リンゴ
皮をむかずに、かじります。
天には その姿で暦を刻み
夜空を渡る月が架かるように
地にも その赤さを季節が染める
月が 豊かに実る
満ち欠けを繰り返す 天の月とはちがい
地の赤い月に
ならんだ歯をたててやれば
尖った刃をたたてやれば
欠けたその実が もう満ちることはない
渇いた頬を丸くする 天の月とはちがい
地の赤い月は
はちきれんばかりの果汁を その実にたたえる
みずから燃えることなく
太陽の光で薄化粧した 天の月とおなじに
地の赤い月の
その鮮やかな色も 皮一枚だけのもの
そして
天の月も 地の赤い月もおなじに
耳の長い住人を棲まわせる
丸いリンゴも 切りようでウサギ
梨だって、皮のままかじりたいです。