7話 女友達
開幕オナニーなので苦手な方は慣れてください
「んっ……ふぅ……はぅ、あっ、んんっ……」
平日の昼前から、佑月はノートパソコンでエロゲをプレイしていた。
一穂に面白いと勧められ、試しにプレイしてみたらなかなか止まらず、長時間プレイして今まさにヒロインと主人公がまぐわっているところだ。
今までは自分の身体を触ったことなんてほとんどなかった佑月だが、シーンを見ているうちに体が熱くなり、ついつい手が下半身へと延びてしまった。そして、下着に手を入れ、悶えていた。
「んっ、はぁ、はぁ……ぁ——」
「お兄ただい、ま……」
「お邪魔しまーす……」
「お邪魔しまー……あら絶景」
もう少しで絶頂というところで心春が扉を開け、佑月のオナニーを目撃してしまった。しかもその後ろには紗月、唯奈、綾音もいる。
「ぅ……ぐすっ」
あまりの恥ずかしさに、佑月は中学生の前で泣き出した。
「ごめんお兄、ノックしたほうがよかったね。それと、その、皆も連れてきちゃった……」
「うっ、いらっしゃい……。お見苦しいものを、お見せしました……」
「ごちそうさまでした」
「眼福って感じの顔で見るなぁ……。こっち見るなぁ……!」
羞恥心に耐えきれず、佑月はエロゲが開かれたノートパソコンごと布団にくるまる。
「タイミング悪かった感じ?」
「悪いと言えば悪いしいいと言えばいいよね。てか、お兄のオナニー初めて見たんだけど」
「そりゃ兄のでも姉のでも家族のそういうのは見ないでしょ普通。ウチだってさすがにみられたことないよ」
「そうなの? 私普通に覗かれるよ。放置してるけど」
「それは唯奈がおかしいだけだから」
「私も弟に一回見られたことあるけどさすがに見るなって言ってるよ」
そんな話をしている女子中学生たちに「俺の前でそんな話するな!」と布団の中から叫ぶ。
「お兄さん結構ピュアだね」
「お兄女子とほんと関わらないからね。ちゃんと話せるのだって結局三人だけだし」
佑月が家族以外でまともに話せる女子は紗月と唯奈と綾音の三人。そんな佑月が女子のオナニートークなどまともに聞けるわけがない。
しかし、あれから数回彼女らと遊んだおかげもあってこうして普通に会話出来ているので、そこはしっかりと進展している。
「まあその話はいいとして。遊びに行くよ」
「わかったけど、その前にちょっとトイレ……」
下着を変えて服を着て、心春に髪をセットしてもらってから佑月たちは家を出た。
シンプルなパーカーにプリーツスカート、髪をお団子にまとめて、シンプルながらも佑月にしてはなかなかに可愛げのある恰好をしている。
「お兄さん、もうスカート履けるようになったんですか?」
「履けるようになったって言うか普段部屋で下履いてなかったから自然とね……」
「お兄ほんっとだらしない恰好しかしないもんね」
普段から開放的でいたいと部屋ではパーカーだけ着て下はパンツのみという姿で過ごしている佑月は、初スカートも「スースーする」なんてことにはならずあっさりと順応した。
それに、今はタイツも履いているのであまり気にならない。
「お兄さんはそういうシンプルめなのが好きな感じ?」
「もっと可愛いのも好きだけど外に出るときはね」
心春の影響で可愛い服を着るのは好きなのだが、それを他人に見られるのはまだ恥ずかしいので、少しシンプルな恰好をするようにしている。
「そういえば佑月先輩、今日お揃いだね」
「お揃いとは思えないくらいあやちー大人っぽいけどね。なんか仲良し姉妹みたい」
「そしたら綾音ちゃんがお姉ちゃんかな」
「佑月ちゃんも私のことをお姉ちゃん扱いするんだ……でもなんか許せる」
「あやちーはここでもあや姉になるのかー」
「ちょ、それここで——」
「あや姉……あや姉、ふふっ、なんかいいね。ね、あや姉?」
同い年なのにお姉さんっぽいからとクラスメイトからあや姉と呼ばれることが多く、それを嫌がっていた綾音だが、妹のような可愛さがある佑月にそう呼ばれるのはむしろ嬉しいようで、「じゃあ佑月先輩は佑月ちゃんだね」と案外ノリノリだ。
「……ねえ、あやちーもお兄もチョロくない?」
「「そう?」」
佑月と綾音の反応がきれいにハモる。
「仲いいですねほんと。ほんとに姉妹みたい」
「いいなー。ウチもお兄さんのお姉ちゃんになりたい!」
「だめー。佑月ちゃんは私の妹だから」
「いや、お兄は妹じゃないし私のお兄ちゃんだから絶対あげないからね?」
私のだからダメと、心春は佑月の手を握る。
「みゃーのん、相変わらずブラコンだねぇ」
「い、いいじゃん別に!」
普段から「お兄がね!」と話している心春もいざ指摘されると恥ずかしくて顔を赤くするが、こんな機会も少ないからと手を繋いだまま、よく遊びに行っているショッピングモールまで歩いた。
「ちょうど十二時過ぎだし、先にご飯食べませんか?」
店についたころにはちょうど昼時で、家から少し遠いショッピングモールまで歩いてきたのでちょうどお腹もすいている。
「そうだね。ここフードコートどこにあったっけ?」
「三階ですね」
唯奈に先導され、フードコートに向かい、各々好きな店で料理を注文し、広い席に集まって昼食を取り、そこから適当にショッピングモールの中を歩き回ることにした。
「みんなー、ゲーセン行ってもいい?」
店を回って欲しいものがあったら買って、全員が概ね買いたいものを買ったところで、ここだけは絶対行っておきたいと、佑月はゲームセンターのクレーンゲームがあるエリアに行った。
「お兄どれ欲しいの?」
「あれ」
佑月が指さしたのはサメの縫いぐるみだ。
「結構可愛い趣味なんだねー」
「趣味って程じゃないけど、ああいうの抱いて寝ると落ち着かない?」
昔から佑月は何かを抱いていないと眠れない。
今までは布団を丸めて抱いていたが、今は姿の姿なら縫いぐるみを抱いて寝ることにもあまり抵抗はないのでさっそく
「どっちにしろ可愛いですね」
「もぅ、可愛いって言わないでよー」
唯奈や紗月に可愛いと言われるのはどうも恥ずかしいらしく、少し照れながら言う。
「お兄、そういうとこだからね?」
「う、うるさい!」
気を紛らわす様にクレーンゲームに百円を投入し、操作を始めた。
「重心ってたぶんこの辺だよね」
位置を見極め、アームを下ろす。
「え、うまっ」
下したアームは見事に重心を捉え、上がる反動で景品が落ちることなく一発で取り出し口まで景品を運び、狙いの景品をゲットした。
「おー、すっごいふわふわ……」
手に入れた景品の感触を抱いて堪能する姿があまりにも可愛らしく、綾音は無意識に佑月の頭を撫でる。
「うん?」
突然撫でられきょとんとする佑月。
「こうしてみると、お兄も普通に可愛い女の子なんだよねー」
今日の昼前から今までの佑月の姿は、誰がどう見ても女子だ。特にぬいぐるみを抱いている姿や撫でられた時の表情はまさに可愛い女の子で、とても元男子とは思えない。
「お兄のそれ、女の子っぽくしようとしてるの?」
「違うよー。ほら、こういうのって一回くらいぎゅーってしたくならない?」
「そこらの女子より可愛いこと言ってる……」
「このあざとさはちょっとドキっとしますね……」
元男とは思えない可愛さに、紗月も唯奈も少し危ない目で佑月を見ている。
「……その、そんなに可愛いとか言わないで欲しい、かな……」
恥ずかしさのあまり、赤くなった顔をぬいぐるみに埋めて隠す。
「そういうところだからね、お兄?」
「……はい」
縫いぐるみを離して紗月が持って来てくれた袋に詰め込み、今度はパーカーのフードを深くかぶって顔を隠す。
「お兄、もう照れてる限り可愛いポイント溜まり続けるから諦めな」
「そんなぁ……」
もはや綾音たちは子を見守る親のような温かい目で佑月を見ており、心春も呆れたように言ってはいるものの、可愛い兄の姿に興奮が抑えきれず、口元が緩んでいる。
「ちょっと気分転換してくる」
心春たちち別れ、逃げるようにシューティングゲームが置いてある場所まで向かった。
その時のプレイで、恥ずかしさを紛らわすため無心でひたすら撃ち続けていた佑月のスコアは店内最高だったという——
この日、佑月は心春に「せめてパンツ脱げ」と怒られました。
落ちにくいですからね