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ケラサスの使者  作者: 岡倉桜紅
第三章
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20 黒の塔の風呂場にて

「へ、……へぁ、へァあーッくしょん!!」

コピーは鼻水をまき散らしながら盛大にくしゃみをした。広い風呂場に音が反響する。黒の塔には大浴場と言っても差し支えないほど大きな風呂場がある。大きな円形の浴槽が真ん中にあり、なみなみと張られたお湯からはもうもうと湯気が立っている。黒くつやのある大理石の床から生えるギリシャ神殿を思わせるような白くて太い柱が高い天井を支えている。天井には天井画が描かれており、三人の白い髪に赤い目の天使がお互いに争いあっている絵が描かれている。浴槽の中央にはしゃれた井戸のような大理石のオブジェがあり、そこから新たなお湯がこんこんと湧き出しては湯舟に注がれている。壁際にはたくさんの洗い場があり、それぞれの洗い場の間にはこれまた大理石の立派な石像が置かれていた。

「うぇ」

コピーは鼻水を手のひらで拭うと、うへぇと思いながら浴槽の中でその手をじゃぶじゃぶ洗った。

石を詰めた袋を担いだポーズの全裸の男の石像の視線を感じ、コピーは「どうせ私しか入らないんだから勝手だろ」と意味もなく自己弁護をする。

「コピー様、大丈夫ですか?のぼせる前に早めに上がってください」

Bb9の声がする。

「ああ、もう出るよ」

コピーは大きな声で返事をして湯舟から出た。


「コピー様、先ほどお電話がきておりました」

「誰から?」

コピーはわらび餅を食べながら聞く。Bb9はコピーの頭をタオルで拭いて、絡まりやすいその長い髪をブラッシングしていた。

「からくり屋、バイ様からです」

「もうタイムマシン完成したって?」

「いいえ、だいぶ出来上がっては来ているとのことですが、致命的に足りない材料があるから相談したいという旨です」

コピーは口に入れようとしていたわらび餅を半開きの口のすぐ手前で静止させた。

「……後でかけなおすよ。おそらくその懸念はちゃんと解決できる」

「承知しました。それでは別件のご連絡ですが、明日は一件、新婚の夫婦が来ますが、私のほうで今夜のうちに下準備の雑務をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「うん、はふはうほ」

コピーはわらび餅を食べながら言った。きな粉が喉の奥に入ってむせる。Bb9はまるで予想していたかのようにすみやかにお茶の入ったコップを差し出す。

「助かるよ。ぜひやっといてくれ。頼りにしてる」

お茶で喉を潤したコピーはそう言った。

「その、二人だけで見つめあってる瞬間、熟年夫婦みたいでこっちが気まずいのなんとかしてもらえませんカ?」

ホープはオレンジ色の目をピカピカ点滅させながら言った。

「うるさい。バラして電卓にするぞ」

コピーが睨むと、ホープは「きゃー」などとふざけて悲鳴をあげ、部屋から出て行った。

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