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ケラサスの使者  作者: 岡倉桜紅
第三章
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58 過去へ

「イオ、タイムマシンに乗れ。お前にはまだやるべきことがあるじゃろう」

バイはイオをタイムマシンに押し込んだ。イオはタイムマシンが雨に濡れて壊れず、さらに、木の根の間に埋もれることもなく、落葉に埋もれてなくなることもなくまだ存在していたことに驚く。

「楽園の壁にエネルギー変換装置を取り付けた。イオ、よく聞け。楽園を取り囲む壁を構成している物質には特徴がある。これは、軽く、ものすごく強度が強く、並大抵の力を加えた程度では決して割れない。滅多に壊れることはないのじゃが、恐ろしく強大な力を加えたとき、割れる。まさしく今の状況じゃ。楽園中のヒトが壁を本気でたたけば、割れる可能性は大いにある。割れるとき、つながっている板がすべて一瞬にして物質を構成する小さな三角形一つ一つにばらばらになって、板に溜まっていたパワーを一気に放出するんじゃ」

「それを利用して過去に帰れるかもしれない!」

「そういうことじゃ。ちゃんとシートベルトをして、前だけを見てるんじゃよ」

イオは頷いた。

「もう、よそ見なんかしませんよ。後ろを振り返るのはもうやめる。前だけを見ます」

「よし」

バイは頷くと、イオの腰からペンを取って、代わりにピストルを一丁持たせた。

「もうお前にこの世界の武器(ペン)はいらんじゃろ」


「壁を、壊せ!壁を、壊せ!」

楽園の人々は全員、力を合わせ、息を合わせて一つの目標に一丸となっていた。壁をたたくどの顔にも、もう絶望は見えず、すがすがしい笑顔が浮かんでいた。

ピシリ、と微かな音がした。小さなヒビが、一瞬にして全体に広がって、透明だった壁が白くなった。

「ありがとう、楽園」

イオはつぶやく。楽園の壁は、はじけ飛ぶように崩壊した。高く、青い空が広がっていた。

青い閃光が閃いた。

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