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ケラサスの使者  作者: 岡倉桜紅
第一章
13/172

13 体力強化

「今日は歴史政治の授業の予定でしたが天気がいいので体力強化の授業に変更します」

ランタンは教卓の前に立つなり無表情のまま3組の一同に宣告した。一同の顔が引きつり、一部の女子は目に涙さえ浮かべている。

「2、3時限目もちょうど体力強化だったので本日は3時間も強化に取り組めます」

「きょ、今日も走り込みですか?」

「はい。ですが今日はこちらを使います」

ランタンはラッパ型のスピーカーのついたレトロなレコードプレーヤーを取り出した。

「ここでシャトルランします」

いや、天気悪くてもできるやろがい!!一同は声を上げて泣きたくなったがこらえる。

「レコードが止まるまで走り続けられたものは残りの時間は私の歴史政治の講義を椅子に座って受けても良いこととします。そのほかの人は、私はここで粛々と授業をしていますので走りながら聞いてください。ルールは大丈夫でしょうが、二回遅れたら失敗ですので気を付けてください。では、スタート」

いや歴史政治もやっぱりやるんかい!!一同の心の声はランタンにはどこ吹く風。レコードをセットしてスイッチを入れる。イオにとっては懐かしく、ややトラウマの音楽が流れ始める。

『いち、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド、ジャーン、ド、シ、ラ、ソ、ファ、ミ、レ、ド♪』

「今日の講義では、今現在の楽園の政治システムや、試験制度ができるまでの流れをお話しします。楽園創設者はリエイという人で、その人は楽園の政治の基礎を作り上げました」

『に、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド、ジャーン、ド、シ、ラ、ソ、ファ、ミ、レ、ド♪』

「当時の城にはケビイシという組織はなく、王が自らの力で集めた優秀な集団が王の指示のもと、今のケビイシとクロードの仕事を合わせたような職務を担当していました」

『さん、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド、ジャーン、ド、シ、ラ、ソ、ファ、ミ、レ、ド♪』

「カオスッ!!」

イオは思わず叫ぶが、どうすることもできなかった。


2限目は場所を変え、3組一同は学園の体育館にいた。すでに1限目のシャトルランでライフは限りなくゼロに近い。女子の目は死んでいる。男子の目にももちろん光はない。結局、1限目では誰も達成することはできず、歴史政治のプリントが配布されて宿題となった。

「今回は筋力を鍛えます。縄跳び、腕立て、腹筋、エアロバイク、ダンベル、バーベルといろいろあるのでこの1時限の間、すべての器具で一通りトレーニングすること。ここにノルマをかいたメモを張っておくのですべて達成したものは報告するように。では初め」


昼食をはさんで3限目はプールに連れていかれた。胴着のまま1キロ泳がされ、一日苛め抜いた筋肉はもうやめてくれと号泣している。水の中で何度も足が吊り、他の生徒に助けられたし、イオも溺れかけている人を何度も引っ張り上げた。

「はい、終了。この時間もノルマ達成者はいないようです。4限目はペン活用法ですので遅れないように。解散」

しゃべる気力もなくイオたちは濡れた胴着のまま教室へ向かった。


本日は幸運なことに授業は4限までしかなかったのでこれが終われば帰れるという安心感から、4限目の教室はみなすやすやと安らかな寝息を立てていた。

「……よってペンはとても複雑な構造をしています。ペンが発明されたのは今から500年ほど前にさかのぼります。……皆さん、聞いていますか?」

ランタンは教室を見渡したが、反応は鈍い。

「やはり座学はつまらないですね。今のあなたたちに最も必要なものは座学ではありませんし。これより、4限の残り時間は体力強化の時間とします。残り時間を考慮し、外周20周走ってきてください。報告はいりませんので終わったものから帰っていいです」

イオは血反吐が出そうだった。横を見ると隣に座っていた少年が悟りの境地に達したようなほほえみを浮かべたまま吐血した。

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