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ろぞわ  作者: 七宝


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3/5

閭胙禍

佑樹(ゆうき)〜、そろそろ降りて来なさ〜い」


 母さんの声だ。俺は家に帰った後、自分の部屋で少し眠っていたんだ。時計は12時ちょうどを指している。2時間くらい寝ていたか。


 1階に降りると、父方の親戚が全員集まっていた。俺の父さんは長男なので、ばあちゃんの面倒を見ているのだが、そのこともあって皆この家に集まるのだ。


 3家族、実に14人が集まった。そこまで広い家というわけでもないので、これだけ居ると居間だけでは足りず、襖を外して隣の部屋も使って大きな部屋を作るのだ。


 大きなテーブルを2つ繋げ、そこに俺と母さん、叔母さんで正月の料理を並べる。俺はこの家の子なので、いろいろと手伝わされるのだ。


 本当は12時に食べ始める予定だったらしいが、俺の親戚は皆時間にルーズなので毎年14時頃から始まる。


 俺はせっせと食卓におせちを運ぶ。歳下のいとこ達は寝転がってゲームをしている。俺はこの中では最年長なので、しっかりしていなければいけない、といつもばあちゃんに言われていた。


 俺は彼らのこの姿を見て、いとこ達は寝転がってゲームしててもいいのかよ、と少し腹が立った。


 料理と食器を並べ終え、瓶ビールも大量に持ち込まれ、食事の準備が整った。ばあちゃんが音頭をとる。


「改めて、あけましておめでとう。これからもよろしくねぇ。ではいただきます。の前に、お年玉を渡そうかねぇ」


 子どもの正月の楽しみといえばこれだ。これがなかったら誰もわざわざ親戚の集まりになど来ないだろう。


 高校生にもなると、1人あたり5000円貰えることもある。明日は母方の集まりもあるので、2日間で25000円を超える見込みだ。


 お年玉タイムを終え、皆料理に手をつけ始める。いとこ達はいくら貰ったか見せ合って喜んでいる。俺は本人達の前でお年玉袋を開けるのは失礼だと思っているので、全員帰るまで開けないつもりだ。


「佑樹、義浩(よしひろ)くんは元気だったか? 仲直りは出来たか?」


 父さんが心配そうに聞いてきた。冬休み前に義浩と喧嘩したことを話したら、酷く心配していたのだ。陽介を失ったこともあり、これ以上友達が減るのは⋯⋯と心配してくれたのだろう。


「うん、ていうか、俺が許す側だったからね。向こうから謝ってきたんだ」


 そう、仲直り出来るかどうかというのは俺にかかっていた。なので、大晦日のメールの時点で一応仲直りはしていたのだ。


「そうだ、変なおみくじを引いたんだけど⋯⋯」


 俺は父さんに神社で体験したことを説明した。


「お前、義浩くんと遊ぶとは聞いてたけど、神社に行ってたのか!? 大丈夫か? なんともないか⋯⋯?」


 異常なほどの焦りを見せる父さん。


「なにが? あの神社について何か知ってるの?」


 俺はなぜそんなに焦るのか疑問だった。


「あ、いや、なんでもない。あそこは枯れ木の枝で怪我をする子が多いって聞いてたもんでな、無事ならいいんだ、無事なら⋯⋯」


 何かを隠しているに違いない、そう思った。


「あとさ、おみくじで『おもいだすべからず』と出たんなら、もう思い出さない方がいいんじゃないか? 鳥居を舐めてた女だって、そのせいで見えてたのかもしれないだろ?」


 どうやら父さんは俺を新神社(しんじんじゃ)に近づけたくないようだ。陽介は俺の親友なんだぞ。早く見つけたいんだ。俺はその手がかりが新神社にあると思っている。父さんはその邪魔をしてきそうなので、話をやめることにした。


 皆料理をたらふく食べ、墓参りの準備を始めた。男性陣は「もうちょっと後にしようよ」と言っているが、女性陣が「早く行かないと暗くなるわよ」と説得している。毎年見る光景だ。


 男性陣はめんどくさがりながらもついて行き、皆で墓参りをした。男性陣は全員酒臭かったので、近づかないようにした。


 家に帰って少しお茶をした後、おばさん達が酔っ払った男性陣を引きずって自分達の車に乗せ、各自帰っていった。


 俺は自分の部屋に戻り、お年玉袋開封の儀を始めた。毎年の傾向を見て、少なそうな人の袋から開けていく。


 昭二(しょうじ)おじさん、3000円。父さん、3000円。太郎(たろう)おじさん、5000円。ばあちゃん、10000円。


 10000円!? 去年は5000円だったのに、いきなり倍!? 間違えて入れちゃったのか? ボケ始めてるのか? このまま貰っちゃって大丈夫なのか?


 まあ大丈夫だろう。それにしても、今日だけで21000円とは、合計で30000円以上行ってしまうんじゃないか?


 俺はウキウキ気分で財布にお金をしまう。あれ、上手く入らない、何かが引っかかっている。

 そうだ、お札を入れるところにたくさん引いたおみくじを入れてたんだ。


 おみくじを取り出し、ゴミ箱に捨てた。


「いや、あれだけはやめとくか⋯⋯」


 俺は最初に引いたおみくじだけ捨てないことにした。ゴミ箱から拾い上げ、広げて机の上に置く。


『凶 閭胙禍に触れるべからず』


 そうだ、閭胙禍の意味を調べてみよう。俺はすぐにスマートフォンを開き、手書き入力機能で閭胙禍と入力して検索してみた。


『検索条件と十分に一致する結果が見つかりません』


 存在しない言葉なのか? なら、1文字ずつ調べてみよう。まず、『閭』を調べる。


 村という意味があるらしい。偶然にも、俺達が住んでいるここは『子優村(こすぐれむら)』という「村」だ。次に、『胙』を調べてみる。


 『ひもろぎ』と読むらしい。ひもろぎという言葉の意味はいろいろ挙がっているが、『胙』という字に関しては『神に供える肉など』と書かれている。


 最後に『禍』だが、これは今流行っているウイルスでもよく言われる『禍』のことだろう。旧字体というやつだ。禍々しいという字だが、一応調べてみよう。


『よろこばしくない事柄。不幸をひきおこす原因。災難』


 やはり、俺が思っていたような意味だ。


 この3つの漢字の意味を調べたことで、『閭胙禍』というものが良くないものであることが分かった。村を表す漢字である『閭』が入っているのは少し不気味だな。


 さて、これはなんと読むのだろうか。『閭』は『呂』が入ってるから『りょ』か『ろ』だろうか。いや、そのまま『むら』という可能性もあるな。


 『胙』は『そ』または『ぞ』だろう。さすがに三字熟語で『ひもろぎ』という読みにはしないはずだ。


 『禍』は『か』、『わざわ(い)』、『まが』などと読む。順当に行けば『閭胙禍』は『ろそか』になるだろう。『ろぞか』の可能性もある。


「佑樹ー! 義浩くんのお母さんから電話よ! すぐに佑樹に代わって欲しいって! 早く降りてきてー!」


 母さんが大きな声で呼んでいる。よほど緊急の要件なのだろう。


「もしもし、代わりました。佑樹です」


「もうじき夜になるのに、義浩が帰らないの!」


 新神社の前で別れて、そのまま家に帰ったんじゃなかったのか。いったいどこに行っちまったんだ! 俺は家を飛び出し、義浩の家へ向かった。

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