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ケラサスの使者  作者: 岡倉桜紅
第二章
113/172

幕間

「なあ、Bb9。涙が止まらないんだ」

黒の塔の最上階、コピーは眼下のめちゃくちゃに破壊された城を眺めながらコピーは言った。真っ赤な目からは水滴があふれては頬を伝い、流れていく。目の赤色のせいなのか、その涙にはうっすらとピンク色に近い色がついているようにも見えた。

Bb9は黙ってコピーのそばにいる。

「私は全員に生きてほしいんだ。でも、生きるということについてもよくわかっていない。ただ、生についての解釈だけが増えていく。あっているのかもわからない、無数の解釈がだよ」

Bb9は相槌を打つようにゆっくりと頷く。

「私はこの手でエラーズを生み出しているんだ。私はすべての同じ器に、ただ機械的にDNAを入れているだけ。器に少し工夫、細工をすれば、エラーズが生まれうるDNAを与えられたとしても、ノーマルズに創ってやることはできるんだ。エラーズに生まれたヒトがつらい思いをしているのをこれだけ見ているのに、私はそれを一度もしなかった。――わからないんだよ。生命を作るものの責任とはいったいどこまでなんだろう。生きるということは、幸せになるということを包含しているんだろうか?じゃあ、一体死ぬってなんだろう。ヒトはいつか死ぬ。全員必ず死ぬ。そういう風にできてる。死亡率100%だ。死は幸せと対局にあるのかな?そうだ、と自信をもって言えたなら、私はきっと、楽園中のヒトをノーマルズにしてあげることだってできた。脳みそをいじって、何を見てもハッピーな気分になるように創ってあげることもできたんだ」

コピーは自分の頬から顎にかけてのあざを指でなぞった。うまく線を引けばそれは、空に浮かぶさそり座のような形をしていた。

「こんなに迷っている私を見て、ヒトヒは、……ウノはなんて言うかな」

「コピー様は人間なのですから、迷うことは当然の権利です」

Bb9は言った。少しだけコピーは笑う。

「ありがとう。……今日は少し疲れた。もう休んでもいいか?」

コピーは窓辺を離れた。包帯を巻いた足を引きずっている。

「はい。明日は墓参りですので、本日はゆっくりとおやすみになってください」

Bb9はコピーに手を貸してベッドまで連れていく。ベッドに体を投げ出したコピーから手際よく白衣や来ていた服を脱がせ、パジャマに着替えさせてナイトキャップをかぶらせる。しっかりと顎の下まで掛布団をかけ、ベッドのしわを整える。

「おやすみなさいませ、コピー様」

Bb9が言うころにはもうコピーは寝息を立てていた。ホープはその様子をオレンジ色のレンズでじっと見ていた。

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