18.別世界の住人
そして高円寺は俺らに向かって言う。
「それでお2人さん、今日は文化祭だよ? あいのーんはもちろんのこと、ヒナヒナも全然楽しめてないよね? ずっとここにいたんだからさ!」
「え、えっと……」
ヒナノは言いにくそうにしている。ということは本当に、ずっとここにいたんだな…………ん? というかちょっと待て。
「おい高円寺。今更だけど、どうしてお前は屋上のことを知っているんだ?」
「…………じゃあさヒナヒナ、お店に行こうよ! ポテト売ってる所もあるんだよ!」
「ねぇ無視しないで」
ヒナノが屋上のことを教えるとは思えないし……本当に何なんだ? コイツについて、真面目に考えるだけ無駄なのか?
そして高円寺は俺の方を向き直って。
「もーうるさいなー。ちゃんとあいのーんもつれてってあげるってー」
「そうじゃなくて……そもそも俺は停学処分を受けているんだ。見つかったら大変なことになる」
「えー別にいいじゃん。『この人、あいのーんのドッペルゲンガー』で切り抜けていこうよ」
「ふざけんな」
誰に通用するんだよそれ。もっと双子とか兄弟とか、いい感じの嘘あるだろ。
「えっと……でも心美ちゃん。シュン君の言う通り、目立つ場所は避けた方がいいかも」
ヒナノが俺を心配してくれたのか、高円寺に向かってそう言ってくれた……そしたら高円寺は。
「うん! ウチもそう思っていたんだ!」
「調子の良い奴め……」
手の平返すのが早すぎる。火でも出るんじゃねぇの。
「それじゃー体育館にでも行く? あそこ暗いし、目立たないと思うよ? それに食べ物持ち込みもおっけーだし!」
「それならいいかも! ねっ、シュン君!」
俺は別に行きたいとは思わなかったけど……ヒナノには、文化祭を楽しんで貰いたいからな。
「うん……いいよ!」
大人しく着いて行っとこう。
──
それで先に体育館に向かった俺。「ヒナヒナと食べ物買ってくるから、席を取っててね!」と高円寺に言われたので、席を探しておく……お、あった。
俺は荷物を置いて3席を確保した。普通にマナー違反だけど……結構空いているしいいよね。
「……あっ、いたいたシュン君!」
聞き慣れた声がしたので振り向くと、たこ焼きと焼きそばを持ったヒナノの姿があった。
「おっ、良い席取ってんじゃーん」
言い方がヤンキーのそれと変わらない高円寺も、紙コップに入ったポテトとフランクフルトを持っていた。
俺は荷物をどかして席を空ける……そして。
「ふぅー。買いすぎちゃった」
「よっこらしょい……」
左にヒナノ、右に高円寺が座ってきた。
「……」
あ、そっか。俺が真ん中に座っていたから……必然的に挟まれる形になるのか。というかこれって……
「……両手に花?」
「あっ、あぁ……そうだな」
高円寺に心を見透かされるの何か嫌だな……いや、そもそも花と言ってもさ。
片方は元気いっぱいのキラキラ輝いている、向日葵みたいな明るい花なのに対し……もう片っぽは何かアマゾンの奥地に生えてる、謎の危ない花くらいに差はあるんだけどな。
「……あいのーん。何だその目は」
「いや別に……」
「あっ! ねぇねぇ前見て! 何か始まるよ!」
ヒナノの言葉により、俺達の視線は自然と前のステージの方へ向く。そして辺りは更に暗くなって……ステージ上に光が灯った。
──
それから俺らは買った物を食べながら、ステージで繰り広げられる出し物を、長らく眺めていた。
ステージの内容は演劇部による劇だったり、合唱部による歌だったり……はたまたお笑いをする者や、流行りのダンスを披露するグループもあった。
クオリティはそれぞれだったが……ただ1つ言えることは。どのグループも俺の目から見て、とても輝いて見えたということだ。
まるで別世界の人間のように思えた。
「……」
……でも。少し前までは、俺もあっち側に立っていて……この会場よりも大きいステージで。ここよりも多い人数を沸かせていたんだよな。ははっ……自分でも信じられないや。
それに……過去に縋る自分も何かダサすぎるな。もう俺はあの頃の俺なんかじゃないから……比べるのすらおこがましいんだよ。
……そんな何とも言えない気持ちになりながら、俺は最後までステージを眺めていたのだった。




