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「見えないよ……」
私は震える声で小さく呟いた。
「えっ」
子供の幽霊は驚いた声を出した。
幽霊も驚くことがあることを私は初めて知った。
「声が聞こえるの?」
子供の幽霊が言ってきた。
「うん、でも幽霊と会話するのは初めてで……えへへ」
まったく、冷や汗と苦笑いしかでてこない。
「僕は幽霊じゃないよ、ジンタって名前……です」
なかなか礼儀があって良い子じゃん。
ジンタって感じから男の子かな……。
なんか少しだけ警戒心が緩んだ。
「ジンタくん……は、なんでこんな所に居るの?」
しかし、恐怖心はバリバリあった。
「ここで友達とかくれんぼして遊んでたら誰も居なくなって、そしたら知らない男の人に声をかけられて一緒に皆を探すことにしたんだよ……それから記憶がないの……気づいたら一人でずっとここにいる」
それってまさか……
嫌な予感が私の頭をよぎる。
「ここの公園って何もないじゃん……それなのにかくれんぼしてたの?」
「前はいっぱいあったんだよ!だけど全部壊された……」
「壊された?」
「うん、いっぱい人が来て全部壊して持って行っちゃった……」
(だからここには何もないのかあ)
なんか寂しい気持ちになった。
「僕帰りたいよ……お家に帰りたい、だけどここから出られないの」
周りを見渡すと、公園は柵で囲まれている。
これがきっと結界の代わりになって、ジンタくんをここに閉じ込めているのだろう。
「ここから出してあげる」
「えっ出られるの?」
ジンタくんは嬉しそうな声を出す。
「だけどジンタくんに一つ言わなければならない事があるの」
「何?」
「君は死んでいるの」
「……」
ジンタくんから返事はないが、居る気配はまだ感じる。
死んだ事を自覚してない幽霊は多くいる。
しかし浄霊するには、まず幽霊自身に死を自覚をしてもらう。
それで納得してもらえば、浄霊は簡単だ。
だけど、もしここで抵抗するのなら、強制的に祓うことになる。
私はジンタくんの反応を静かに待つ事にした。