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ケラサスの使者  作者: 岡倉桜紅
第二章
111/172

58 コピー

中央ブロックはわずか数分で壊滅状態に陥った。真っ赤なギモンが二体、ぶつかり合い、暴れ、互いを傷つけようと力の限りを尽くしていた。建物は破壊され、城下町は煙と炎で満ち、さながら地獄の風景であった。

「やめてくれ!」

煙の中で声がした。

「お願いだ、やめてくれ!」

その声は、楽園の誰もが聞いたことのある声だった。城の門の前に、トイロソーヴではないシルエットの人影がある。

白く長い髪に、真っ赤な目、頬から顎にかけて変な形のあざがある。楽園の生命係、コピーであった。白衣を着て、町がこんなにも破壊され、家の破片やガラスが散乱する中だが、裸足だった。

真っ赤な化け物二体は、自分たちに向かって叫んでいるのが誰だかわかると、動くのをやめた。化け物はするすると縮み、破壊された城跡には双子の兄弟がお互いの胸倉をつかみ、固く握りしめた拳を宙に振り上げた状態で固まっていた。

「コピー?」

イオはつぶやく。砂埃を吸い込みすぎたせいで、その声はかすれていた。

「すまない」

コピーは言った。塔を下り、自分の足でここまで街を歩いてきたようで、その白い足は、瞳のように真っ赤な血で濡れていた。

ファイとルートは動くこともできずにコピーを見ていた。

コピーは両手で自分の膝をつかむように腰を折り、頭を下げた。震える声で続ける。

「丈夫な体に創ってやれなくてすまない。お願いだから、お願いだから傷つけあうのはやめてくれ」

楽園は静まり返った。

「すまない。本当にすまない。……許してくれ」

悲痛な声だった。

双子は互いを突き飛ばすようにして距離をとった。二人は何も言わずに反対の方向を向き、さっきまで城だったがれきの中を歩きだした。

コピーは二人がいなくなってなお、姿勢を変えることなく頭を下げ続けていた。

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