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ケラサスの使者  作者: 岡倉桜紅
第一章
35/172

35 暴走

「全く、夜遅くに賭博場に出かけるなんて素行が悪いですヨ。親の顔が見てみたいですネ。どうして私のことも連れて行ってくれなかったのですカ?面白そうなのニ」

ホープは日が昇ってからのそのそと起き出してきた二人に言った。花札カジノから戻り、仮眠をとって、昼過ぎに目覚めた。朝食とも昼食ともつかないご飯をイオと居間で食べている時だった。セトカの両親は平日なので普通に働きに出ていていなかった。

「友達を地下の組織の借金取りから守るための情報収集だよ。ホープがいると目立つでしょ」

「失礼ナ。私も隠密行動くらいできますヨ」

玄関のチャイムが鳴ったのでセトカは玄関に向かった。ドアを開けると赤いヴェールのようなもので顔を隠した男が立っていた。

「どうもこんにちは。突然ですが、あなたは今の世界に満足していますか?」

「え、まあ、それは……」

男はセトカの手にパンフレットを何部か押し付けた。

「戦争もあり、地下の世界の抑圧もあり、差別や貧困は消えませんよね。少しは憤りを感じたことはあるでしょう。しかし、ぜひ私の自分で言うのもなんなのですが、私の人生で一番といってもいいほどのすばらしい判断をしたときのことと、そのあと、その判断のおかげでどんないいことがあったかをお聞き願いたいのです。ノウという単語の意味をご存じですか?普段地上で生活していると純日本語ではない言葉に疎くなりがちかもしれませんが、これは知る、つまり全知という意味なのです。ノウ様は全知であり、ノウ今日の教えを信じてそのように行動すれば、必ず世の中はいい方向に動いていくはずです」

「あの、宗教はうちはやりません」

「そうですか。私も最初はそう思っておりました。この世に神などいない。神は無力だ。そう思ってよく知ろうともせずに忌み嫌っていたのです。しかし私の考えは変わりました。神はいないという主張、これを神を信じる前で行い、それを軽んじることは差別ではないですか?私共、ノウ教の信者は差別を断固嫌っております。しかし大丈夫、あなたにもチャンスはまだあります。これから悔い改め、ノウ教を信じればあなたは救われます。ノウ様はすべてをご存じだから、信者の行動をあまねく見て、助けが必要な者には必ず救いの手を差し伸べます」

「だから、宗教はやりませんって」

セトカは引き戸を閉めようとしたが、男はつま先を隙間にねじ込んでくる。玄関でもめている様子を見てイオがやってきた。

イオは二人の間に割って入り、引き戸をおもむろに大きく開けた。そして一瞬二人がぽかんとした次の瞬間、イオは引き戸を勢いをつけて閉じる方向にスパーンと滑らせた。いわずもがな足を半分突っ込んでいた男のつま先は勢いよくドアに挟まれ、男はウギャッというような悲痛な声を上げて地面に転がって悶絶した。

「神は助けてくれたかい」

イオはドアを閉めた。

「やるね」

「学生の頃住んでたボロアパートにはN〇Kとかあやしい宗教とかが多く来たものだから」

「エネーチケー……?」


「いい夕ですね。時間です、ドアを開けてください」

ウィルマはカンペイ、シラヌイの家の戸を思い切り叩いた。ギルバートも横で壁を蹴ったりしている。シラヌイは思いのほか早く玄関を開けた。

「わかっています。今月の分はこちらです。お引き取りください」

シラヌイは茶封筒に入った小判を差し出した。茶封筒をウィルマの手に押し付けてドアを閉めようとした隙間にウィルマは素早くつま先をねじ込み、体を押し入ってドアを閉じるのを防いだ。

「これじゃあ足りませんね。利子の計算がおできにならないのですか?今月は、正しくは、」

ウィルマがまくしたてようとしたが、後ろからギルバートがドアをこじ開け、言った。

「花札がまだじゃんか。中に入れなよ。俺と花札しよう」

靴を脱がずにギルバートはずかずかと居間まで侵入し、ポケットからカードを取り出した。

「今月はどっちが対戦するの?」

居間ではカンペイとその母がいて、カンペイが母親を守るように前に立っていた。

「俺だ」

カンペイは言ってちゃぶ台越しに向かい合った。

「そうこなくっちゃね」


「大変でス!大変でス!カンペイ様の家に侵入者ですヨ!」

外が暗くなり始めたころに、セトカの部屋にホープが乱入してきた。

「赤い頭のヒトが二人、乱暴に家に押し入るのを、私はこの目でしかと見ましタ!」

セトカはペンを腰に挿し、立ち上がる。ホープの後ろからイオが駆け付けていた。どちらも準備は万端だ。

「行こう」


手札がちゃぶ台に並べられ、ギルバートが自分の手札を見ようとしたときに、ウィルマがその手を押さえた。

「待ってください。いつもの、来月の利子を掛けたゲームを始める前にはっきりと言っておかなくてはいけないことがあります。それは、今月の支払金のことです」

「さっき支払ったはずです。あの封筒に入っていたのが、今月の分です。毎月きっちりと同じ額払っているではありませんか」

ウィルマを追って居間に入ってきたシラヌイが言ったが、ウィルマはつづけた。

「ええ、あなたがたは毎月決まった額を支払ってくれております。しかし、毎月払っているから、なんてことは、その額が少ないということを説明してはいません。今まで私たちは、あなたがたがいつかきちんと返済してくれることを信じて、毎月の支払額について何も言ってきませんでした。返済計画を立てるのはご自由ですから。しかし、契約書によると、5月から今までの滞納負債の支払期日は今月までということになっています。今まであなた方が払ってきたお金で足りていない金額はずばり40万ベイです。さあ、お支払いください」

「え、待ってください!毎月5万ベイづつ払っていれば返済できると言ったのはそちらではないですか?こちらは言われた金額をきちんと期日に毎月支払っていました。それなのに、今月が支払期日だから足りない分を払えと言われても無理です」

「いいえ、私たちは最初にそんなことを言った覚えはありません。そんな音声の記録がどこに残されていますか?そもそも、その金額さえ払っていれば大丈夫ということを本気で今まで信じてきたのですか?あなたがたは計算というものがおできにならないんですか」

「今月で終わり?姉さん、聞いてないよ。今月で終わりってことは、もしかして、今日のゲームは、」

ギルバートがウィルマの手から自分の手とカードを抜こうとしたが、ウィルマは弟をにらみつけた。ギルバートは肩をびくっと震わせて口をつぐんだ。

「俺たちはあと借金がいくら残っているかも知らされてなかった。期限がいつまでとかも。毎月の妙な花札のせいで利率が変わるせいで!おかしいですよ、こんなの!そっちが勝手に金額をいじっても俺たちはわからないのを知っててやっているなんて卑怯だ」

カンペイが叫んだ。

「言い訳はいいから早く出してください。こちらはあなた方が政府から毎月大量の口止め料をもらっていることまでつかんでいるんです。お金はあるはずですよね?」

「ふざけるな!卑怯だ!」

カンペイたちの家族は、青い閃光が光った夜に、クルマに乗ったエンシェを発見した。政府から口止め料はもらっていたが、ガラス温室を新しく買うにはとても足りない額だった。最初からこの金貸したちは足元を見ていたのだ。

「……しかたないですね。どうしても払う気がないなら、こちらにも方法があります」

言うなりウィルマはポケットから小さなゴム栓のついた試験管を取り出した。試験管の中には青白く光る煙のようなものが充満しており、ゆらゆらと不気味にうねっていた。ウィルマは唇をなめて湿らせると、試験管のゴム栓を親指で弾き飛ばし、中の煙を思い切り吸い込んだ。

「姉さん?!」

「う、あ、ああああああああ!!」

ウィルマは叫び声をあげて体をよじった。ウィルマの体から赤い光があふれ出して見る間に彼女を包み込んだ。ウィルマの体は巨大化し、角の生えた牙のある大きな化け物のような見た目に変身した。ウィルマ、いや、元ウィルマの化け物の手の中で試験管が割れて四方に飛び散った。化け物は天井をぶち破ると、空に向かって咆哮した。

カンペイの母親は卒倒し、シラヌイはしりもちをついた。至近距離でガラスが割れてギルバートの顔には無数の傷ができて血が流れた。

しかし、ギルバートは変貌した姉から目が離せなかった。問が頭に流れ込んでくる。

『なぜ私たちは、貧困から抜け出せないのか?』

化け物はうなり声をあげてカンペイを爪で薙ぎ払おうと振りかぶった。

「伏せて!」

物陰から飛び出してきてペンを長い棒に変形させてかばったのはセトカだった。

「これはモンダイだよ!ここは任せて、逃げて!」

「お兄さん、こっちです。お母さんを背負って一番近いこうば、いや、ケビイシを呼んできてください!」

イオはシラヌイを立たせると、母親を背負わせた。

化け物がイオに攻撃を仕掛け、イオはペンを大剣に変えて攻撃を受け流す。刃とぶつかると、化け物の爪からは赤い閃光がバチバチと飛び散った。

「セトカ!糸口はなんだ!?」

猛攻を防ぎながらイオが叫ぶ。

「わからないよ!問の内容はきっと、なぜ彼女は貧困から抜けられないかだけど、私たちは彼女の境遇について知らないよ!」

「じゃあ、どうすればいいんだ!」

イオの視界の中で化け物の輪郭がぼやけていて、攻撃を受け流すのも大変だ。ましてや、その解答の結び目を見つけ出してほどくのは難しかった。学園の中にいる、並みの問とは違う、学園の外の問。明確な方程式も証明の仕方もわからなかった。

セトカは攻撃の一つを防ぎきれずに、攻撃を受けて吹き飛んだ。

「セトカ!」

逃げるために走りかけていたカンペイは駆け戻るとセトカを抱き起した。

「大丈夫、かすっただけ。逃げてって言ったでしょ。カンペイは普段からモンダイを見る練習をしてないし、ここはペンを持ってないと危険だよ」

「なんでお前が戦うんだよ。俺、頼んでない。もういいよ、やめてくれ、逃げよう」

セトカは立ち上がるが、腹から血が地面に滴り、ふらふらとよろけてしゃがみこんだ。

「平気。私に戦わせて」

「待って。お願いだ。本当はわかってたんだ。R1と関わりをもったのはずっと後悔してた。でも、関わってしまったから、村の人はもう誰も俺たちに関わろうとしなくなった。セトカだけだったんだよ、協力するなんて言ってくれたのは。でもだめだ。俺のせいで、傷つくのはだめだ」

それでも、化け物の暴れている家のほうに向かってセトカが歩こうとするので、カンペイは腕をつかむ。

「ガクをつけたものの責務だよ。モンダイの一つも解けなかったら、私は王になるパーティーの一員なんかにはなれない。これくらいのモンダイ、私たちが解かなきゃいけないの」

セトカはカンペイの手を振りほどいて走り出した。化け物が発光して赤く染まった景色の中にカンペイは取り残されて立ち尽くした。


「僕らだけで解けなくても、他の場所に被害を及ぼさないように、せめてこの場所にモンダイをとどまらせよう!」

「了解!」

化け物はさっきよりもさらに一回りほど大きくなり、動きが俊敏になってきているようにも思えた。問の答えはわからない。社会の仕組み?ビジネスの方法の問題?銀行の使い方?はたまたギャンブル狂の家族……?考えれば考えるほど明確な答えがないような気がしてくる。思わずペンから手が離れそうになってイオは気合を入れなおす。ネバリが限界に達しつつあった。誰か――。

「複利だからだよ」

声がして、化け物が一瞬動きを止めたと思うと、その腕がごとりと落ちた。

イオが振り返ると、十二単のような衣装に長い髪。数学大臣のスウだった。青白く光る弓をもっている。その弓の放った矢が結び目の一つを切ったのだ。

「借りたお金は元本という。複利とは、利子にまた利子がつくこと。一度返せない時があると、元本に利子が足された額にまた利子が付くの。借金は雪だるま式に増えていく。最初の契約で決まるんだよ。あなたたちが貧困なままなのは、元本を減らせないから。あなたたちが返していたのは、元本じゃなくて利子だったんだよ」

セトカは動きを止めた化け物のもう一方の腕も切り落とした。

化け物は空に咆哮した。今度の咆哮は聞くものの胸がつぶれるような悲痛な音を秘めたものだった。化け物が少し小さくなったように見える。

「今だ」

イオとセトカは化け物に切りかかった。

『どうして、どうして、どうして私は、私たち姉弟は、……幸せになれない?金をくれよ。どうしてお金がないの、どうして、どうして』

さっきまでの威力を失ってほどけかけのごちゃごちゃに絡まった結び目の糸を二人は切り刻んでいく。

ギルバートにもわかった。姉の問はもう問ではない。卑屈な嘆きだ。どうしようもなくなって、ただ泣き叫んでいる、悲痛な声だ。モンダイに昇華しきれない、自分でもモンダイかどうかわからない、もうすでに現実として認めざるをえない事柄を並べているにすぎなかった。

「もうやめて!やめてよ」

ギルバートはイオたちの前に割り込んで両手を広げて立ちはだかった。イオの大剣は止められずに少年の腕を打った。ギルバートの金色の義手はごとりと落ちた。

「ごめん!」

慌ててイオがペンを投げ出す。イオに首を振って、ギルバートは絞り出すように言った。

「もう、わかってるよ」

その言葉で化け物はするすると縮んで、傷だらけのウィルマが横たわっていた。

「姉さん、もういいよ。一人で背負わせてごめん。でもさ、最後のゲームでイカサマはよくないぜ。あいつらはちゃんと払ってた。もう、帰ろう。あいつらに謝って、それで、帰ろうよ」

ウィルマの目は涙であふれていた。唇を噛む。遠くで、ヒトが何人かこちらに向かってきている声が聞こえる。

「謝るのは、私一人。ギルバート、あなたはもう家に帰って。クズな姉でごめん」

「何言ってるんだよ、いっしょに謝って、一緒に帰るんだ。もう一回、俺たちの暮らしをしようよ」

ギルバートは残っているほうの義手で姉に手を伸ばした。ウィルマは手を伸ばしてその根元をつかむと、義手を引き抜いた。

「なっ?」

そしてイオに叩き落されたほうの義手も拾い上げると、その義手でギルバートの首を殴った。ギルバートは崩れ落ちる。

「これで、この家の修繕費が足りるといいんだけれど」

金色の義手をセトカに差し出した。

「安心して。金色はメッキだけれど、中に使われている金属は一級品だから、溶かせば売れるはずよ。私はこれから自首しにいくけど、弟は本当に関係ないの。目が覚めたら家に帰るように言ってちょうだい」

ウィルマは駆けてくるケビイシのほうへと歩き出した。


薄れる意識の中で、ギルバートは最後につぶやいた。

「姉さん……、俺と、花札しよう。もう一回……お願いだよ」


ギルバートの父はやはりギャンブル狂いだった。父は花札が上手く、ギルバートが対戦して勝ったことはなかった。

「今日はよく儲けたから、母さんには内緒で買い物に行くぞ。ついてこい」

「いいよ、カジノじゃないなら俺行きたくない。もう一回花札しよう」

ギルバートが唇を尖らせて言うと、父は大きな声で笑った。すでに酒が入っているのか吐息がアルコール臭かった。そしてそのあと一瞬、悲しそうな顔をしたので、ギルバートは慌てて言い直す。

「ううん、やっぱり買い物行くよ」

気を付けてね、とウィルマが口の形だけで見送る。ギルバートは軽くうなずく。姉さんはお父さんとお母さんのことが最近嫌いみたいだ。いわゆるハンコウキってやつだろうか。

「そうか、そうか。よし、今日は気分がいいな。お前のほしいものなんでも言ってみろ」

「うーん、花札」

父はまた少し悲しそうに笑った。父の顔は半分生まれつき肉がえぐれているのだが、そのために表情が変わるのが、よく観察しているとわかるようになるのだ。その顔が今にも泣きだしそうな顔に見えたので、ギルバートは必死に新しい花札以外のほしいものを探して頭を巡らせたが、特に思いつかなかった。

「他にはね、えっと、えっと……」

「お、これとかいいんじゃないか?」

父が不意に一つの露天商のテントの前で立ち止まった。金物のジャンク品セールのようだ。父はその中からさび付いた、しかし、シャツの端でこすると確かに金色に光る立派な義手だった。父は暗い店の奥でじっとしている老人に声をかけた。

「これ、いくらだ?」

「300ベイ」

「まじか。ちょっと負けちゃくんねえか?」

父の顔は初めて見るものにとっては恐ろしく映るということに最近ギルバートは気付いていたので、店主はおびえて値段を下げてくれると思ったが、店主の返答は違った。

「いいや、負けないね。これはセールでその値段さ」

父はしばし店主とにらみ合うようにしていたが、次の瞬間、からりと態度を変えてズボンの尻ポケットから小判をいくつか取り出した。その中にはギルバートが普段滅多に見ないような金色の小判もあった。店主は頷く。

「持ってきな」

買ってもらったばかりの義手はギルバートには少し大きかった。しかし、父が満足気にしているので、ギルバートもうれしかった。

「これで、ひとりでも花札ができるな」

と言われたとき、腕の利用価値について思い当たり、飛び上がりそうになった。

「ありがとう!お父さん。早く帰ってゲームをしようよ!」

跳ねるように家路を歩き始めたギルバートだったが、父が反対側に歩き始めているのに気付いた。

「お父さん、うちはあっち……」

見ていると父はさっきの金物屋にまた戻っていった。

「悪りい、片方の値段しか払ってなかったよな。これ300ベイだ。すまんな」

父がギルバートが見ているのに気づいて歩いてきた。

「なんで戻ったのさ。あのおじいさん気付いてなかったよ。言わなきゃ半分の値段で買えたのに」

父はしゃがんでギルバートと目を合わせた。酒の匂いにくらっとする。しかし、父の瞳は真剣だった。

「いいか。ゲームでイカサマは一番やっちゃあいけねえことだ。一回でもイカサマしたら、カードに嫌われる。大一番でのツキが欲しいなら、イカサマだけはだめだ」

「買い物はゲームじゃないよ」

「いや、ゲームだよ。くだんねえ、人生って名前のゲームだよ。ゲームはな、やってるその間だけ、その時だけは平等だ。地位も身体も住んでる場所も、生まれもガクも、生活も、全部見えないんだ。全部平等なんだ。ゲームに生きれば平等だ。だから、だからイカサマだけはするなよ。お前は、正直に生きろ」

ギルバートはうなずいた。

「よし」

父は立ち上がった。酒の酔いのせいか足元がふらついている。

「俺はタバコ買ってから帰るわ。お前は先に帰ってその汚え義手を磨いてな。錆がつくとカードが汚れるからな」

それから父は失踪し、二度と会うことはなかった。

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