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48 黒の塔にて
「あの時の桜は、本当にきれいだったよね」
黒の塔の最上階でウノはしみじみとつぶやいた。窓からは、黒い雲が楽園の空を着々と覆っているのが見える。塔の下の悲鳴や喧騒が小さく聞こえてくる。
「もういい」
コピーは手術台につかまるようにして立ち上がった。
「もう時間がない。これ以上回りくどいことを言うな、ウノ。あんたの本当に知りたいことは違うだろ。あんたが確かめたいのは、私たちのことだよ。永遠の命を持つ存在は許されるのか。私が黒の塔の主になってよかったのか。それを議論しに、ここまで来たんだろ」
ウノは少し目を細めるようにした。
「そうだね。もうあまり時間もないことだし、名残惜しいけど本題に入ろうか」