に頷いた。ドアが開いて緑色のベストの老人、ジョナサンが入ってきた。

「まずは飲み物でも飲もう」

ジョナサンはローテーブルにグラスとワインのボトルをどんと置く。双子の老人は我先にとワインをグラスにどぼどぼ注ぎ、ぐいと呷った。

「ふう、ひとごごちだぜ。やっぱこれはうめえな」

「あの、僕は一応未成年なのでワインは遠慮しておきます」

「ああ、そうか。じゃあこっちのレモネードでも飲んでくれ」

イオはグラスに注がれたレモネードを一口飲む。高級な味がする、気がする。

「さて、依頼を始めよう」

ジョナサンは真剣な顔になって言った。

「自己紹介だ。俺はジョナサン。こっちは一応兄のジョン。一応っていうのは、どっちが兄か昔じゃんけんで決めて以来、そういう設定だからだ。本当のことは知らない。俺たちの親父とおふくろはもう死んじまったし、真相は神のみぞ知る、だ。噂ではジョンの方が俺より2秒早く生まれたって話だが、誤差だろ。俺たちは東ブロックに屋敷をもつ、リンの一族の末端の方だ。金持ちではあるけど、力はない、ただの自由人だな」

「西ブロックに拠点を置くギモン解消屋のイオです。チャレンジャーで、王を目指しています。よろしくおねがいします」

イオは二人と握手をする。「さて、」とジョナサンは口を開く。

「まず、俺たちの依頼は、元イチの一族の娘のハルミの娘、イルマの父親を探し出すことだ。別の部屋にいるから後で呼んでくるけど、今この屋敷はイルマのものなんだ。一か月前、ハルミは病気で死んだ。70歳、静かな最期だったみたいだ。ハルミは過去のある出来事のおかげでイチの一族の本館を追われて、執事とたった二人でこの別邸に住んでいた。ハルミがこの別邸に住んでいたのは20歳から70歳までの50年間で、その間、ハルミは誰とも結婚をしなかったはずなんだ。俺たちはハルミは一生独身を貫くと信じていた。俺たちはただのハルミの友達として、時々文通をしたり、屋敷にこっそり遊びに行ったりしている仲だったからな。しかし、葬式の日、突然娘が現れた。ハルミはもともとよくモテたし、遊びでつきあっていた男はたくさんいたと思うんだが、その中から特に一人を選んで子供を作った。ハルミには愛したヒトがいたんだな。ジョンはそれでショックを受けちまった」

「別にそんなにショックじゃねえよ。そりゃあ、あんなにモテてたら好みの男にも巡り合えたさ。俺はただ、ハルミが愛してくれたのにその男が葬式に来ないのがおかしいって言っただけだ。あんないい女と結婚しといて葬式に来ないだなんて、男の薄情さ加減が頭に来たんだよ。見つけ出して一発文句を言ってやらねえと気が済まねえんだ。ギモンがもやもやだ」

ジョナサンの説明にジョンが訂正を入れる。

「ああ、まあ、細かい理由はともかく、ジョンはイルマの父を特定してハルミの名誉を守ってやりたいってことだ」

「娘のイルマさんは母の葬式まではどこで何をしていたんですか?この屋敷に住んでいたなら、周りやあなたたちに気付かれてもおかしくないと思いますが」

イオは尋ねた。ジョンが答える。

「イルマは幼少期は別の家族のもとで育てられ、15歳で家を出てガクシャの道を進んでいたらしい。で、一か月前、急に実の母からの遺言が届いたというわけだ」

「母が死ぬ時まで娘の本当の身元を隠しておくなんて、どういう理由なんですか?」

今度はジョナサンが答えた。

「いや、たまたま死んだあとに手紙が着いたから遺言になってしまっただけで、ハルミ自身はこのタイミングで娘に本当の身元について打ち明ける手紙を送ろうとは考えていたようだ。イルマが受け取った手紙がここにある」

ジョナサンはローテーブルの天板の下を探った。小さな引き出しがついていて、その中には手紙が入っていた。白無地の便せんに几帳面で達筆な字が並んでいた。ジョナサンは手紙を音読する。

「私の愛する娘へ。こんにちは。突然手紙を送って驚かせてしまったかしら。私はイチの一族の20代目、末娘のハルミで、あなたの実の母親です。あなたはイチの一族の血を引いています。今まで隠していてごめんなさい。でも、あなたを守るためだったの。私はとある事情で誰とも公に結婚することはできなくなってしまったの。だから、娘がいると知られたら幼いあなたに危険なことが起こると思った。ごめんなさい。

そして、20歳の誕生日おめでとう。あなたはもう立派な大人よ。あなたには自分の家柄を知ったうえで生き方を選択すべきだと思うの。イチの一族のメンバーであると公表してもいいし、この手紙を見なかったことにして今まで通り生きてもいいわ。もし、イチの一族に興味があれば一度別邸に来て、このどうしようもない母親に成長した姿を一目見せてくれたらうれしいわ。……あなたの母、ハルミより」

「……それで、これを読んだイルマさんはどうしたんですか?」

「葬式に来た。そして俺たちに出会った」

自分には本当の母親がいて、会えるかと思ったらもう死んでいただなんて悲劇的だ。イオはイルマというまだ見ぬ女性に同情した。

「ん?ちょっと待ってください。ハルミさんは今年、70歳でお亡くなりですよね。でも、今年イルマさんに届くように書かれたこの手紙にはイルマさんは20歳とあります。ハルミさんは50歳のときに子供を作ったんですか?」

「まあ、そういうこともあるだろ」

「うん、別に珍しくないな」

驚くイオに、双子は平然と頷く。そうか、楽園では黒の塔で夫婦のDNAを器と呼ばれるヒトの体に入れて赤ちゃんを文字通り『作る』わけだから、年齢は別に関係ないのか。

「あ、いや、そうですよね。普通でした、あはは」

イオはごまかす。この時代のトイロソーヴの生態は古代のエンシェの常識が通用しないことがままある。

「それで、ハルミさんは生前すごくモテていて、父親でありうる良家の男性はたくさんいたんですよね。父親を捜すとなると、良家のヒトに聞き込みをしたりする必要が出てくるかと思うんですけど、イルマさんは自分がイチの一族だってことを発表してこれから生きていきたいんですか?」

ジョンの、ハルミのために父親を特定したいという気持ちはわかるし、この依頼はイルマ本人ではなく、双子からの依頼だが、いままで身元を隠してきたイルマの今後の人生に大きく関わる。イルマが今まで通り、良家とは関係のないところで生きていきたいのなら、本当の父親なんて知らなくてもいい。むしろ、知らせない方が幸せに生きていけそうな気もする。

「それが……」

双子は顔を見合わせた。ため息と一緒に吐き出すようにジョンが言った。

「イルマは良家に自分がイチの一族のメンバーであることを公表し、さらには50年前に母がやったように屋敷でたくさんの客を呼び、パーティーを開いて良家の恋人を作りたいと言った」

「はあ?こ、恋人?」

急に思いもしなかったような角度からの言葉を言われてイオの声が少し裏返る。

「ああ。50年前、ハルミが20歳になったとき、イチの一族は本館のほうで盛大なパーティーを開いた。まあ、ハルミの結婚相手を探すための婚活パーティーだな。良家はどこも優秀な人材を奪い合ってる。子供が20歳になる年は、その一族がパーティーを主催するんだ。若いカップルは一族同士のコネにもなるし、強力な一族の娘と自分の息子をくっつけたいと思う良家の者は大勢いた。でも、普段の婚活パーティーとそのときのパーティーは少し違ったんだ。ハルミは五人兄弟の末っ子だった。末っ子は嫁に行かせるだけになることが多いから、本来末っ子が20歳になった一族がパーティーを主催することはあまりない。末っ子は同世代の誰か男が20歳になったとき開かれるパーティーに参加させる。でも、ハルミの父はハルミのために主催した。なぜか。それは、ハルミがモテすぎたからだ」

「モテすぎた?」

「そうだ。ハルミがモテすぎて、婿入りしてもいいからハルミと結婚したいという男がたくさんいたんだな。ハルミの父はそれを利用して一族の力を強めようと考え、パーティーを主催した」

「それはすごいですね」

「でも、パーティーに来るヒトの中には、結婚させてやってもいい、みたいなイチの一族の高慢な態度が気に入らない連中もいた。ハルミには実は許嫁(いいなずけ)がいて、その情報を得たヒトが、ハルミがただ男遊びをしたいがためにパーティーを開いたという噂も流した」

「許嫁がいたのにパーティーを主催したハルミさんのお父さんが一番駄目じゃないですか」

「そうだな。でも、そういう噂を流すのは決まってハルミがモテているのをひがんでいるヒトだから、噂は大きくなり、尾びれがつき、パーティーでは事件も起きた。ハルミは実の兄弟からも嫌われて、許嫁とも破綻した。それで、身を隠すことになったんだ」

「それは、散々ですね……」

イオはハルミという、モテたがために不遇な人生を送ったヒトに思いをはせる。

「ジョンさんとジョナサンさんは当時のパーティーに出席したんですか?」

「ああ。でも俺たちはハルミに求婚しなかったから、友達としてその後も関係は続いたんだよ」

「そうなんですね。で、その壮絶な事実を知ったうえでイルマさんはパーティーを開きたいと?父親もわからないし、一族から逃げた末っ子ハルミさんの娘だし、下手したら自分の母よりも誹謗中傷を受ける可能性だってありますよね。正気ですか?!」

「まあ落ち着けよ。俺たちもイルマと話しをちゃんとして、よく考えたうえであんたに依頼してるんだ」

思わず取り乱して立ち上がるイオをジョナサンは押し戻す。イオはとりあえずレモネードを一口飲む。

「イルマは真実の愛を見つけたいんだ。母はいろいろあって総合的に見ればまあまあ不幸な人生だったかもしれないが、少なくとも一番愛したヒトと結婚して子供を作っているってわけだ。それにあこがれているんだよ。そのパーティーのせいで死ぬまで隠れていなくちゃならない人生を決められてしまったけど、そのパーティーのおかげで愛するヒトに出会うことができた」

真実の愛とはなんともメルヘンな響きだ。

「失礼だったらすみません。でも、ハルミさんが、本当に愛するヒトと結婚し、子を作ったという保証はないですよね。そこまで好きじゃなかったけど子供は作った、とか」

「いや、ハルミは結婚できない状況だったんだ。それなのに子供と離れることになってまでどうしても欲しかった子供だ。愛してないヒトとできるわけがない」

ジョンは拳を握りしめながら言った。

ここ、楽園において結婚とは、子供を作るうえで欠かせないものだ。夫婦はコピーのもとにそろって出向いて行って子供をお願いするのだが、そのお願いに必須なことが結婚の事実、というわけだ。不貞するつもりがあれば子供を作りに行きづらくなるシステムだ。イオはメルヘンだと頭の中で形容したことをすまなく思った。

「でも、真実の愛がほしいなら別に良家にこだわる必要はないんじゃ……」

「それは違うよ」

ふいに部屋のドアが開いて、声がした。振り返ると、黒髪ショートで、どこか中性的な整ったきれいな目鼻立ちの女の子が立っていた。はっきりした黄緑色の明るい目をしている。黒い無地のTシャツに黒のスキニージーンズという、若干屋敷のテイストとは外れたファッションだ。

「イルマ、聞いてたのか」

イルマは部屋にすたすた入ってくると、ソファーのイオの隣にすとんと腰かけた。

「どうも、イルマです。よろしく。探偵のイオ君」

イルマはイオに手を差し出した。

「探偵ではなくて、ギモン解決屋なんですけど、よろしくお願いします。イルマさん」

イオは手を握り返す。手のひらが思ったよりも硬かった。今まではガクシャを目指していたとのことなので、四六時中ペンを握ってきたのだろう。イルマはまだ使われていないグラスにワインを注ぎ、一口飲む。白い喉がごくりと動いた。

「私はお母さんがやったようにパーティーをやって、いろんなヒトに会ってみたいんだ。もちろん最後に選ぶのが良家になるかはわかんないけど、最初から良家のヒトを知りもせずに選びたくはないかな。だって私には権利もチャンスもあるんだからね」

「お父さんについてはどうなんですか?ええと、どうっていうのはつまり……」

イオが説明しようとするのを手で軽く制してイルマは言う。

「お父さんについては別にどうでもいいかな。知りたくもあるし、わからないならわからなくてもいい。イオ君がわかったら教えてくれるくらいでいいんだ」

「そういうことなんだ」

ジョナサンが言った。

「イルマはパーティーそのものに目的があって、父のことはどっちでもいい。だから、俺たちは俺たちのためにハルミの相手、つまりイルマの父探しをお前に依頼したんだ。普段一族が違えばめったに別の一族の者同士が顔を合わせることはないんだが、パーティーを開けば当時ハルミのパーティーに来たやつも来るかもしれない。そうすれば俺たちはそいつらに会って話をすることができる」

「なるほど、だからイルマさんからの依頼じゃなくて、ジョンさんとジョナサンさんの依頼なんですね」

「そうだよ。イオ君にはパーティーに潜り込んでもらって調査してほしいってこと」

イルマはすでに飲みほしたグラスから深紅の最後の一滴を舌の上に垂らす。

「依頼はわかりました。でも、どうやって?一人一人のDNAを取ってくるとかですか?」

「さあ?そこはイオ君の手腕にかかってるんじゃない?」

イルマはおどけて肩をすくめた。その時、玄関のベルの音がした。

「イルマ、ドレスが届いたんじゃないか?」

ジョンが言った。イルマは指を鳴らす。

「かもね。ちょっと取りに行ってくるよ」

イルマはひらりとソファーの背を飛び越えると部屋を出ていった。

「お嬢様のふるまいがあれで大丈夫か?昔の俺たちもヒトのことは言えないけど、相当指導されたぜ」

ジョンはバタンと閉じたドアの音を聞きながら言った。すぐに「わあ!ドレスだ!すげー!」というはしゃいだ叫び声がする。

「あと一か月で何とかするしかないだろ。優秀で家柄的にフリーな世話係をつけよう」

ジョナサンはため息とともに言った。

「パーティーは一か月後なんですね」

「ああ。イルマだけでは経験も財力もない。パーティーなんか開けっこないから俺たちが代理で開くんだ。俺たちはハルミの友人代表だからな。ちゃんと葬式にも行ったし。招待状やら料理の手配やらスタッフを雇ったりとかいろいろ準備がある」

ジョンはそう答えた。

「あ、イオにもこの二週間でパーティーや良家のコミュニティーでのふるまいを身に着けてもらうぞ。それと、父を探す作戦の立案も並行してな」

ジョンはそう続け、いたずらっぽく笑った。

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