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ろぞわ  作者: 七宝


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5/5

陽介

 俺は走って神社に向かっていた。その途中、スマートフォンで義浩(よしひろ)に電話をかけた。


『もしもし』


「あ、もしもし義浩? すぐに神社に来れないか?」


『ああ⋯⋯それがさぁ』


 落ち込んでいるような、暗い声で喋る義浩。


『明日引っ越すことになって、なぜか家から出してもらえないんだ。朝のこともあったし、もうこの村には居られない! って母さんが急遽決めたんだ』


 自分の息子が明らかに何かに取り憑かれてあんなことをしたのだ、引っ越したくなるのは当然だ。


「そうか⋯⋯残念だな。たまにはメールか電話寄越せよな!」


『ああ、分かった。⋯⋯そんで、神社に行って何するつもりなんだ?』


 義浩が心配そうに聞いてきた。


「いや、なんでもないよ。じゃあまたな!」


 義浩は明日この村を離れるのだ。このことを知らないまま引っ越した方がいいだろう。そう思い、閭胙禍(ろぞわ)様の話はしなかった。


 電話を切った頃に神社に着いた。けっこう長電話をしていたようだ。


「こんにちは、佑樹(ゆうき)くん。今日は1人かい?」


「フン」


 俺は宮司さんを無視して神社の中に入っていった。宮司さんは全てを知った上で俺達にあんな態度を取っていたんだ。1ミリも信用してはいけない。


 この神社のどこかに陽介(ようすけ)が居るはずだ。俺は血眼になって探した。やがて宮司さんは俺の目的に気がついたのか、俺の後ろを歩くようになった。


「なんで後ろついてくるの? どんぐり探してるだけなんだけど」


「そう? じゃあ一緒に探してあげようかねぇ」


 宮司さんは笑顔でそう言った。その笑顔は、目が全く笑っていなかった。


 どんぐりを探すふりをしながら落ち葉を避けていると、神社の裏側に大きめの穴を見つけた。子どもが1人通れるくらいの大きさだ。


「宮司さん、この穴なに? この奥に何かあるの?」


 俺は穴を指さして言った。


「えっと、これは⋯⋯あれだ! 私の秘蔵のアダルトビデオ部屋に繋がっているんだ! その部屋の存在がバレたら私はこの村に居られなくなってしまう! だから、どうか見なかったことにして帰ってくれないか!」


「ふーん、分かった」


 そう言って俺は無理やり穴の中に入った。だいぶ狭いが、なんとか通ることが出来た。


「エロガキには逆効果だったか⋯⋯くそ、どうすれば! 佑樹くんが犠牲になってしまう⋯⋯!」


 地上で宮司さんが何やら言っているがよく聞こえない。俺は数メートルほど斜めに滑った後、平坦な場所にたどり着いた。


 階段がある。更に下があるということか。40段ほどの階段を降りると、そこには扉があった。扉は強烈な臭いを放っていた。閭胙禍様が俺を近づけないようにしているのだろうか。


 俺は近くに転がっていた石を何度も扉に打ちつけ、なんとか鍵を壊し、部屋の中に入った。


 するとそこには、大きな木に取り込まれた状態の陽介が居た。太い幹に背中が沈み、両腕には木の枝が巻きついている。しかし、陽介は目を開けている。よし、まだ生きている!


 俺は陽介を見て泣いてしまった。ババアみたいなセンスのシャツに、半ズボンでも長ズボンでもない意味の分からない丈のズボン。中学の修学旅行で買った十字架のネックレス。キノコみたいな髪型。まさにあの日のままの姿だったからだ。


「ゆう⋯⋯き⋯⋯」

 

 陽介が俺の名前を呼んだ。さらに涙が溢れる。


「しん⋯⋯じてた⋯⋯来てくれて、ありがとう⋯⋯」


 言葉にならないほどの小さな声だが、俺には聞き取ることが出来た。俺は「うん、うん」と頷きながら陽介のもとへ歩み寄った。


「ずっと⋯⋯ずっと⋯⋯ぐすん、待ってた⋯⋯」


 陽介も涙を流している。辛かったよな、陽介⋯⋯!


「この村の大人は信用出来ない。この枝を引きちぎってすぐに村の外に出るぞ!」


 俺はまず、陽介の左腕に巻きついている枝を取る事にした。中々硬いが、1本ずつ折っていけば陽介を解放できそうだ。


「佑樹⋯⋯ありがとう」


 陽介はそう言うと、縛られていたはずの右手で俺の肩を抱いた。


「ずっと、一緒に居ようね」


 最期に聞いたその声は、俺の知る陽介の声ではなかった。

 これにて完結です! 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 村社会の不気味さや人間関係の濃さなどがリアルに描かれており、とても良かったです。 [一言] ギャグはないって言ってたじゃないですか!ところどころで大笑いですよ!日曜日で自宅で読んでて良かっ…
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