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TSしたら女子高に通うことになった件  作者: cvおるたん塩
第二章 女子高に転校した件
15/25

15話 ハプニング

 星女には王子と姫、そしてアイドルがいる。もちろん仕事ではなく、学園のとつく方のあれだ。例えば生徒会役員は容姿成績トップクラス、今代に至っては家柄もよしとあらゆる要素が揃った結果ユニットアイドル扱い、他にも演劇部のプリンスや歌姫、クラスによってはカーストトップの女子が姫扱いされていることもある。

 それは、小柄で可愛らしく、小動物のような佑月も例外ではなく、人見知りということもあって積極的にアピールする生徒は少ないものの、陰ながら見守る生徒はそれなりにいる。


「宮野さん、弁当に好きなおかず入ってた時の顔可愛いよね」

「それな。昔私がアイス食べてるのを楽しそうに見てた親の気持ちがわかるわ」

「ねー。守ってあげたくなる」


 そんなことを、裏でよく言われている。佑月はそう、姫——ではなく、妹や娘ポジションなのだ。男であろうと女であろうと、佑月にファンがつくのは変わらない。


「なんか最近温かい視線を感じるんだけど……」


 ただ、佑月的にそのファンの着き方は若干不満であった。


「まあ宮野さん可愛いから。妹っぽくて」

「由夏ちゃんに言われる分にはいいけど知らない人からそう見られるのなんか嫌じゃん」

「宮野さんさ、いつも誰かに話しかけられたとか自分がまず何してるか理解してる?」

「そりゃ由夏ちゃんか橘さんの後ろ、に……」


 自分で言って初めてこんなことすれば仕方ないと理解した。

 昔から大きい背丈と誰もが羨む美形でありながら、女子と話すとき近くに一穂がいれば一穂に助けてもらっていたし、女の子になって以降は小さな身体を活かして仲のいい誰かの後ろに隠れていた。もちろん、無意識で。


「いや、だって怖いじゃん?」

「いや、怖くないから。ゆかちーのときはすぐ慣れたんでしょ?」

「あれはほら、由夏ちゃんが大人しかったから……?」


 とは言いつつも、実のところ佑月自身なぜ由夏が大丈夫なのかはわかっていない。


「あ、あれじゃない? 私お姉ちゃんキャラで通ってるから姉と妹で引かれあったみたいな」

「確かにゆかちー、宮野さんみたいな子に結構世話焼くもんね」

「お姉ちゃんねぇ……」


 佑月は琉璃やなにかと甘やかしてくるその他生徒会役員、綾音や最近妙にお姉ちゃんぶる心春のことをふと思い出し、にへっと頬が緩んだ。


「やっぱ姉だね」

「だねー。ゆかちー学園の妹佑月ちゃんを手懐けてるし実質最強では」

「由夏ちゃんのことは好きだけど懐柔されてないから!」

「え、もう一回言って?」

「っ——やだ!」


 言い返したつもりが墓穴を掘り、それに気づいた佑月は真っ赤に染まった顔を小さな両手で隠しす。

 それを見た由夏と茜はもちろん、クラスの女子達まで一斉に頬を緩めた。



 放課後、部活があるからと早々に教室を離れた由夏と茜を見送った佑月が教室で一人黄昏ていると、見知った制服を着た中学生がいるのを見つけた。


(あれ、なにかあったっけ……?)


 気になってひとまず生徒会に行くと、琉莉が何かを用意しているところだった。


「あらゆーちゃん、どうしたの?」

「なんか中学生来てるけど、今日何かあったっけ?」

「ああ、そのこと。放課後の様子見せたら面白いんじゃないかってほぼ思い付きで今日オープンスクールが開かれることになっていたのよ」

「あー、そういう。でも平日のこの時間って来るもんなの?」

「基本3年生は部活終わってるし、放課後少しくらいならたぶん大丈夫よ」


 たぶん、と若干不安になるようなことを言いながらも、しっかりと説明しながら準備を進めていく。


「私も手伝う?」

「心春ちゃんも来るだろうから案内してあげてちょうだい。たぶん心春ちゃん経由でほかの子にも情報がいくだろうから」

「わかったー」


 琉莉の説明を聞いて手伝いを頼まれると、佑月はすぐ生徒会室を出て中学生たちが集まっている中庭に向かった。

 そこでは副会長野乃花を筆頭に生徒会役員が中学生たちをまとめていた。

 中学生たちは仲のいいグループで固まっていたり、孤立していたりと集合場所にいるだけで比較的自由な場所にいるものの、野乃花の話はしっかりと聞いている。


「では解散。好きに見学していってくださーい」


 解散の合図とともに、中学生たちは各々気になる部活を見学しに行った。


(心春いたのかな……。まあ歩き回ってたらそのうち会うか)


 部活にも委員会にも参加していない暇な佑月は心春を探すついでに、校舎を適当に歩くことにした。


(改めて歩くとこの学校でかいな……。大規模サバゲー余裕じゃん)


 転校前の学校案内で一通り見て回ってはいたが、改めて一人で見た迫力は初見の時とは少し違うものだった。


(そうだ、心春ってテニスうまいしテニス部のほう行ってみたらいるのかな……)


 歩いていてふと思い出し、佑月はテニス部が活動しているコートに向かう。

 ついてみれば、テニス部とはまた別に注目されている女子が一人。


(真ん中にいるの……心春?)


 気になって近づいてみると、「もしかしてみゃーのん?」「フォローしてるよ~」などと、別の中学校に通っている女子や、星女の生徒からSNSのことで話題の中心になっているようだった。


(そういえば心春ってまあまあ有名なんだっけ……)


 佑月はそもそも心春程の興味がないので気にはしていなかったが、実は女子中高生の間で有名だったりする。


「あ、お——ゆづ姉!」


 一瞬お兄と言いかけたがギリギリでゆづ姉と言いなおし、人だかりを抜けて佑月の元に駆け寄ってきた。


「やっぱり来てたんだ。雰囲気とか、どう?」

「んー、なんか女子高って感じ」

「まあ女子高だからね。部活、気になるのある?」

「やっぱテニス部は気になるかなー。ライバルもいるし。でも正直高校上がったら文科系の部活入ってみたくもあるんだよねー」

「そっか。まあいろいろあるし、見ていくといいよ。それで、さっきの人だかりはインスタのことで?」


 どうしても気になった佑月は、部活の案内ををすっ飛ばしてそのことを聞いた。


「あー、うん、そんな感じ」

「へぇ、大変そうだね。まあ星女生徒には言っておくからほかの部活も見てきたらいいよ」

「そうするー」

「うん。あ、綾ねえたちは来てないの?」

「今は別の部活見学中。あとで合流する予定だよ」

「んー、わかった。じゃあちょっと——」


 佑月は心春のもとを離れ、由夏を呼んでから心春に群がっていた女子たちに「有名人で盛り上がるのはまた後でね。心春もみんなもあくまで学校を見に来てるんだから」と若干声を震わせながら、そして由夏の手をきゅっと握りながら言った。

 由夏も佑月に続いて部員を宥め、部を見学している中学生たちに説明を始める。


「じゃあ私は心春連れて行くから。またねー」

「うん、ばいばい」


 二人は小さく手を振りあい、各々の仕事を始めた。と言っても、佑月は部活や委員会に関する知識がほぼゼロなので、心春と喋りながら自分の見学もかねて部活巡りをするだけだが。


「ゆづ姉、成長したね」

「ん、なにが?」

「だってほら、女子の手を握ってたり女子いっぱいいるのにああやってちゃんと言ったりさ。頑張ってるんだね」


 兄の成長を微笑ましく思い、心春は佑月の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「もー撫でるなー!」


 佑月は頭を撫でる手を振り払い、少しぼさついた髪を手櫛で直した。


「ゆづ姉……染まったね」

「染まった?」


 今までは多少髪がはねていても気にしなかった佑月が少し髪が崩れたのを気にしているのを見て、心春の口角は少し上がる。


「ううん、何でもない。それより次、早くいこっ」


 今までの佑月とのギャップが可愛すぎて今にもにへっと笑ってしまいそうなったのを必死に抑えながら、心春は佑月の手を引いて次の部室に向かう。


「文芸部……気になるの?」

「実はねー。運動部疲れるし好きってわけでもないし。お邪魔しまーす」

「お客さんだ! わー珍しい!」


 本日初の見学者が佑月と心春だったようで、部員たちは妙に嬉しそうに騒いでいる。


「ちょ、それ隠して!」

「ってか宮野さん来ちゃってんじゃん。きゃーどうしよヤバい死ぬ」


 テンションについていけず、二人はそっと扉を閉じた。


「なにあれ」

「いや、ゆづ姉在校生でしょ。知らないの?」

「私部活する時間ないから……」

「あー、そうだったね、ごめん。いつも家事ありがと」

「ううん、気にしないで。それより、何だろうねあれ」


 二人の目に映ったのはエナジードリンクの缶とマンガの原稿であろう紙、本棚はほとんどライトノベルや同人誌で、まさにオタクの集いといった雰囲気の部屋だった。


「もっかいお邪魔しまーす」


 改めて入ると、少しはきれいになっていたが、やはり文芸部というよりは漫画研究部や同人サークルと言った雰囲気のままだ。


「いやー、お見苦しい姿を見せてしまいました。大丈夫です、ちゃんと文芸してるので安心してください」

「そのマンガの原稿っぽいのは?」

「次の夏コミの原稿です。今回は百合で行こうかと……」

「へー、百合……。ちょっと読んでもいいですか?」

「これはまだできてないので、別の百合同人なら」


 百合——女の子同士が仲睦まじくしているアレ。星女ではよく見られる光景だ。

 そして心春自身も佑月とよくイチャイチャしている。だからなのか、心春は百合ものの同人誌を興味津々に読み進めている。

 集中している心春に話しかけるのも悪いと、机の上に置いてある未完成の原稿に目をやった。


「……あれ、これって——」

「あーあーあー気のせい、気のせいです!」


 文芸部員が隠した原稿には、琉莉に似たキャラと佑月に似たキャラが頬を紅潮させながら舌を絡ませているシーンが書かれていた。


「わっ、るっ、るりっ……んあー!」


 動揺しすぎてうまく言葉にできず、最終的に顔を真っ赤にして叫ぶ。


「あの、勝手にモデルにしちゃった挙句本人にまで見せちゃって……ごめんなさい」

「い、いや、気にしないで……。私もその、相手が琉莉姉ならまあ、いいから。でも、ナマモノはほどほどに、身内だけでね」

「はい……」


 部員たちは本気で反省しているせいか、「琉莉姉となら」というセリフを完全に聞き逃していた。


「ふぅ、満足……。ってゆづ姉、どうかした?」


 同人誌を読み終えた心春が満足げに本を閉じ、佑月のほうを見て首をかしげながら言った。


「私と琉莉姉の、その、えっちなやつ……」

「ふぅん、まあゆづ姉昔から人気だもんね」

「人気だもんねじゃないよ……」

「ほんと、ごめんなさい」

「ちょっと読ませてもらってもいいですか?」

「……どうぞ」


 未完成だからと断っていたが、ついにそれを心春に手渡した。

 1ページ目からじっくりと読み、ところどころでニヤっとする。

 内容は佑月と琉莉の二人きりの生徒会室でいい感じの雰囲気になり、そのまま——というもの。仲のいい姉妹的な感じのイチャイチャであればよくあることだが、そのレベルではない。佑月が琉莉を求め、そしてキスからの生徒会室で——


「すご、絵うまいしまんまゆづ姉じゃん」

「ちがっ、私そんなことしないもん!」

「いやいやー、そんな感じだよ?」

「まだキスしたことないし!」

「え、ないんだ……。意外だね」

「そりゃ桜とか心春とかいろいろあったけど。でも頑張って理性で耐えてきたんだから」


 小学生から中学生にかけて、近所に住んでいた三歳上の幼馴染のお姉さんに迫られたり、暴走した心春に「女の子同士ならセーフだから!」と襲われそうになったりといろいろあったが、佑月はそれを耐えてきた。


「ってかゆづ姉、あんなに恥ずかしがってたのにネタ提供しちゃっていいの?」

「あっ——」


 重大なミスを犯してしまったことに気づいた佑月は、声にならない叫びを上げて部室から逃げるように出て行ってしまった。


「うちの姉がお騒がせしました」

「いえ、こちらこそ……」


 心春も一言謝罪して佑月を追うように部室を出ていく。


(あーもう、無駄に運動神経いいんだから……)



「わぷっ」

「わっ。廊下を走ったらだめですよ」


 逃げるように教室を出た佑月は、廊下の角を曲がろうとして胸の大きな女子生徒にぶつかった。ぶつかったのは風紀を乱す身体と噂の風紀委委員長、能代千咲だ。


「あっ、ごめんなさい……」

「いいんですよ。次から気を付けてくれれば。って、顔真っ赤ですけど……大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫、です……」


 琉莉と熱いキスを交わす同人誌に一瞬とはいえ顔をうずくめてしまった大きな胸。そんなことが続けて怒って大丈夫なわけもなく、佑月は大丈夫と言いながらも、顔を赤くしたまま固まってしまっている。


「大丈夫じゃないじゃないですか!」


 動かなくなった佑月を見て千咲があたふたしていると、タイミングが良いのか悪いのか、部活ついでに改めて校舎を見学しようと紗月を連れまわして校舎を探検していた綾音だった。


「おー、佑月ちゃん! って、あれ、どうしたの?」

「もしかして知り合いですか? その、この子、角でぶつかってから動かなくなってしまって……」

「なるほどー。とりあえず私に任せてください!」

「綾音ちゃん、なんかするの?」

「とりあえず……ぎゅーっ!」


 そして、耳元で「佑月ちゃん、久しぶり」と甘い声で囁く。


「ひゃっ、あ、綾音ちゃん⁉」

「お帰り、佑月ちゃん。固まってたけど、どうかしたの?」

「その、私のえっちな……同人誌と、その風紀委員の人のおっぱいが……」

「なるほどなるほど。まだ慣れてなかったんだね」


 綾音は佑月の頭を優しく撫で、「もう大丈夫だよ」と子供をあやす様に言った。


「すごいですね……」

「佑月ちゃんの扱いには慣れてるので。とりあえず優しく撫でてあげたらどうにかなります」

「撫でられるのそんな好きってわけじゃないからね?」

「えー、でもいつもうれしそうじゃん!」

「それはあやっ——」


 綾音ちゃんだからで——と言いかけ、間一髪で口を紡いだ。


「そ、そんなことより心春と合流しないの?」

「え、ああ、うん、行くよ。それより今なんて言いかけたの?」

「言わない! ほら、早くいくよ!」


 誤魔化し切れていなかったので、そのまま心春がいたほうに手を引っ張って連れて行き、無理やり誤魔化すことにした。


「あれ、いない」


 文芸部に戻った時にはすでに心春はいなかったので、なにか言われる前にすぐ扉を閉め、心春が行きそうな部活の活動場所に足を運ぶ。

 テニス入ったのでバスケ部、バドミントン部、吹奏楽部などなど……しかし、心春は見当たらない。


「やっぱりテニス部かな?」

「心春ちゃんならいそうだねー」

「だよね。もしかしたらみんなに混じってテニスしてたりして」


 佑月は二人をテニスコートまで案内した。

 すると見事に心春がコートで試合をしているではないか。

 相手は由夏、点は由夏がリードしている。


「うわー、すごいね、心春ちゃん」


 佑月を後ろから軽く抱きながら、高校生相手に負けているもののいい勝負をしている心春を見て感心する。


「でもみゃーのん、全国優勝でしょ?」

「うん。試合前すっごい練習付き合わされて大変だったよ……」

「え、お兄さんみゃーのんの練習に付き合ってたってか、相手出来てたん? すごっ」

「あの体だったからね。あと、お姉さんね」

「おっと、そうだった。じゃなくて、みゃーのんの相手で来てたってことはお姉さんも全国レベル?」

「私は練習付き合ってただけで帰宅部だったからどうだろうねー」

「佑月ちゃん、もしかして天才だったり?」

「んー、そうかも?」


 実際佑月はテスト全教科満点は当たり前、スポーツもゲームもひとまずルールを理解して動画を見て勉強して、実際にやってみればそれだけで人並み以上に上手くなる。正真正銘の天才タイプだ。

 しかし、自分で「そうかも」なんて言うのはなかなか珍しい。


「ん~、調子に乗る佑月ちゃんも可愛い!」

「あれ? ウチがしたときはすごい恥ずかしがってたのに……」

「私だもんねー」

「ねー」


(佑月ちゃんちょろっ)


 心春と由夏の試合を見ながら、カップルのようにイチャイチャする佑月と綾音であった。

イチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ

長くなりそうだったので13話と14話に分割して投稿します。続きはまた明日(/・ω・)/

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