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ケラサスの使者  作者: 岡倉桜紅
第一章
42/172

42 新たな出発

「思ったより早く戦争が終わったようで何よりだ」

コピーは帰ってきたイオをちらりと見てそう言うと、また自分の朝食に集中し始めた。今日のメニューは納豆らしく、コピーの手は規則的にパックの中の豆をかき混ぜ続けている。その脇には醤油の入ったビーカーとこまごめピペットがある。

「はい。タイムマシンに必要な材料の一つも手に入れました」

「そうか。組み立てはすべてバイにやらせるから、バイのところにうまく運んでおけ。私はこう見えて今仕事が立て込んでいるんだ」

「わかりました」

Bb9が椅子を引いてイオを座らせてイオの分の朝食も持ってくる。

「イオ様、今日から学園に戻られるということでよろしいでしょうか?」

Bb9が尋ねる。

「はい。材料集めも大事ですが、王になることも並列して大事ですから」

「ふん、かなり寄り道していたくせに。まあ、焦らないことは肝要だがな」

コピーはそう言った後、「よし、400回混ぜたな」と真剣な顔でつぶやいて箸をなめた。


戦争終了直後の学園は中央に近いほど荒れている傾向があり、イオの通う中央第九学園もその例外ではなかった。教室そのものが壊れてなくなっていたり、いまだに中庭から物騒なものが発見されたりして、イオたちが戻って一か月は、一日の半分は学園の修復、残り半分で授業が進むという感じだった。片付けの仕事は体力を削られるが、同時に体力強化にも効果的だった。

「イオ様、電話です」

イオが学園から帰ると、Bb9が受話器を差し出してきた。

『もしもし、イオか?わしじゃ、バイじゃよ。この間お前が持ってきた合金Aはしっかりと部品に加工できた。千年前に作られたものにしては加工がうまくて使いやすかったわい。で、次に必要な材料のことなんじゃが、次にお前さんが集めてくるのは合金Bじゃ。ありかがわかった。西ブロックに向かうのじゃ。そこでアメの一族という一族が代々受け継いでいる家宝、知恵の矢を一本もらってくるのじゃ』

「えっ、家宝?そんなのもらえるわけないですよ。盗むしかないじゃないですか。犯罪です」

『一本あればいいんじゃ。楽園内に必要な条件を満たす金属があまりなくて、有名で、一番持ち運びが容易く、ありかがはっきりしているところといえば、そこしかないのじゃ。できるだけ盗みはしてほしくないが、何とか頑張ってくれ。必要なら泥棒グッズも貸すから遠慮なく言っておくれ。例えば、すり替えておくための精工なレプリカとか』

完全に盗みに入る前提である。しかし、家宝ともなれば正面から譲ってくれなどとお願いしても無駄だろう。イオはため息をついた。過去に帰るためにはある程度のことはやむをえないだろうという覚悟は決めていたはずだったが、いざしなくてはならない局面に立つとやはり良心の呵責がある。

「わかりました。今回は僕一人で材料を探しに行こうと思います」

『うむ。健闘を祈っているぞ』

イオはせっかく荷ほどきが終わりつつある鞄を踏み越えると、楽園の地理の教科書を手に取り、西ブロックへの道順をたどり始めた。


「今日はコピーは夕食を食べないんですか?」

食堂の長い机に一人席に着いたイオは夕食を運んでくるBb9に聞いた。

「ええ、この時期は楽園の生命係としての仕事が一番舞い込む時期なのです。おそらく冬まつりでたくさんのカップルができるからですね。それに、冬のうちは気温が低いので体温を保っているだけでもコピー様の体力が削られるので基本的に疲れていて機嫌が悪いです」

コピーは変温動物なのか?やはり不老不死には冬眠とかそういう休養期間が必要とかそういうのがあるのか?イオはそう思ったが口には出さず、今日コピーに伝える予定だったことをBb9に伝言を頼むことにした。

「僕は明日から西ブロックに行ってタイムマシンの材料を集めてきたいと思います。しばらく留守になると思いますがよろしくお願いします、と伝えておいてもらえますか?」

Bb9は胸に手を当てて恭しくお辞儀をした。

「はい、確かに承りました」

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