10.何だか楽しい
「……」
俺らは並んで席に着く。そして俺達の目の前には……すんごいデカい牛丼が。
「……えっと。済まない藍野。てっきり私は5000円分奢って貰えると勘違いしてしまったらしい」
「……いいんです。委員長は優しいからみんなの分も買ってくれたんですもんね。尊敬します」
「ああ、ありがとう……そんな怖い顔で言われても、説得力がないんだがな」
「……」
分かってる。もちろん分かっているんだ。委員長が悪意を持って、そんな行動を取ったんじゃないって。それに俺に沢山勉強を教えてくれたんだから、こんな出費痛くなんかないんだ。
……そうやって言い聞かせても、やっぱり俺の心のどこかは傷付いていた。高校生の5000円は大金なのだから。
「んー。でもさ、あいのーんがちゃんと言わなかったからいけないんじゃない? ウチだって5000円投入されたら、全部使っちゃうよ?」
「……」
高円寺はメガ盛り牛丼をバクバク口にしながらそう言った。高円寺に言われるのは腹立つが……実際その通りなので、言い返すことが出来なかった。
「藍野氏……我のお肉分けてあげますぞ」
「……大丈夫だから食ってくれ」
草刈は慰めようとそう言ってくれたが、当然俺の食べ物も牛丼なので……もうその言葉がギャグにしか聞こえなかった。
「えっと、シュン君! せめて私だけでもお金払うから、元気を出して……」
「……いいんだ。本当に大丈夫なんだ」
そこまでされると申し訳ない。だからもう美味しく食ってくれ……って。ああ。
そうか。俺がこんなに落ち込んでいるから……みんなも食べにくいんだろうな。高円寺を除いて。それならと……俺は息を吸い込んだ。そして。
「……うん。本当に俺は大丈夫だから! 何なら日頃のお礼が出来たから、俺はとっても嬉しいよ!! みんな遠慮せずにガッツリ食ってくれ!!」
こう言ってやった。多分強がってるようにしか見えないだろうけど……こうやって言うのが俺の仕事なんだ! そうなんだ!!
「藍野……!」 「藍野氏……!」 「シュン君……!」
「じゃあさ、あいのーん。デザートも買ってきて」
「……お前は帰れぇ!!」
──
そんなワケでみんな無事に食い終わりましたとさ。それでも俺達は食堂に居座って……会話を続けたのだった。
「それでさ、ヒナヒナが言ってたじゃん。みんなと遊んで仲良くなりたいって」
「うん」
「だからさ……夏休みはみんなで遊びに行こうよ! これっていい考えでしょ!」
なるほど……世の中のリア充共は、こうやって遊ぶ予定を決めるんだな。初めて知った……と感心していると。
「ほう、いい考えですな!」
「私もいいよ! 遊びたいな!」
草刈とヒナノはあっさりおっけーを出した。ヒナノはともかく、草刈がそうやってスグに言うのは何か意外だな。
「うんうん! 後は委員長とあいのーんだけど……どう? 来る?」
「えっ? 別に俺は、どっちでもいいけど……」
「じゃあいいや。委員長は?」
「ごめんって! 行く行く行く!!」
そうだった。高円寺はこういう奴だった。
「はいはい。それじゃ、あいのーんもね。委員長は?」
「私は……まぁ、時間が合えば、考えてもいいかな」
「そっか! じゃあこっちからビシバシ時間合わせるから!! 絶対に来てね!」
……うわー。俺と態度が全く違ぇ〜。
「それじゃあ夏休みに行きたい場所を挙げていこうよ! 山手線ゲームのリズムで! 時計回り!! いくよ!」
「えっ?」
本当に急過ぎるんだよな……
一応補足だが、時計回りは高円寺、ヒナノ、俺、草刈、委員長の順だ。
「海!」 パンパン
「ショッピングモール!」 パンパン
「すっ、水族館!」 パンパン
「アニメイト!」 パンパン
「……裁判所」 パンパン
「誰かん家!」 パンパン
「山!」 パンパン
「と、図書館!」 パンパン
「ゲーセン!」 パンパン
「……美術館」 パンパン
「北海道!! 」 パンパン
「映画!」 パンパン
なっ……しまった!! 映画は俺が狙ってたワードだ……!
「あっ、えっと……」
「はい、あいのーん負けー! 罰は旅費全部あいのーん持ちね!」
「聞いてねぇって!! もう1回やるぞ!!」
「ええ、やりますぞ!」
「ふふっ!」
……でも何か。こんな感じで友達と遊んだりするの初めてで。新鮮で。
心から楽しい。こんな気持ちになったのは……本当に久しぶりだった。




