ざわざわ
私は直樹くんをきらいじゃない。
たしかに私を放っておいてベルーガ見に行ったり、アイドルグループのMLB(正式名称なんだ?)の握手会に行ったり、LINEの返事が雑だったりするが、私の言葉で一喜一憂して表情がころころ変わったりどこデート連れてけばよろこぶかなー?といろいろ考えてくれるのはまんざらでもない。(だからと言って監獄レストランってチョイスはなんなんだ。というかよくそれ知ってたな)
輪をかけて猿属性な直樹くんは大学生だから当然シたがりで多少うんざりする。でもたぶん直樹くんは他の男に比べたら丁寧にやってくれてる方 (他に経験がないのでおそらくだが)で瞬間痛い以外は肌の密着する感覚とかはそんなにきらいじゃない。私より一回り大きな体に抱かれながら耳元でささやかれる「好き」の言葉にはなんか脳がざわざわしてへんな多幸感に包まれる。オクスリとかやってるのってこんな感覚なんじゃないだろうかと思ったりする。
別に他の男と取り換える理由はないしいまのところ直樹くんでいーやと思っている。
将来的には、どうなんだろう。
直樹くんはちゃらい系で友達は結構いるしその仲には女もそこそこの割合で混ざっていて大学の講義をさぼっていてバイトに明け暮れている。意外と地味にスーパーの店員をやっている直樹くんは誰にでも笑顔を振りまいていて同僚のおばちゃんと朗らかにやり取りしてて、客からの評判も上々のようだった。(かっこわるいから見ないでくれと言っていたので、変装して見に行った。わーい、わたしストーカー?)
ああいう男に責任感とか出てきてちゃんと私のこと守ってくれたりするんだろーか。
年上の社会人と付き合っていてそこそこ値の張るイタ飯屋 (親がこう言うのだが死語か?)に連れてってもらったー、アクセサリ買ってもらったー、という話を片耳で聴き流してタピオカミルクティーを啜ってゴム毬みたいなタピオカを噛みながら私は直樹くんにもそのうちその貫禄が出てくるんだろーかと思う。
が、よくよく聞いたらその友達の付き合っている男というのがどうも既婚者らしいので直樹ーべつに貫禄いらねーからまあそのままいけ、私も守ってもらわなくてもなんとかなるようにしとこう、とか考える。