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15.はぐれないように

 迷子センターから離れて、俺らはフードコートまで来ていた。


 そして俺はヒナノと向かって座っているのだが……未だに恥ずかしいのか、ヒナノは顔をテーブルにくっつけたまま、俺と喋るのだった。


「シュン君……わた、わたし……なりきっちゃった。幼女になりきっちゃったよ……」


「あっ、うん。とっても上手だったよ?」


「ううっ……恥ずかしいよぉ……!」


 正直、ここまで恥ずかしがるようなことでもないと思うんだけど……ヒナノにしてみれば、相当辛いものだったんだな。うん、本当に頑張ったよ。よしよし。


 どうにか慰めてやろうと、俺は目の前にあった、そのまんまるな頭を撫でてやった……


「……ん、んんっ……」


 そしたら聞いたことのない声が、ヒナノの口から溢れ出た。まっ、まさか、俺に対して威嚇でもしているのか……!?


「ごっ、ごめん! 嫌だったか?」


「……嫌ならすぐに止めさせるってば」


「えっ?」


「だから……んっ」


 そしてそう言ったヒナノは、離した俺の腕を両手で掴んで……腕を頭の上に。


 まさか続けろってことなのか……!?


「……はやく」


 なっ……何でこの子はこんなに可愛いんですか!! あぁ!!


「え、えっと……まぁだいたい理解しているつもりなんだけとさ、何が起こったのかを全部聞かせてよ」


 そして俺は猫を扱うみたいに、ヒナノの頭を優しく撫でつつ、状況整理の意味を込めてこうやって聞いた。


「うん……分かった」


 そしたら少しだけ笑顔を取り戻したヒナノは、ちょっと顔を上げて、いつもみたいに喋るのだった。


「えっと、あの時シュン君は飲み物を買いに行こうとしてたよね」


「ああ」


「実は私、売店で使える割引券持っていたの。だから私が行こうとしたけど……シュン君が先に行っちゃったからさ」


 ああ、そうだったのか。それは悪いことしちゃったなぁ……


「そっか……話を聞かなくてごめんな?」


「あっ、いいのいいの。私が言うのも気が付くのも遅かったから……それで私は割引券を渡そうとして、追いかけたんだよ。でも……」


 なるほど……でもあの時の俺は、ヒナノにカッコイイ所を見せようと、走って売店を探しに行ったんだよな。


 だからいくらヒナノの足が速かろうが、見えなくなったものを追うのは無理なワケで。


「俺を探せなかったんだね」


「うん……そしてどうしようって道の真ん中で悩んでたら、さっきの方達が声をかけてきてね。それで……迷子だと思われちゃって」


「……」


 ああ、やっぱり思った通りだった。


「ヒナノは迷子を否定はしなかったの?」


「それは出来なかったんだよ! 2人ともすっごく心配してくれて! それでこれ以上迷子にならないよう、左右に立って両手を繋いでくれて! 私、捕まった宇宙人みたいになって!」


「……あ。そうだったんだんだ」


 というかヒナノ、あの画像知ってるんすね……何か意外。


「それで迷子センターまで連れていかれちゃった私は……ここで決めたんだ。『私、最後まで幼女をやり遂げてみせる』って……」


「……」


 俺が一生言わないであろうセリフ言った。いや、俺じゃなくても絶対言わないよな。


「いやぁ……恥ずかしいだろうによく頑張ったよ。本当にヒナノは女優だよ」


 そうやって褒めたら、ヒナノは赤く染まった顔を袖で隠しながら。


「……ここで高校生だってバレたら、もっと恥ずかしくなるって思ったもんっ……!」


「それに相馬さん達にも恥をかかせないようにしてやったんだよな。ヒナノは優しいよ」


「あっ、ありがとねシュン君……そう言ってくれると、幼女を頑張った甲斐があったって思えるよ……」


 いちいちパワーワードが飛んでくるなぁ。


「そして……また言うけど、シュン君本当にごめんね? シュン君にも色々と協力してもらっちゃって。お腹も……つまんじゃって」


「ああ、そんなのは全く気にしなくていいんだよ。それにヒナノにお兄ちゃんって呼ばれるのも新鮮で……嬉しかったんだ」


「うっ……嬉しいって……もう、バカぁ」


 ヒナノはストローでジュースをぶくぶくとさせる。ヒナノはほんとに可愛いなぁ!!!


「よし、ヒナノ。ご飯食べ終わったらまたジェットコースターに行かないか?」


「えっ?」


「今度はちゃんと乗るんだよ。リベンジだ」


 そしたらヒナノはこくりと1回頷いて。


「……うん! 行くっ!」


 と。うん、俺はヒナノのどんな表情も好きだけど……やっぱりヒナノには笑顔が1番輝いて見えるや。


 それを強く再確認した俺だった。


 ──


「ね、ねぇシュン君」


「どうした?」


「またはぐれたりしちゃったら困るからさ……一緒に手、繋ご?」


「あ、ああ! もちろんだよ!」


「……嬉しい」


 そっから俺らはジェットコースターに乗るまでは、ずーっと手を繋いだままだった。

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