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派遣女子のひとりごと  作者: ななもい
12/28

12月21日

 今日もいつもの一日が始まる。・・・だがその前に、少しだけ余談。この仕事を始めたばかりのこと。しようと思った理由を簡潔に。


 今の派遣先は、頑張れば給料も一時的に上がる仕組みだし、社員さんもいい人ばかりで特に環境が悪いということもない。初めてやる職だったのもあって挑戦してみたいと思った。採用されたときは嬉しかったしこれまでの生活から脱却できると思ったらやる気は出た。

ただ、仕事内容自体が私に合わなかったのだろう。就業開始から1ヶ月。結果はボロボロ。APOは取れて1件。既存客が相手なのもあり、取りやすいのにも関わらずである。周りの派遣や私より後から入った人は毎日2件は当たり前のように取っていた。


それで現在、さらに酷くなっている。おまけに今日は朝礼が1対1だった。距離近いと思いつつ話を適当に聞く。そのあとまたすぐに来て、話をする。アドバイスが全く頭に入ってこない。とりあえず覚えるために書く。そのあとも思考が動くことは無かった。なぜか全く頭が働かない。疲れているとも違う、妙な感覚。いやな感覚に襲われながら仕事する。今朝から続いている頭痛も酷くなり思わず薬を飲む。集中力もまるでない。そして寒気が酷いし睡眠不足も相変わらずである。それでも昨日よりはましで、少し就寝時間を遅らせたおかげか途中で目が覚めることは無かった。その分睡眠時間は足りないので解決には至っていないのだが。

症状的には明らかな適応障害だと、ここまでくると何となくわかる。とはいえ契約期間中はちゃんと働きたいとは思うし生活の都合もある。もう少し余裕があったり貯金があるだったり、何か別の手段で稼げるなら迷わず休職を選ぶレベルではある。

以前にも似たような症状が出たことがあったので、当時は家と仕事の両方が原因だったんだろうとは思う。現在、その片方が取り除かれて少しは楽になったはずだが、とことんこの仕事が合わなかったんだなぁと痛感させられる。今後の事を考えて、副業を始めるなり資格を取るなり一個ずつやっていこうと思う。

そんなことを考えながら仕事をしていたら、社員さんが様子を見に来てこうしてほしいと新しいことを言われた。だが既にキャパオーバー寸前の脳はついにパンクしてしまった。理解はできたが、実行できないと言っている。そもそも、話すのさえ最近はやっとなのだ。一日に2個も3個も新しいことを出来るはずもなく、仕事へのモチベがさらに下がる。薬を飲んでから既に1時間は経っているはずだが、いまだに頭痛も続いていた。


なんとか午前が終わり、お昼もあっという間に過ぎて午後の業務が始まった。

『仕事をしたくない』という気持ちが強くなる。このままだと仕事も進まない為、何も考えずに架電する。ただ昼寝後頭痛は悪化し吐き気も酷くなってきた。更にはめまいもしてぐわんぐわんする。仕事に集中できる状態ではなかった。とにかく応答数だけでも稼がないとと思い必死に架電する。

だが社員さんがいつも以上にこっちに来て何かと話をしてくる。私の架電リストの設定の仕方に不満があったらしい。何かそれで問題があったわけではないのにとイライラが溜まる。正直いつもより買ってくることにイライラが増していた。ストレスも溜まる。

『早く架電しなきゃ、早く』と焦りが生まれる。必要数までいったらペースを落としてストレス解消に努める、それしか考えていなかった。

 ――それさえ邪魔してくる社員さん。正直嫌になっていた。今日の言動はまるで父親と似ていた。所謂過干渉。暇なのはわかるし他に指摘する人もいないからなのだろうが、ものすごくストレスになっていた。しんどい、人と話したくない、架電したくない。そんな気持ちでいっぱいになっていた。数も足りなくて更に焦る気持ちが早まる。情緒不安定が増していく。頭痛も収まる気配はなく早く今日の業務が終わって欲しいとさえ思う。必然、こちらが電話を切るまでの時間も気持ち早くなる。ついには架電中にも話しかけてくるようになってきた。普通1,2回声を掛けて無視されたらわかる様なもんだ。実際、係長さんは2回くらいしか声をかけないし様子を見て一旦声をかけるのを一旦やめる。色々言ってくるのはいいけど、そういった気遣いをしてくれと思う。

しばらくして、同じチームの派遣社員が出勤してきた。内心来るの遅すぎと思いつつ、他に用事があったようだし今中でくすぶっているイライラをぶつけても仕方ないので大人しく架電する。だがこのイライラをどうすればいいのか分からない。ストレスはどんどん溜まっていくし、あまり意味のないようなことで話しかけに来ないでほしい。正直文章の方が頭に入るし理解できる。まだ冷静でいられるため、1時間に何回も来られるくらいならその方がありがたかった。ストレスが相当溜まっているせいか、必然声が攻撃的になる。自分ではもうコントロールできないレベルだった。あまりにも酷すぎてつい愚痴ってしまったが、その分すっきりする。

また少しして、架電を始める。今度はまた別の指示。そのせいで架電ペースが落ち、元々ギリギリだったものが足りなくなっていく。そしてまたキャパオーバーを起こした脳は思考停止した。架電ペースを今下げるのはやばいとわかっていても自然と下がっていく。何とか架電はしているものの、ブドウ糖を摂取しても何も変わらず頭痛も続いたまま。気疲れ、というやつなのかもしれなかった。すべてに対して無関心になっていく。いわゆるうつ状態に近い状態。仲のいい派遣社員の人が心配したのか声をかけてくれた。自分が思っていたより酷かったのかもしれない。

残り時間が短くなってきて、数も余裕でクリアしていたが正直どうでもいいという気持ちが強く、早く帰りたかった。時間が過ぎていくほどにボーっとしている時間も増えていく。同時にミスが出たり変な判断をしたりすることも増えていく。そして、社員さんに注意された。その対象者のリストのIDだけ渡されて、直せと言われる。しかし既に干渉できなくなったIDでどうしようもできない。また来て注意されるのも怖くて涙が止まらない。頭も割れそうなくらいに痛くて仕事どころではなく、一度席を立つ。落ち着いてきたので席に戻り架電する。すると手先が急激に冷えてきて架電に対する恐怖が内側からじわじわと広がっていく。今日設定した分の架電を終え、手を付けていないリストのみになる。全身が冷えていくのを感じ、途中で半分放棄することにした。今日はもう、架電できなかった。やっとの思いでかけて接続音が途切れて息が止まるが、留守電に繋がり安心する。


もうこれ以上は無理となり、時間経過を待って今日の業務が終了した。

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